5Gで広がるワイヤレスネットワークの可能性とは
~エバンジェリストが語る、5Gへの期待と活用の未来~
自動運転、遠隔医療、スマートエネルギー、インフラの異常検知、機器制御、高度道路交通システム。これらに共通するキーワードが、5Gだ。この注目の次世代移動通信システムが、まもなく実用化される。5Gは通信キャリアのみならず、企業や自治体がさまざまな目的に向けて活用できるのが大きなポイントだ。5Gによって社会やビジネスはどう変わるのか。5Gを使いこなすためのヒントとは。ネットワーク技術のエバンジェリストであるNECの藤本に、新たに広がるネットワークの可能性を聞いた。
SPEAKER 話し手
NEC
藤本 幸一郎
新事業推進本部 主席主幹
エバンジェリスト
期待の5Gが、いよいよ2020年に実用化
──2020年からサービス提供開始される注目の5Gとは、どんなものなのでしょうか。
藤本:現在、スマホを使って音楽を聴いたり、動画を見るのが当たり前になっていますが、こうした便利さを支えているのが無線データ通信網です。いまのスマホなどで使われているのは第4世代の4Gですが、次世代移動通信システムと言われる5Gのサービス提供が、いよいよ来年から開始されます。
5Gは、「超高速」であるだけでなく「低遅延」や「多数同時接続」などを追求したハイブリッドな通信システムと言えます。5Gによる先進ネットワークで、いままでにない利便性や新しいサービスなどの創造が期待されています。
──これまでの4Gと比べて、5Gはどのような違いがあるのですか。
藤本:4Gは、主に「人と人のコミュニケーション」を目的として活用されています。4Gに比べ約100倍の通信速度を誇る5Gは、低遅延や多数同時接続という特性を活かして「人、モノ、コトをリアルタイムにつなぐ」という点が、4Gと大きく異なっています。話題のIoTやAIを活用したデジタライゼーションの進化などを見据えた5Gによって、リアルタイム性が重視される機器の遠隔操作や遠隔医療、VRやARの高度化などが、可能になります。
建設、医療、公共など、NECは5Gの実証実験に参画
──来年の実用化を前に、これまでNECは5Gに関してどんな取り組みを行ってきたのでしょうか。
藤本:総務省が進めている5G実現に向けたプロジェクトの一環として、NECでは通信キャリア様のパートナーとして、さまざまな実証実験に取り組んできました。例えば、大手の建設会社大林組様との実証実験では、5Gによる建設機械の遠隔施工を実施しました。近年、日本では異常気象による自然災害が多発しています。そんな時、人が立ち入れない災害現場において、2次被害の心配のない無人の建設機械によるがれき除去が行えれば、迅速な復旧に役立ちます。また、災害によって現地の通信インフラが被害を受けた場合でも、5Gの移動基地局を配置することで、復旧作業を行うことができます。
医療分野では、離れた場所にいる専門医による遠隔診療のほか、救急搬送車と医療機関との間で患者の詳細データ共有を目的とした実証実験を行いました。それ以外でも、地域の安心・安全を支える見守りサービス、ARを活用したスポーツ観戦など、産業、医療、公共、エンターテイメントと幅広い分野で、さまざまな通信キャリア様ととともに実証実験に取り組んできました。
──5Gの実証実験を通じて、NECが得たモノとは何ですか。
藤本:これまでの通信ネットワークの枠組みを大きく変える新たな取り組みに関わったことが、まず大きな収穫だと言えます。5Gを活用した実証実験では、NECの基地局やサーバを提供しながら、アプリケーションを実際に動かして検証したことで、次世代移動通信システムに対する技術的な理解を深めるともに、新たな知見やノウハウを共有することができました。
──今後、5Gはどんな分野で活用が期待されているのでしょうか。
藤本:通信事業者が主体となって展開するキャリア5Gは、大都市を中心にゲーム、VR/AR、動画配信、スポーツ観戦など、まずはエンターテイメント分野におけるリッチコンテンツとして活用が広がっていくと、私は考えています。その後は、現在開発が進んでいる自動運転などの交通分野、さらには医療、セーフティなど、ミッションクリティカルな領域や社会インフラの分野へと活用が拡大し、利便性や安心・安全など社会や暮らしを大きく変革していくでしょう。そしてもうひとつ、5Gの大きなエポックとして注目されているのが「ローカル5G」です。
目的に合わせて、5Gを自由に使いこなす時代へ
──注目の「ローカル5G」について、わかりやすく教えてください。
藤本:キャリア5Gというのは、その名の通り通信キャリアが提供する無線データ通信網です。一方のローカル5Gは、一般の企業やパブリックユーザが、5Gのネットワークを自身で構築し、活用することができます。つまり、通信キャリアに頼ることなく、個別の専用ネットワークとして、5Gを幅広い用途に利用できるのが、ローカル5Gの最大のポイントです。
例えばローカル5Gは、映像で監視しながら複数のロボットを動かすような工場内のIoTにおいて、低遅延・多数接続の専用ネットワークが大きな力を発揮します。また、実証実験でも触れましたが、建設分野の遠隔施工、過疎地域での遠隔診療、自治体における地域の見守りや防犯などにも活用が期待されています。さらに、スタジアムや劇場、イベント会場などでは、多数同時接続という特性を活かした新たなメディア体験やプロモーションなども可能になります。
──5Gの活用において留意すべき点とは何ですか
藤本:5Gという無線データ通信網をつなぐだけで、新たな価値が生まれるというわけではありません。5Gを実際に活用するためには、セキュアで安定したネットワーク稼働、大容量のデータ処理、IoTの鍵となるセンシング技術、ユーザ認証など、新たなネットワーク環境の構築が不可欠になります。
またローカル5Gのライセンス取得には、無線システムのルール設定や設計・検証など専門知識を必要とするさまざまな準備作業もあります。こうした条件や課題をクリアして、5Gに最適なネットワーク環境を構築するためには、サポートするパートナーの存在が特に重要になってきます。
ICT、通信ネットワーク、AI。5G時代を支えるNECの強み
──5G活用を支援するパートナーとしてNECには、どのような強みがありますか。
藤本:NECは、ICTとネットワークの双方に強い数少ないベンダーとして知られています。
通信インフラにおいては、海底から宇宙までカバーする事業を展開。また世界150ヵ国以上の国々への提供実績を誇る小型マイクロ波無線通信システムの技術は、5Gの無線基地局における大きなアドバンテージになります。5Gの実証実験では、通信キャリア様と具体的なさまざまな取り組みを行い、基地局やサーバの提供、映像や音声送信で重要な役割を果たすコーデック技術など、多くの経験とノウハウを蓄積してきました。
さらにNECはネットワークの高度化に不可欠なSDN製品を世界に先駆けて送り出したほか、AIにおいても予測や分析、認証など世界最高水準の技術を数多く開発してきました。こうしたICT、通信インフラ、ネットワーク、AIなどの総合力が大きな強みです。
NECは数々の強みをもとに、”5G時代にふさわしいネットワーク技術の革新”、”運用の自動化やソフトウェア化を見据えたオペレーションの高度化”、”新しいプレーヤーと新しい使い方によるソーシャル価値の創出”の3つの観点から、5G時代のデジタルトランスフォーメーションに貢献していきます。
ネットワークに強いSEと業種に詳しいSEが、お客様の5G活用を支援
──5G活用に対するNECの今後の取り組みについて教えてください。
藤本:キャリア5Gにおいては実証実験の成果や経験をベースに、通信キャリアやさまざまな業界のパートナーの皆様と一緒に、技術やアイデアを融合しながらいままでにないネットワークの使い方や新たな価値を生み出していきたいと考えています。
ローカル5Gについては、「自分たちのビジネスに、5Gをどう活用したらいいのか、わからない」という企業や自治体も多いと思います。そうしたお客様に対してNECでは、5Gを実際に体験していただく環境も用意していますので、ぜひご利用いただければと思います。実際の5G活用においては、お客様の業務に詳しい業種SEとネットワークに精通したSEが、お客様の課題解決や活用目的を一緒に考え、5Gの最適活用に向けた具体的な支援を行います。さらに5G活用環境の構築では、デバイスやネットワークインフラ領域から、業種や業務アプリなどソフトウェア領域までカバーしたNECのサポート力で、5G活用のトータルソリューションを提供します。
──最後にネットワーク技術のエバンジェリストとして、先進のワイヤレスネットワークに対する思いを聞かせてください。
藤本:通信キャリアから提供される通信網を使うだけでなく、ユーザが主役となって自らネットワークを作り上げ、次世代通信技術を使いこなす時代へ。これこそが、5Gが実現するパラダイムの変化です。NECでは、5GをはじめLTE、Wi-Fiなどさまざまな通信ネットワーク技術を活用して新たな社会価値やビジネス変革を創出する事業ブランド「NEC Smart Connectivity」として、さまざまな機能やサービスを提供します。先進のワイヤレスネットワークで、ビジネスの可能性をNECとともに、ぜひ広げていきましょう。