2017年03月16日
AFP通信ニュースで世界の「今」を読み解く
忍法「観光立国」の術!情報を賢く活用すべし
文化遺産「保存」から「活用」へ
それでは、日本はこれからどうすればよいのか。忍者を事例として考えるならば、文化財を今以上に整備するだけでなく、日本の歴史や文化を体験できるサービスを用意することで、もっと多くの外国人を呼び込むことができるだろう。例えば<忍者百人衆>のように、外国人観光客が人気のキャラクターに扮して街を歩くことで、多くの日本人や日本の文化に触れてもらうきかっけとなる。訪れる史跡が少しずつ変わり、同じ街でも会う人が異なるような質の高い体験ツアーを設計すれば、参加する外国人観光客にとって新しい体験が生まれる。そうすればリピーターとして何度も日本を訪れてくれるかもしれない。文化財も展示・保存するだけでなく、それを通して日本の何を伝えるのかという哲学を持てば、その魅力は何倍にも膨らむはずだ。こうしたコンテンツの準備こそが、真の「おもてなし」と言えないだろうか。
そして、この質の高いコンテンツとしての「おもてなし」を実現するためには、日本人がこの国の歴史と伝統を守り、継承する心を持つことが何より重要である。AFP記者のインタビューを受けた京都の芸者の言葉はそれを象徴している。
「私たちは自分たちのイメージを壊さないように慎重になる必要がある。舞妓がフライドポテトを食べたくなったら、ジーンズをはいて行かなければならない」(8)

日本が世界で勝負できるコンテンツは「フジヤマ・ゲイシャ」だけではない。テレビ大阪制作、全国ネットの「和風総本家」という番組では「世界で見つけたMade in Japan」と銘打って世界の思いがけない場所で活躍する日本製品を発見するシリーズを放送している。2月23日の2時間スペジャルでは、有名ブランドが軒を連ねるイタリア・フィレンツェの街で実は創業90年を超える奈良の老舗工場で作られているメリヤス針が「織機の心臓部」として活躍していることや、アメリカの有名デザイナーが「発色」や「のびの良さ」を絶賛する東京下町生まれの絵の具などが紹介されている。また、成人の日に放送されたNHK「ONEOK ROCK 18祭FES ~1000人の奇跡 We are~」では、若者に絶大な人気のバンドONEOK ROCKと全国から集まった1000人の18歳が一夜限りの共演をするステージのオープニングで、大学の書道学科に進む高校3年生のダイナミックな書道パフォーマンスに目を奪われ、大学進学で初めて別々になるという幼馴染2人による新潟県の伝統芸能・松苧太鼓に息を飲んだ。外国人や若者に日本の伝統的なコンテンツを教わる必要がありそうだ。
また、コンテンツを陰から支えるテクノロジーも重要だ。例えば、すでにレジャーランドでは試みられている行動情報のトラッキング技術を、より大きな都市単位で行うことが考えられる。体験ツアーなどでの外国人観光客の動線をデータ化し、それを解析することで、新たな体験ツアーの設計や、文化財の案内の改善などにつなげることができるだろう。3月に開講されたオンライン無料講座「文化財を活用した観光拠点形成」の講師陣には東大教授の他、文化庁、観光庁、自治体の職員や教育委員、企業のスペシャリスト(旅行、広告、人材派遣)らが名を連ねている。産官学が連携して取り組むべき課題と認識され始めたようだ。
彩のある気候と豊かな自然に囲まれ、そこから採れる豊富な食材を生かし、歴史的な遺産をコンテンツとして活用し、海外からの観光客をもてなす。そして、それを先端技術が支える。観光産業は、少子高齢化でも先端を行く日本が生き残るための手段だ。2020年では外国人観光客に今までとは違う日本の真の「おもてなし」を知ってもらい、リピーターを増やしていく絶好の機会となるはずだ。
(文/有限会社ラウンドテーブルコム Active IP Media Labo、写真/AFPBB News)
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(4) AFPデータベース ID:000_ LX3JR
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(7) WISDOM|ヒトをつなぐ。ビジネスがつながる。(2013年05月10日)「都市国家シンガポールの観光立国事情」
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