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若きリーダーが熱く語る
ICTを活用した「市民に時間を返す」行政改革とは?

2017年9月26日

マイナンバーカードへの「ワンカード化」で利便性を向上

 千葉市はマイナンバーカードの活用でも一歩先をいく施策を展開中だ。いわゆる「ワンカード化」の推進である。政府は2020年までのマイナンバー制度利活用推進ロードマップの中でワンカード化の促進を掲げており、公的個人認証サービスを活用して、健康保険証やお薬手帳、運転免許証などと、マイナンバーカードの一体化を目指している。

 千葉市はその流れを先取りし、既にコンビニでの証明書発行(住民票の写し、戸籍証明書、税証明書など)をしているほか、図書館での図書貸出をマイナンバーカードで行うサービスを開始した。なお、マイナンバーカードを使った図書の貸出サービスは、政令指定都市では千葉市が初のケースとなる。

 「マイナンバーカードを普及させるには、多少時間がかかっても持つ方々の利便性を高めることが必要です。千葉市で利用できる図書館カードの登録者は約30万人で利用頻度も高い。そこで証明書のコンビニ交付に続くマイナンバーカードの独自利用として、図書館カードをワンカード化の対象としました。図書館でマイナンバーカードを活用するには、従来、電子証明書の暗証番号入力などが必要でしたが、千葉市が採用したNECからの提案による方式では不要となっており利便性が高まっています。また職員がカードに触れない運用を確立するなど、個人情報の漏えいなどに不安を持っておられる方々にも十分な配慮を行っています」と熊谷氏は説明する。

 高齢者で運転免許証を所持していない場合、マイナンバーカードを身分証明書として持ち歩くケースも少なくない。そうした市民からはワンカード化による利便性の向上が高く評価されているという。

まずは実践を重ねる中で議論を深めるべき

 マイナンバーカードを持つことで利用できるサービスに「マイナポータル」がある。マイナポータルは政府が運営するオンラインサービスで、子育てに関する行政手続きがWeb上でワンストップでできたり、行政からのお知らせが自動的に届く機能が実装される。この基盤機能を利用して、市民にプッシュ型のお知らせサービスを提供しようというのが千葉市の構想だ。

 「マイナンバーカードは市民一人ひとりに向き合える有力なツールです。その機能を活用し、子育て支援や予防接種など、行政が提供する様々なサービスを、広報紙やホームページで確認したり、市役所にわざわざ問い合わせなくても、市が個別に対象者を把握してタイムリーにお知らせしていく。そうすることで便利さが増すだけでなくサービスの受給漏れも防ぐことができます」と語る熊谷氏。それは先にも挙げた「市民に時間を返す行政改革」の、さらなる高度化にもつながるものだ。

 その一方で"マイナンバーカードありきの行政サービス"を追求していくことは、時期尚早との考えも示す。

 「マイナンバーカードの活用に苦手意識を持つ方もいらっしゃいますから、唯一の選択肢とはしません。制度やカードの普及にかかわる議論は0か100かで進めるのではなく、選択肢の1つとして提示できるように環境を整えます。多様な選択肢を用意してベネフィットを取りたい方はAの方法、リスクをゼロにしたい方は利便性を犠牲にしてもBの方法と選べばいいのです。最後はそのバランスをどう取るかだと思います」と熊谷氏は言う。

 さらに熊谷氏は「自治体のICT改革は10年計画。様々な価値観を持つ市民の理解を総意として得ながら施策を進めていくには、それくらいの長いスパンが必要です。そのために私は以前から、マイナンバー制度活用の戦略特区があれば名乗りを上げたいと考えてきました。国レベルでマイナンバーカードの普及促進を図るには、運営コストとリスクをきちんと見極めた議論が必要です。まずは電気・ガス・水道・銀行といったパブリックに近い部分から、民間にも自治体が所有する行政データを開放し、マイナンバーカードだけでなくスマートフォンや生体認証も活用しながら、国民と一緒に利便性、コスト、リスクなどの議論を進めていくべきです」と続ける。

 「合意がとれないからやらない」ではなく「まずは実践を重ねる中で議論を深めるべき」と説く熊谷氏。そこには数々の斬新な住民サービスを立ち上げ、試行錯誤しながらも住民参加型の行政運営を推進してきた先駆者たる自信を覗かせる。

 だからこそ、これからマイナンバー関連サービスを立ち上げる民間企業にも「新しいインフラに貢献するサービスを作る意識を持ってほしい」と熊谷氏は期待を寄せる。

 「大きなグランドデザインの中で、どう国民に貢献できるサービスかを考えていただきたいのです。便利で安心できる国民生活の将来像を描きながら、そのためにマイナンバー制度で何ができるのかを各企業の技術やノウハウを使いながら提示していく。真に求められるサービス開発には、そういった姿勢が何よりも重要だと考えています」(熊谷氏)

 97万5000人の市民参加に向けたICT施策を、行政のリーダーとして、市のCIO(最高情報責任者)として推進してきた熊谷氏の言葉には、これからのICTを活用した社会創りへの、多くの示唆が含まれているといえるだろう。

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