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RPAがユーザーサクセスを支える職場の仲間になるには
~失敗で終わらせない。RPA活用の成功の秘訣~

 これまで人手に頼っていた定型業務を、ソフトウェアロボットが代行し、生産性向上や業務負担の軽減を実現するRPA(Robotic Process Automation)が、さまざまな分野で注目されている。そんなRPAツールをグループ内の複数業務に活用しているNEC。導入にあたって、さまざまな“しくじり”経験を糧に、現在では大きな成果がでているという。RPAは、どんな業務に適し、導入失敗をまねかないためにはどうしたらよいのか。NECグループの活用事例をもとに、成功のヒントを探る。

業務の自動化で、生産性向上と社員の業務負担を軽減

 労働人口の減少や働き方改革への対応は、いまや社会全体の重要課題であり、国内の企業・組織が取り組みを進めている。そんな中、「働き方改革関連法」が2019年4月に施行された。単月上限などあるものの、時間外労働は原則月45時間以内に規制されており、より一層の業務の生産性向上が急務となっている。さらに、AIやIoTなどデジタルを活用した新規ビジネスの検討を行う企業も増えており、既存業務の生産性向上・効率化は必須の状況だ。

 このような社会状況のなか、注目を集めているのが、定型業務や間接業務の自動化を図るRPAだ。財務・経理・調達などバックオフィス業務やExcelのデータ入力など、さまざまな業務の自動化によって、作業時間の短縮や生産性向上、業務負担軽減が大きな狙いだ。また、作業漏れやミス、作業の属人化も回避することができる。そんなRPAが、さまざまな職場で力を発揮し始めている。

 業務の効率化、時間の短縮といった定量的な成果に加え、これまで人が行っていた業務をRPAで代行することで、人はより付加価値の高い業務に集中できるなど、人的リソースを有効活用できる。

RPAの対象となる業務の例

NEC自らRPAを活用。”しくじり”経験からの気づき

 そんなRPAを早くから取り入れ、グループ会社を含め業務の効率化・生産性向上に向けた取り組みをNECでは進めている。中心となって進めているのは、NECグループ全体のバックオフィス業務を束ね、業務改革の推進を担っているNECマネジメントパートナーのRPA推進センターだ。2018年4月の本センター設立に至る1年半前から、RPAツールの先行導入を行い、ノウハウを蓄積してきた。その背景についてRPA推進センター センター長の滝本は、次のように説明する。

 「NECグループでRPAを活用した背景は大きく3つあります。第1は、労働人口不足や働き方改革への対応、第2はNECグループ全体のバックオフィス統合による効率化という大きな命題、そして第3にノンプログラミングや容易な操作性などRPA技術の進化でした。こうした条件やタイミングの一致によって、RPA活用を決断したのです」

NECマネジメントパートナー
プロセス・IT統括事業部 RPA推進センター
RPA推進センター長 滝本 浩史

 このような背景からスタートしたRPAツールの先行導入で様々なことを経験したという。「先行導入の際、手探りで始めたこともあり、さまざまな”しくじり”を経験しました。例えば、『業務改革の視点が弱くRPA活用といった手段から着手してしまった』『業務の流れの洗い出しが足りなかった』『RPAツールの導入から運用までの整理が不十分だった』などが挙げられます。このような”しくじり経験”から、RPAツールを導入するためのプロセスやルールなどの仕組み、教育の重要性を学びました」と滝本。

 この”しくじり経験”から学び、試行錯誤したことで、NECグループ全体の大きな成果が生まれた。

RPA導入におけるしくじり・苦労や試行錯誤

担当者のプレッシャーも軽減。30,000時間を超える余力時間を創出

 RPAツールの先行導入では利用者の嬉しい声や、作業時間の大幅な短縮、業務負担の軽減など、確かな成果が生まれ、RPA活用の手応えが感じられた。また、今回クライアント型RPAツールを利用したことで、ロボットでエラーが起きた場合でも、利用者自身でリカバリできたことも確認することができた。

 「時間短縮や業務効率化など定量的な成果だけではなく、利用者からは『作業が楽になった』といった声がよせられました。その中で、印象的だったのは『作業の正確性が高まり、気が楽になった』と声があったことです。経営に影響するような経理などの業務の場合、ミスしてはいけないという意識から担当者には相当なプレッシャーやストレスがかかっていた。そこもRPAによって解消できたことは、見逃せない成果といえます」と、RPA推進センター シニアコンサルタントの大岡は語る。

NECマネジメントパートナー
プロセス・IT統括事業部 RPA推進センター
シニアコンサルタント 大岡 明久

 NECグループ内から、この1年間で400件近い問い合わせがあり、その内トライアル導入を含めて300件以上の利用申し込みがあったという。いまでは108体のクライアント型RPAツールが稼働。実績報告のレポート作成、経理データの異常値抽出など、さまざまな業務に活用され、年間で30,143時間の余力時間の創出という成果を生み出している。

 手作業で行っているような基幹システムを介さない業務の場合、クライアント型RPAツールを活用し、情報システム部門に負担をかけず、利用者がRPAのシナリオを作成して業務の自動化を行っている。

 「RPAを導入する前に、適用できそうな業務フローを洗い出していると、あれもこれもと適用範囲を拡大したくなりますが、これが大きな落とし穴です。例えば、シナリオ設計が煩雑になり多くの時間がかかる、エラーの原因究明が煩雑になるなどの影響がでます。まずは、スモールスタートから始めることをおススメします」と大岡。

実践経験による信頼性と安心感を提供

 NECでは、自社グループにおけるRPA活用の経験や実績をベースに、クライアント型RPAツール「NEC Software Robot Solution」を開発し、企業や自治体に向けて提供している。

 NECが強みとするのは、NECグループ活用に基づく信頼性と安心感だ。さらに、RPAツールの特長を、NEC AIプラットフォーム事業部 マネージャーの服部は次のように説明する。

NEC
AIプラットフォーム事業部
マネージャー 服部 佳正

 「一番の強みは、容易な操作性を支える高度な画面認識機能です。利用者は、ふだん使っているPCと同じ直感的な操作によって、RPA活用のシナリオ設定や実行が行えます。これにより、利用者自身がシナリオ作成できるため、プログラミングやIT要員が不要で、業務の自動化が実現できます」

わかりやすい操作性

 純国産ツールである「NEC Software Robot Solution」は、短期利用から買取まで柔軟なライセンス体系、わかりやすいマニュアルやインタフェースの提供に加え、NECならではの迅速なサポートや充実のサービスもポイントだ。NECグループ自身の活用実績をもとに、運用ルール策定、業務選定、導入検証、導入後のRPA開発支援、従業員への技術教育支援など、導入企業のフェーズや要望に合わせて多彩なサービスメニューが用意されている。

 すでにメーカー、百貨店、金融、自治体などさまざまな分野で導入されており、商品登録や発注作業、伝票作成の自動化など、業種特有の業務においても、確かな成果を発揮している。特に月末、期末、歳末など、期間によって集中する業務では、導入前と比べて作業効率に格段の違いが生まれ、導入企業からは社員や職員の大幅な作業負担を軽減できたことが高く評価されているという。

サーバ型、ハイブリッド型など、多彩なツールを開発

 NECでは小規模業務に対応したクライアント型RPAツールに加えて、大量のデータ処理や非定型業務に向いているサーバ型、クライアント型とサーバ型を組み合わせたハイブリッド型など、業務の規模やニーズに応じて適材適所のRPAツール活用・提案も行っている。NECグループ内では2018年度末時点で、約350体のサーバ型RPAツールも稼働。経理・財務、人事・総務、資材・調達、営業バックオフィスなど、132の業務で自動化が進んでいるという。

 『すべてのRPAツールの管理に目が届くか不安』『もしロボットにトラブルが発生した場合、他のシステムへの影響は?』。RPAの適用範囲が広がるにしたがって導入企業では、こんな懸念も生じてくる。しかしNECなら、その点についても安心だ。NECでは、これまで多くの実績を誇る統合運用管理ソフトウェア「WebSAM」で複数のロボットの実行・停止、スケジュール管理、遅延・エラーのリアルタイム監視などを実現している。

ロボットの予定や実行結果が視覚的に把握でき、未来の予定も簡単に把握が可能

 2019年4月、RPA推進センターでは「WebSAM」の本格導入を開始し、現在400体以上のロボットの統合運用管理を行っている。こうした統合運用管理ソフトウェアの存在やRPA推進センターによるユーザサポートのノウハウは、RPA活用を検討している企業とって大きな安心材料となるだろう。

 今後NECでは、「NEC Software Robot Solution」の操作性のさらなる強化を行い、行政業務の効率化による住民サービスの向上、医師の事務作業の負荷低減による診療サービスの充実など、企業だけではなく公共や医療分野などへのRPA活用拡大にも力を注いでいく。

 また、AIを活用した業務の自動化や非定型業務の自動化など、次世代型RPAへとステージアップする取り組みも進めている。今後は、RPAのログを収集・分析することで、業務改革をさらに一歩進めた業務プロセス改革につなげていきたいと、RPA推進センターの滝本は意欲を燃やす。

 さまざまな業務をすばやく正確にこなして、業務の負担から人々を解放してくれるRPA。
頼れるRPAは職場の新たな仲間として、さまざまな企業・組織から歓迎されるだろう。

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