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2017年12月27日

地方創生現場を徹底取材「IT風土記」

兵庫発 予防接種ミスを防ぎ、約30,000件の入力作業もゼロに!
丹波市の予防接種実施判定システムとは?

 兵庫県丹波市は予防接種のミスを防ごうと、市内の医療機関と連携してICT(情報通信技術)を活用した予防接種の判定システムを稼働させた。接種対象者全員の接種履歴などを管理し、ワクチンの種類や間隔に誤りがないかを自動で判定する。乳幼児期には数多くの予防接種を受ける必要があり、接種ミスや漏れを起こしやすいが、本システムは予防接種の安全性を高める効果が高く、安心して暮らせるまちづくりに効果を上げている。

管理が難しい乳幼児期の予防接種

 兵庫県の中央東部にある丹波市は、2004年に旧氷上郡の6町が合併して生まれた比較的若い市だ。丹波高地の急峻な山々に囲まれた緑豊かな地域で、徳川三代将軍家光の乳母、春日局の生誕地として知られる。市南部には丹波竜と名付けられた恐竜の化石が発掘され、地球規模での歴史を感じさせてくれるところだ。その丹波市が「予防接種実施判定システム」を導入したのは2017年4月。約6,000万円の国の補助金を活用して、およそ一年がかりでシステムを構築した。全国でも初めての取り組みだという。

 「丹波市では毎年約3万人に予防接種を行っていますが、これまで毎年15、16件の接種ミスが発生していました。幸いこれまで健康被害はありませんでしたが、あってはいけないことです。予防接種の実施主体としてミスが起きない環境を整備することが長年の課題でした」と丹波市健康部健康課健康総務係の北野博史係長はシステム導入の背景を語った。

予防接種実施判定システムの開発に取り組んだ丹波市健康課の北野博史係長

 予防接種は法律に基づいて市町村が主体となって実施する。丹波市は国が推奨する定期接種(B型肝炎やBCGなど)の費用を負担し、市民は無料で接種を受ける。市は市医師会に委託して予防接種を実施している。

 0~3歳までの間に行う定期接種では7種類で述べ19回のワクチンを接種する。一度、予防接種を受けると、健康被害を防ぐため、次の接種まで一定期間の間隔を開けることが決められている。しかし、ウイルス・細菌の毒性を弱めた生ワクチンの場合の接種間隔は27日以上、ウイルス・細菌の感染力を失わせた不活化ワクチンの場合、6日以上と異なる。また、ワクチンによっては半年の間に3~4回接種するものもあり、スケジュール管理に穴が開くと、間隔を空けずに次の接種をしてしまったり、誤ったワクチンを接種してしまったりといったミスが少なからず発生してしまうという。

 「市では、医療機関から送られてくる予防接種委託業務の予診票をもとに台帳をつくり、適切な接種が行われているかどうかを確認するのですが、毎月約1,000~2,000件、インフルエンザの予防接種期には約13,000件の接種実績をパソコンに手入力していました。入力が終わるのが約1カ月後で、後になってミスが判明するという状況でした」と北野係長。結果的に履歴の確認は、保護者が記入する母子手帳やかかりつけ医の記録に頼らざるを得なかった。

市と医療機関をネットワーク化

 新たに導入された予防接種実施判定システムでは、丹波市と予防接種を行う市内38の医療機関をネットワークで結び、専用のサーバーで市民の接種履歴を管理する。接種対象者のワクチンの種類や接種日などの蓄積されたデータをもとに自動的に接種の可否を判定する。システムとタブレット端末をつなぐ通信回線は医療情報システムの安全管理に関するガイドラインに準拠した完全閉域網のMVNO(仮想移動体通信事業者)回線を利用し、個人情報の漏洩を防止しているという。

 市は、医療機関側には専用のタブレット端末を設置する一方、予防接種の対象となる乳児から中学3年生(4月1日時点)まで約9,000人と肺炎球菌ワクチンの対象者となる高齢者約5,000人、インフルエンザワクチンの対象の高齢者約15,000人の計約3万人に専用のICカードを配布した。接種の対象者は、病院に行く際、ICカードを提示。医師はタブレット端末に読み込ませて対象者のデータを呼び出して、対象者に接種していいかどうかを確認する。

予防接種実施判定システムで医療機関に設置されたタブレットと接種対象の市民に配布するICカード

 医師は予防接種をすると、タブレット端末に接種日や接種したワクチンの製造番号などの情報を入力することで、システムが次回接種できるワクチンの種類や接種可能なタイミングを計算する。また、一連の作業で、次回の接種の日程を乳幼児の保護者に予防接種の専用サイトを通じて知らせてくれる。接種日の1カ月前、接種直前などきめ細かくメールで知らせてくれるため、保護者の接種忘れも防いでくれる。

 3歳の女児と1歳の男児を育てる主婦、清水里香さんも「前の仕組みでは市から配布される予防接種の冊子を見て病院に行っていたのですが、うっかり忘れそうになることもありました。でも、メールで次の接種の日程を知らせてくれるので便利。デジタル化されてよかった」と喜んでいる。専用サイトの登録率は導入から半年の4~9月で、1歳未満の子を持つ保護者で93%、1~2歳児の保護者で76%と高く、接種実績も6~8%向上。接種漏れを防ぐ効果を上げている。

"三方一両得"を目指す

 このシステムについては、実際に利用している医療機関も高く評価する。

 市内でワクチン外来を設けている高見医院の高見啓央院長は「非常に操作性が高く、ストレスがない。驚くのは年齢をまたいで予防接種をするときに起きる微妙な接種ルールも読み取って適正な接種量を指示してくれる。よくここまで網羅できたと感心している」と語る。

システムの完成度を高く評価する高見医院の高見啓央院長

 高見医院では月150~200本もの予防接種を行うこともあり、市内でもトップクラスの接種実績を持っている。システムの開発にあたっては、市もさまざまな助言を受け、システム構築に反映させた。

予防接種をする高見医院の高見啓央院長

 高見医師は「こういった機器を導入すると、事務的な処理は便利になりますが、逆に医師の負担が増えてしまうことがしばしばあります。仮に診察中の操作に一人当たり1分余計にかかれば、100人の接種に100分の時間ロスが生まれることになります。面倒だと思われたら普及しないことにもなってしまいます」と語る。このため、システム開発では操作性に注意を払い、ワクチンメーカー名などをあらかじめ登録するなど極力文字入力を抑え、タブレットの画面タッチで操作できるようにするなどの工夫を加えたという。

 システム開発を手掛けたNECネッツエスアイは、市や保健師、医師から寄せられたさまざまなニーズをシステムに反映させたが、「開発プロジェクトを進めている中で、システムエンジニアは予防接種法を含め、予防接種の業務について専門家並みに詳しくなっていました」と吉田善崇・同社神戸支店営業担当課長は話していた。

 判定システムの導入によって、医療機関側は神経を使っていた予防接種の可否判定のストレスから解放され、乳幼児を抱える市民もメールで接種の日程確認ができ、安心して予防接種を受けられるようになった。また、市はこれまで1カ月かけて行っていた予防接種業務の入力作業も自動化された。導入から半年、4月~9月には6,792件の予防接種が行われたが、その入力作業はゼロに。医療機関及び市双方で飛躍的な業務の効率化を実現した。

 「このシステムが市の業務の効率化だけが目的だったらうまく導入できなかったかもしれません。市、医療機関、市民それぞれにとって利便性が高いシステムにできたことで早期の導入につなげることができたと思います」と丹波市健康部健康課の大槻秀美課長は指摘する。市、医療機関、市民の"三方一両得"のシステム開発が成功の原動力となった。

システムの操作法を説明する丹波市健康課の大槻秀美課長

 一方、課題も残されている。市は高齢者を対象にした肺炎球菌感染症やインフルエンザの予防接種を行うため、65歳以上の高齢者にも同様のサービスを提供しているが、カードを紛失してしまうケースが少なくないという。また、高齢者は専用サイトへのメールの登録率も低い為、対策として防災放送なども活用して予防接種の呼びかけを行っている。大槻課長は「将来的には、マイナンバーカードに組み込めるようにするなど対策を検討している」という。

地方共通の課題を解決…いかに全国に広げるか

 市民にとって安全・安心なまちづくりは、地方創生の大きなカギを握る。このため、丹波市では、このシステムを活用した新たな医療サービスの提供も模索している。

 「例えば、医療機関や介護施設、調剤薬局などをネットワークでつないで、包括ケアサービスを提供できる環境を整えられればと考えています。処方薬の重複投与による副作用を防いだり、膨らみ続ける医療費の削減にもつなげたりしていきたいですね」と丹波市の谷口進一市長は語る。

丹波市の谷口進一市長
予防接種実施判定システムをさらに発展させ、安全・安心なまちづくりをめざしている

 丹波市は、2019年に市内にある県立柏原病院と柏原赤十字病院を統合した新しい総合病院の開設を計画しており、新病院を軸にした新たなまちづくりを模索。谷口市長は「実現に向けて、ICTやIoT(モノのインターネット)を積極的に取り入れたい」としている。

 厚生労働省の調べによると、2016年度に全国で起きた予防接種のミスは6,602件に上る。2013年度に報告制度が始まってから、その数は増加傾向にある。報告されたミスの半数以上は「接種間隔の間違い」で3,475件も起きている。接種ミスは丹波市だけの問題ではなく、全国の市町村の課題だ。

 人口の減少や高齢者の増加、少子化対策…。地方が抱える共通の課題は多い。今回の丹波市の取り組みはICTを活用して、その課題解決に導いた代表例ともいえるだけに同じ課題に悩む全国の市町村に広げていく取り組みも求められそうだ。

(産経デジタル SankeiBiz編集部)

NECおススメITソリューション|兵庫篇

 そういえば、小学校で何度か予防接種を受けたけどあれは何の注射だったのかな……
子どもの頃に受けた予防接種のこと、たいていの人はあまりよく覚えていないでしょう。
自分が親の立場になって、子どもに必要な予防接種の一覧を見てビックリした…という人は多いはず。
一覧をまだ見たことがない人も、ネットで検索してみるとビックリしますよ。

 生後間もなく、物心がつく前に、結構な数の予防接種を受けることになっていて、しかも接種の間隔など注意事項が多いので、特に新米ママパパはいろいろ心配になりますよね。
丹波市の「予防接種実施判定システム」は、そんな親の不安を軽減してくれるかしこいシステムです。
NECネッツエスアイは、全国の自治体・医療機関に、このシステムをご提供していきます。

予防接種実施判定システム

  • 特長1予防接種履歴をリアルタイムに確認し接種ミスを軽減
  • 特長2予防接種の実績登録業務を自動化することにより、事務改善や費用を削減
  • 特長3タブレット端末による情報共有のため、医療機関側のネットワークは変更することなく使用可能
  • 特長4MVNO閉域網/IC認証によりセキュリティを確保

 そして、記事中でも触れていますが、こうした公的サービスを「マイナンバーカード」で受けられるようになるとさらに便利ですね。
サービスごとにカードが増えるよりも、断然使いやすいですし、管理もしやすい。
NECは「マイナンバーカード」の利活用ソリューションも積極的に開発・提供しています。

マイナンバーカードを利用した図書館システム~全国初、暗証番号入力なしの新方式の利用者認証を採用~

 千葉市図書館に導入された新システムは、図書館の利用者登録時にマイナンバーカード内の利用者証明用電子証明書の発行番号(シリアル番号)のみを抜き出し、図書館の利用者番号と紐付けて登録するID連携方式を採用。ICチップに登録されているマイナンバーや氏名、住所といった個人情報は一切利用せず、ICカードリーダーにマイナンバーカードをかざすだけで図書を借りることができます。

 ITの活用で、みんなの暮らしをもっと安全・安心・快適に。
社会課題を解決するNEC、NECグループの社会ソリューションにこれからもご注目ください。
そうそう、今年のインフルエンザ、予防接種はどうされましたか?

徳川三代将軍家光の乳母、春日局の生誕地とされる興禅寺の山門

(By NEC IT風土記編纂室 R)

産経デジタル SankeiBiz編集部
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