ここから本文です。
Japanese English

2018年03月26日

5Gによる遠隔診療で、
離れた地域にも専門医の医療サービスを

 山間部の町に暮らす人が、遠く離れた都市部の大学病院に足を運ぶことなく、専門医の診療が受けられる。そんな新しい医療サービスの実現に向け、先進の実証試験が進められている。2017年にスタートしたこの取り組みは、次世代の移動通信システム「5G」を活用して地域の診療所と大学病院を結び、遠隔診療サービスの検証を行うというものだ。

医療機関の都市部への集中による地域格差は、日本各地の課題

 日本各地で少子高齢化が進む中、医師不足や地域によって医療機関の偏在が大きな社会課題となっている。特に過疎地での高齢化が進み、都市部にある高度医療機関の診療が受けにくいという現状がある。また、過疎地にある診療所の医師は、専門科目以外のさまざまな診療に携わる日々を送っている。

日高川町国保川上診療所 所長 医学博士
平林 直樹氏

 「高齢者の割合が約40%という和歌山県日高川町では、大学病院を受診するためにはバスで1時間半もかかります。診察や検査、治療などのために、都市部の大学病院を度々訪れることは、高齢者にとって大きな負担となります。一方で、いろいろな患者さんと向き合う地域のかかりつけ医としては、診療において専門医の意見を聞きたいという思いがあります。」

和歌山県日高川町 川上診療所

 こうした現状の中で和歌山県では、地域の医療機関を結んだ医療連携システムの構築など、県内の医療サービスの向上に向けて積極的に取り組んできた。2016年10月に開始した、和歌山県立医科大学と日高川町の川上診療所を結んだインターネットによる遠隔診療もそのひとつだ。

和歌山県立医科大学付属病院

 しかし従来の遠隔診療では、画像が不鮮明、画像送信の遅延といった課題も多く、診療の限界や医師同士のコミュニケーションにもどかしさも感じていたという。

実証試験では4Kの高精細映像を、5G で超高速伝送

 現在、総務省の主導で5Gを活用した数々の実証試験が進められている。そのひとつとしてNTTドコモが受託したのが遠隔診療サービスの取り組みだ。和歌山県と和歌山県立医科大学は、従来の課題を解消し、医療サービスのさらなる向上を図るために、この取り組みへの参画を決定。5Gを使った先進の遠隔診療サービスの実証試験がスタートした。

 実証試験の内容は、和歌山県立医科大学と川上診療所に4Kモニターを設置し、エコー動画や4Kの高精細カメラで撮影した患部画像を、5Gを使って診療所から和歌山県立医科大学へ高速伝送。双方の医師が映像を見ながらTV会議によるリアルタイムなコミュニケーションを図るというものだ。

実証試験系構成イメージ図
画像を拡大する

 試験でのポイントは、5G を活用した「問診用高精細TV会議」と「診断用高精細映像伝送」という、2つの映像伝送の検証。システム構築では、5Gの基地局と端末局装置、さらに4Kの高精細画像伝送のコーデック技術が重要な役割を担う。5G のさまざまな協業試験を通じて、NECの装置開発技術やシステムのインテグレーション能力を高く評価したNTTドコモは、今回の遠隔診療の協力パートナーとしてNECを選んだ。

5Gの基地局と川上診療所内の端末局装置

鮮明なエコー動画や患部画像の送受信で、Face to Faceの臨場感を再現

 2018年2月から3月には、実際に患者の協力を得ながら循環器内科、整形外科、皮膚科などの科目で、川上診療所と和歌山県立医科大学の間を5Gで結んだ遠隔診療の実証試験が行われた。試験に参加した和歌山県立医科大学の医師は、その感想を次のように語る。

和歌山県立医科大学
循環器内科 地域医療支援センター
卒後臨床研修センター 講師
山野 貴司氏

 「声や映像の遅延もほとんどなく、特に画質の良さは想像以上でした。送られてきたエコー動画で見る心臓の動きも鮮明で、診断の質も上がると思います。また、TV会議を通しての患者さんとのやり取りは、Face to Faceで診察しているような感覚でした。皮膚の質感や患部の濃淡も明瞭で、皮膚科の医師も画質には驚嘆していました。」

 一方で、山間部の川上診療所で実証試験に協力した医師は、その成果やメリットを、こう説明する。

皮膚の接写により患部を共有

 「実証試験では、まるで県立医科大の先生がとなりにいて、患部画像を一緒に見ているような臨場感を感じました。専門医からの意見は、患者さんにとって信頼感が高まるとともに、診療所の医師にとっても専門知識の蓄積というメリットがあります。こうした先進の医療サービスは、将来和歌山県以外にもぜひ広がって欲しいです」と平林医師は期待を込める。

医療格差の解消や地域全体の医療サービス向上に貢献

 5Gを活用した遠隔診療サービスが実用化されれば、山間部や離島等で暮らす人や高齢者が遠くの病院に通う負担を大幅に減らすことができる。また、近くの診療所に足を運ぶだけで専門医の意見が聞ける遠隔診療は、都市と遠隔地における医療格差の解消にも大きく貢献する。

 さらに、遠隔診療はさまざまな診療所の医師のスキルアップにもつながり、地域全体の医療サービスの向上という成果も生み出せる。

 「専門医から的確なアドバイスを受けられる遠隔診療は、各地に赴任した経験の浅い医師にとっても心強い存在となるはずです。また、災害や事故現場から小型エコーで撮影した映像を高速伝送するなど、緊急医療においても活用が期待できます。これからも、先進技術を積極的に取り入れて、地域全体の医療を支えていきたいと思います」と、和歌山県立医大の山野医師は今後の期待について語る。

 今回、実証試験の取りまとめ役として、通信インフラ提供や試験の性能評価を担うNTTドコモと、5Gの無線局装置を担当したNECのスタッフに、それぞれ今回のプロジェクトに対する思いを聞いた。

株式会社NTTドコモ
先進技術研究所 5G 推進室 5G方式研究グループ
主任研究員
増野 淳氏

 「5Gの超高速通信は、エンターテイメント分野で注目を集めていますが、今回の高精細映像伝送を駆使した遠隔診療の試みは、医療分野における地域格差の是正に寄与し、社会的課題の解決にも役立つと感じています。今後も、ICTベンダーや多くの企業・団体と協業しながら、5G 活用による新たなビジネスモデルや価値を創出していきたいと考えています。」

NEC テレコムキャリアBU
ワイヤレスアクセスソリューション事業部
和田 翔

 「NTTドコモ様とは、5Gの活用においてさまざまな協業を行っています。都市部と遠隔地の間にある医療サービスの壁を『無線の力』で超える今回の取り組みには、大きなやりがいがあります。今後は、通信速度や品質のさらなる向上によって、診療だけでなく処置の分野まで、5G の無線の力で貢献できればと思います。」

 遠隔診療をはじめとして、災害現場における無人の遠隔施工、AIを活用したパブリックセーフティなど、5G による幅広い取り組みを進めているNEC。格差をなくした誰にもやさしい社会、より安全・安心に暮らせる社会に向けて、5G 活用への期待はますます膨らむ。

※ 本試験はNTTドコモが実施主体として総務省から請負った、平成29年度「人口密集地において10Gbpsを超える超高速通信を可能とする第5世代移動通信システムの技術的条件等に関する調査検討の請負」として実施されました。

関連キーワードで検索

さらに読む

この記事の評価


コメント


  • コメントへの返信は差し上げておりません。また、いただいたコメントはプロモーション等で活用させていただく場合がありますので、ご了承ください。
本文ここまで。
ページトップ