

形だけ、言葉だけ、格好だけの共創なんていらない
──NECがFuture Creation Hubに込めた想い──
NECは東京の本社ビル1階に「NEC Future Creation Hub」を開設し、2019年2月8日より活動をスタートさせた。ここは体感と対話によるイノベーションを生む共創空間。この施設は、これまでのショールーム的な施設とは一線を画すもの。テクノロジーを体感し、お客様とNECが本気で深い議論を重ね、お客様の課題とその先にある社会課題の解決を目指す。NEC Future Creation Hubの狙いと活動内容、そこから生み出される共創の姿について紹介する。
新施設はイノベーションを生む「体感・感動・共感」の場
お客様のビジョンと変革の実現を全力で支援し、それを社会課題の解決につなげていく――。これが社会価値創造型企業への変革を進めるNECが描く新たな企業像だ。この“覚悟”を内外にアピールするために開設した施設が「NEC Future Creation Hub」である。
施設内は来場者を迎える「Welcome Zone」、NECのDNAを紹介する「Innovation Gallery」、NECが描く近未来の世界を体験する「Future Society Zone」、先進テクノロジーとその活用例を体験できる「Technology Touch Zone」、対話とコラボレーションの場となる「Collaboration Zone」という5つのゾーンで構成されている。ルートに沿って一周することで、NECのビジョンとそれを支えるテクノロジーを俯瞰できる。
ただし、すべての来場者に同一のコンテンツを提供するわけではない。来場する企業の事業戦略や事業課題に沿ったプレゼンテーションやデモシナリオを用意し、より深いレベルでの共感や議論へとつなげていく。単にソリューションを展示する従来型のショールームとは一線を画し、「体感と対話で、新たなイノベーションを生む」ことを目指している。
この狙いについて、同施設センター長を務める野口 圭は次のように述べる。「共創は答えのない領域へのチャレンジ。まず互いの信頼を構築することが大前提です。技術やソリューションを前面に押し出さず、未来のイメージを共有し、夢やビジョンを語り合い『体感』『感動』『共感』してもらうことを最重視しています」。

IMC本部
NEC Future Creation Hub センター長
野口 圭
個々のお客様に最適な「ストーリー」を提供する

IMC本部
NEC Future Creation Hub 主任
川辺 彩
同施設の利用は完全予約制だ。「事前にお客様のビジョンや課題を把握し、営業担当者を含む社内のチームで綿密に『ストーリー』を練り上げ、じっくりと時間をかけてツアーとディスカッションを行います」と展示内容の企画を担当する同施設主任の川辺 彩は述べる。
もちろん、ソリューション(解決策)がいきなり見つかるとは限らない。新たな発想が必要であれば共創プログラムのワークショップを展開していく。その際はビジネスデベロッパー、サービスデザイナー、テクニカルアーキテクト、データサイエンティストなどからなるデジタルトランスフォーメーション(DX)の専門家集団「デジタルオールスターズ」から最適なメンバーでチームを編成し、共創を進める。
さらに最新技術活用が必要であればNEC中央研究所とも連携する。NECグループだけで対応が難しい場合は、産学連携のコンソーシアムなど外部のアセットも活用する。「Future Creation Hubは、お客様との共創の“起点”になると同時に、お客様とNECをつなぐ“ハブ”としての役割を担っているのです」と野口は説明する。
共に歩む共創の主語は「You」ではなく「We」
新たな共創空間として、NECがFuture Creation Hubを開設した背景には、手痛い失敗がある。従来の施設でも共創のワークショップは行っていたが、お客様の期待に応えられないことがあったという。
多くの場合、共創の主語はお客様、すなわち「You」だ。お客様が何を求めているか。お客様が何をしたいのか。それを汲み取り、サポートするというスタイルである。NECもこのやり方でワークショップを支援したが、お客様はワークショップを通じて、ビジョンの実現に向けたNECの意見を求めていた。
「この期待に応えられなかったため、答えを出さないなら、NECとパートナーを組む意味がないと言われたこともありました。仮説がない中でいくら議論しても何も生まれない。思いをぶつけ合わないと共創は弾けない」と野口は語る。
こうした失敗を糧として、NECでは共創プログラムを再構築した。その活動を支える拠点がFuture Creation Hubというわけだ。「互いのビジョンを共有し、お客様が意見を述べる。NECも意見を述べる。ディスカッションの場では互いが対等です。お客様を立てて、耳障りのいいことを言うだけではない。時には意見が衝突し、対話が頓挫することもあるかもしれません。それでも一緒に前を向いて歩み続けます」と野口は力を込める。
お客様と対等に意見を戦わせるためには、信頼関係を築くことが欠かせない。このためにNECがまずやることは、お客様を深く理解することだ。企業理念から中期経営計画、日頃の経営トップの発言などを精査するとともに、お客様が何を大切にし、何を目指しているのか。それをメンバー同士で徹底的に突き詰めていく。その上で、NECが目指すこと、実現したいこととの接点を探し、互いのゴールを描く。「必然的にこの施設から発信するメッセージの主語は『You』ではなく『We』になっていきます」(野口)。
100日で答えを出す“実のある対話”で共創を進める
NECは民需から公共系まで、グローバルレベルで多様なお客様の課題解決や事業変革に貢献している。その中で培った経験と知見は大きな強みだ。
しかし、先述したようにNECの共創プログラムが目指しているのは、単なるソリューションの提供だけにとどまらない。
「高度なコア技術はNECの強みですが、NECが目指しているのは、技術のその先の価値です。5年先、10年先も安全で快適に暮らせ、自治体、住民、地場の企業が互いのメリットを享受できるエコシステムづくりにこそ、NECの真価が発揮できると考えています」と川辺は述べる。
お客様と一緒に、世の中を良くしていきたいという目標を持って、その手段の1つとしてICTを提案するスタンスだ。「お客様に言われるままではなく、NECが描く世界観もしっかりと示し、お客様と対話することで、より良い社会づくりの共創を進めていきたい」と川辺は続ける。
地に足の着いた取り組みもNECの共創プログラムの特徴だ。それを象徴するのが「100日ルール」である。しっかりとお客様の話を聞いて準備し、ゴールを決めて100日で答えを出す。
「例えば、バリューチェーン全体のイノベーションは100日で結果は出ないかもしれません。しかし、構想は100日でできる。役割分担やスキームをどうするか。プロジェクト計画を立てることは可能でしょう。最終的なゴールが中長期に及ぶ場合は、フェーズを分けて仕切り直します」(野口)
未知の領域にチャレンジし、ゼロからビジネスモデルを創る共創の取り組みは、短期間で答えを出すことは難しい。先が見えないと共創をしているという行為自体が目的化し、“共創地獄”に陥る恐れがある。100日ルールはこれを避けるためのもの。事業化できるのか、できないのか。できるなら、いつまでに、何をやるのか。互いが納得する着地点を100日で確認し合うわけだ。
お客様のDXを加速する100日 プログラム

「さらに実のある共創を実現するためにはお客様の協力も不可欠です。そこで、共創開始前には事業目標の設定を明確に行った上で、DXによって、『業務の何をどのように変えるのか』、『どのくらいの価値を生み出しそうか』を徹底的に議論。そこから、事業責任者、ビジネス部門やシステム部門といったメンバーのアサイン、現場の観察や取引先へのインタビューなどを共同で行っていきます」と共創活動に携わるIMC本部の並木 鈴子は語る。

IMC本部
並木 鈴子
社会価値の創造に向け、DXをさらに加速していく
Future Creation Hubのオープンに先駆け、NECはこの100日ルールに基づく共創プログラムを実践。既にお客様との新たな共創を始めている。
次世代につながる街づくりを目指す、大手デベロッパーのお客様との共創はその1つだ。「インフラとしての街づくりにとどまらず、そこに魅力を感じて集まる人々がつながることで、街を、人を元気にしたい」――。独自のビジョンに深く共感したことがお客様の心を動かし、共創パートナーにNECが選ばれた。
「ビジョンの実現に向け、何をすべきかを徹底に議論した結果、まず柔軟なネットワーク環境が必要であることがわかり、NECのSDNソリューションの導入に至りました。ソリューションありきで提案していても、その提案は恐らく理解されなかったでしょう。ともに大きなゴールを目指す共創の取り組みがあったから、その実現手段としてSDNの提案が受け入れられたのです」(野口)。この共創はソリューションの提供がゴールではない。次世代につながる街づくりを目指す共創は、新たなフェーズへとつながっているという。
地域活性化を促すポイントマネジメントの仕組みづくりを目指す食品会社のお客様とも共創を実施した。自動販売機をベースにIoTを活用するというNECの提案ストーリーが評価された結果だ。IoTのデモを体験してもらったところ、その可能性にお客様が非常に興味を抱いた。「ICTベンダーという従来のNECのイメージを覆し、共創パートナーに選んでいただけたことは光栄です」と話す野口。同様の取り組みは大手飲料メーカーとも進めている。
社会課題を解決し、それを社会価値の創造につなげていく。それは1社単独でできるものではない。社会価値創造型企業への変革を進めるNECにとっても、共創は不可欠の取り組みである。「テクノロジーとビジネスの融合を体感し、感動と共感を呼び起こすFuture Creation Hubは、共創の発信拠点です。形だけ、言葉だけ、格好だけの共創なんていりません。今こそNECの不退転の覚悟を見せる時だと考えています」と野口は最後に語った。
Welcome Zone


Innovation Gallery

Future Society Zone




Technology Touch Zone

Collaboration Zone
