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「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2016」レポート

パラスポーツの力で社会を変える
~東京2020に向けた日本財団パラリンピックサポートセンターの挑戦~

2017年01月20日

来る東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京2020)に向け、パラスポーツをめぐる現状には多くの課題があります。日本財団では、2015年に「日本財団パラリンピックサポートセンター」を立ち上げ、競技団体を全面的に支援する体制を整えました。同サポートセンターのパラリンピック競技団体に対する基盤整備、パラリンピックを通じたインクルーシブ社会の実現に向けた活動や想いをご紹介します。

競技団体を支えるインフラ不足、人員の不足が大きな課題

パラリンピックは、今やオリンピックとサッカーワールドカップに次ぐ、世界の3大スポーツ大会の規模に成長しています。しかし、日本のパラリンピック競技団体は事務局基盤が整っていないのが深刻な課題となっており、選手強化や普及啓発が思うように進んでいないのが現状です。

昨年7月に行った競技団体の実態調査では、実に競技団体の約4割が自宅や大学の研究室などをオフィス代わりにしており、それ以外の団体のオフィスもほとんどがワンルームマンションといった状況でした。また、国からの助成金は主に選手強化に回されるため、約7割の団体では専従スタッフさえ雇えないというのが実情でした。

右から
日本財団パラリンピックサポートセンター 常務理事
小澤 直氏

NEC 東京2020推進室/元アイススレッジホッケー日本代表 パラリンピック 銀メダリスト
上原 大祐

「調査では、コーチが経理事務を兼任している団体もいくつかありました。運営のための予算は国からの助成金がほぼすべてで、競技団体が自ら人を雇ったり周知・啓発活動をする余裕がほとんどない状況でした。そこで、私たちは支援の柱として日本財団パラリンピックサポートセンターを設立することにしました」と、日本財団パラリンピックサポートセンター 常務理事の小澤 直氏は同センターの役割を説明します。

日本財団パラリンピックサポートセンターの概要

パラスポーツの発展に向け、競技団体の基盤整備をサポート

競技団体のオフィス対策として同センターが取り組んでいるのが、共同オフィスの無償提供です。昨年11月から競技団体への提供を開始し、リオ、平昌、東京パラリンピックに関連する31団体のうち、28団体が活用しています。オフィスには、常に情報発信ができるようメディアセンターを併設し、現在37社のメディアが利用しています。また、1団体あたり上限1,460万円の助成金を支給し、事務局専従の会計・税務スタッフの雇用費や競技団体の法人化経費、広報・普及活動費などを支援しています。

「会計や税務、翻訳などの業務を個々の団体で行うのではなく、まとめて行うことで一気にコストダウンが図れます。将来的に日本財団パラリンピックサポートセンターがなくなったとしても、この仕組みを活用して各団体が自立し、シェアしていけるシステムが存続できればと考えています」と小澤氏。

加えて同センターでは、パラリンピックを支援したい企業と競技団体をマッチングさせる活動や、学生インターンの派遣による各競技団体のWebサイト・会報誌の制作などにも取り組んでいます。

パラリンピック競技団体の基盤整備をサポート

東京2020を契機に、インクルーシブ社会の実現をめざしたい

リオパラリンピックで、日本は過去13大会続いていた金メダル獲得が0に終わりました。選手が育ちにくいのは国民の関心が低いのと同時に、社会環境にも大きな課題があるといえます。

たとえば、スポーツ用義足を作るには費用が少なくとも50万円ほどかかることから、パラスポーツに取り組むためのハードルが高く、若手選手が育ちにくい状況があります。また、障がい者が練習できる施設の少なさも深刻です。

これに対して、元アイススレッジホッケー選手の上原大祐氏が、施設の問題を語ります。「そもそも東京近郊にはアイスリンクが少ないことに加えて、実際に私たちが練習できる時間は深夜の1~2時でした。一般の営業を終えた後にしか、施設を借りられなかったのです。

また、近くの区立体育館は個人で借りることができないため、そこで練習するために区内在住の障がい者を10人集めて登録するといった苦労もありました」と練習の困難さを指摘します。

パラスポーツを取り巻く現状と課題

「海外在住の日本人障がい者が帰国すると、自身が障がい者であることをあらためて思い知らされるといいます。海外の社会環境に比べ、日本は障がい者に対する理解やサポートが非常に遅れていると感じます。東京2020はこうした社会環境を変える大きなきっかけになりうるし、私はパラリンピックにはその力があると思います」と小澤氏。

内閣府の調査で、障がい者に対する差別や偏見が「ある」と答えた方は9割にものぼります。また、障がい者と話したり手助けをしない理由としては、「接する機会がなく何をすればいいのかわからない」という回答がほとんどでした。

「エレベーターで健常者がわれ先に乗ってしまうのを、よく見かけます。海外の方から見ると、日本って素敵な国なのに残念だね…と感じられることが多いようです」と上原氏。

日本財団パラリンピックサポートセンターでは、元パラリンピック選手が「あすチャレ!School」と題した授業を、全国の小・中・高校向けに行っています。パラアスリートやパラスポーツへ直に接し理解してもらう内容で、今年は100校、来年からは250校をまわる予定です。

また、大人向けにはNEC協賛の「あすチャレ!Academy」を立ち上げています。障がい者についての「わからない・知らない・できない・経験がない」を解消し、手助けの第一歩を踏み出せるプログラムです。障がい別のコミュニケーション体験やグループワークを通じて、実践的にサポートする方法を学べます。

"障がい者サポート"を学ぶ新たな取り組み「あすチャレ!Academy」

施設を建設したり設備を整えたりするには、少なからぬ予算や時間が必要で困難なことも多いですが、私たちの意識や心は今すぐにでも変えることができます。

「『ハードが変えられなくても、ハートは今すぐにも変えられる』が、私たちのモットーです。エレベーターというハードがなくても、階段の段差サポートの方法を知れば、障がい者をその場ですぐにサポートできます。『ハートが変わる』ことで、私たち1人ひとりの行動が変わる、そして社会が変わる第一歩になると考えています」と、小澤氏は講演を締めくくりました。

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