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「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2016」レポート

アルゼンチン・ティグレ市が挑む犯罪発生率の低減 ~都市の発展と治安改善を目指して~

2017年1月19日

2016年11月1日、東京国際フォーラムにて、アルゼンチン ティグレ市長のフリオ・サモラ氏が「C&Cユーザーフォーラム & iEXPO2016」のセミナーに登壇しました。テーマは、犯罪発生率の低減に関するティグレ市の挑戦と成果です。ティグレ市は、NECと連携し、都市発展計画と治安政策を実施しました。この施策により、市民は治安の改善を体感しています。また、アルゼンチン国内や近隣諸国からもその優れた成果が注目を集めています。

フリオ・サモラ氏、アルゼンチン ティグレ市長

観光地として独自の魅力を持つティグレ市

ティグレ市は首都ブエノスアイレスから30キロメートルに位置し、面積は370平方キロメートルで、そのうち60%を無数の島々を擁するデルタ地帯が占めています。ティグレ市はアルゼンチンで最も重要な5つの観光地の1つであり、国内外から年間500万人の観光客が訪れます。また、NGOのGreen Destinationsが指定する世界の観光地ベスト100にも選出されています。デルタ地帯は観光資源として重要な場所であり、生態系保全の推進モデルである「Plan de Manejo del Delta(デルタ管理計画)」の成果もあって、とても美しい地域です。また、船舶による物流にも活用されています。また、ティグレ市はアルゼンチンにおけるボート競技の中心地であり、多くのチームがデルタ地帯で活動しています。ボート競技は19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパからの移民が伝えたものです。これらのすべてがティグレ市独自のアイデンティティを形成しており、ユネスコに歴史的遺産としての登録が申請されています。

ティグレ市の治安問題と、市民保護政策

サモラ市長は、NECと連携して現在のセキュリティシステムを構築した過程について説明しました。前任者のセルヒオ・マッサ氏がティグレ市長に就任した2007年、ティグレ市は身代金目的の誘拐が特に多い地域とされていました。また、人口が大幅に増え、観光客も増加していたにもかかわらず、地元政府は治安問題に取り組んでいませんでした。1990年代から2000年代初頭にかけて、人口は10年で約33%のペースで増加し続け、治安問題に対する市当局の積極的な関与の必要性が、選挙運動の中で提案されるようになります。

2007年以降、ティグレ市で治安維持システムが導入され、地域レベルでの犯罪防止と治安改善の取り組みが注目を集めるようになりました。2008年には、監視カメラが初めて設置され、NECのサービスを活用して治安に関する情報インフラ全体が再整備されました。その運用は、プライバシーを保障し、犯罪や事故・災害の予防のためにのみカメラを使用するという協定に基づいています。

戦略的パートナーとしてNECが選ばれた理由

サモラ市長はNECが選ばれた理由として、犯罪対策に関する一連の革新的ソリューションに加え、アルゼンチンで幅広い経験を持ち、アルゼンチンにおける様々な問題についても熟知している唯一の企業である点を挙げました。ソリューションを効果的に適用するには、技術だけではなく、人材や現地の知識も有していることが重要であるとサモラ市長は強調します。そして、ブエノスアイレス周辺の25市で実施された最新調査を紹介しました。その調査では、ティグレ市民の体感治安指標が、エセイサ市を除く他の地区の市民をはるかに上回っていることが明らかになりました。

革新的な役割を果たすCOT(Centro de Operaciones Tigre:ティグレ市オペレーションセンター)

ティグレ市が導入したアルゼンチンで唯一のシステムは、治安部隊、警察、憲兵隊、水上警察、消防隊、民間防衛隊、市の救急車システムSET(Sistema de Emergencias Tigre:ティグレ市緊急システム)と連携しています。すべてがCOTから一元的に監視されており、犯罪対策や事故・災害への迅速な対応に活用されています。

具体的には、非常に高い評価を受けているAlerta Tigre 2.0というサービスです。全住宅の25%以上で導入され、7万人の市民が利用しています。このサービスに登録すれば、犯罪者に気付かれないように警報をCOTに送り、対応を求めることができます。

アルゼンチンでは年間約300人の女性が家庭内暴力で命を落としています。DAMA(Dispositivo de Alerta para Mujeres Agredidas:女性襲撃対策用警報装置)は、この深刻な問題を予防し、対処するための仕組みです。

パトロール監視プラットフォームは、特定の時間に犯罪が集中している場所をヒートマップで可視化し、それに合わせて警官隊の巡回ルートを管理します。

麻薬取引に関する通報を匿名で行える無料電話回線も用意されています。ティグレ市は麻薬取引を規制する手段を持っていないため、匿名の通報は連邦政府や検察に伝達され、それぞれの機関が対応します。また、情報収集用のドローンのシステムが導入されています。

検察の機能を地方に分散させ、市民に司法を身近に感じてもらうためにビルを建設しました。さらに、司法拠点として、刑事裁判用と家庭裁判用にそれぞれ2つの法廷が新たに設立されました。治安に従事する公務員を受け入れる常設の研修システムも整備されています。

COTがいかに効果的に運用されているかを示すビデオが上映されました。そこでは、交通事故や住宅火災が起こった場合、ティグレ市のシステムによってさまざまな分野のサービスが連携して機能し、公衆安全を実現できることが紹介されました。

行動分析や顔認証で、犯罪を未然に防ぐ

ティグレ市内では行動分析システムが導入され、特定の場所や状況における人・車両の不審な動きを検知します。例えば、鉄道駅、銀行地区、高速道路、街路、公園などで使用されています。

また、市内に設置された、カメラ映像向けリアルタイム顔認証ソフトウェア「NeoFace Watch」とフルHD IPカメラは、指名手配中の人物や行方不明者を特定し、COTと司法当局に警告を送ります。公共交通機関の3つのターミナル(長距離バス、鉄道、水上交通)に導入されています。このツールを活用して、2013年からMissing Childrenなどの組織と連携しています。

「searcher」と名付けられたナンバープレート認証は、市街に向かう主要な道路上でナンバープレートを読み取り、捜索対象の車両のリストと比較して、即座にCOTに警告します。この仕組みを実現するために、20台の固定カメラとソフトウェアシステムが導入され、ビデオ管理システムと統合されています。ソリューション導入の成果として、2008年から2013年の間に車両盗難が80%減少しました。なお、他の軽犯罪や窃盗とは異なり、車両盗難事件が発生すると、保険金を受け取るために住民が告訴します。そのため、盗難車両や取り戻された車両のすべてを容易に登録・確認できます。

最後に、警報を活用して市民が治安改善に協力するソリューションがあります。市民の参加を促進して、高齢者、障害者、公共交通機関、学校、病院を保護する取り組みです。さまざまな緊急通報ボタンやソーシャルネットワーク、その他のアプリケーションを通じて、COTに警報が届きます。すべての警報を統合・管理するために、NEC製プラットフォームが導入されました。これにより、位置情報に応じて状況をすぐに分析し、最適な対応を取れるようになりました。

市民保護政策が成功した理由と今後の計画

サモラ市長は、最適な市民保護を実現する公共政策を進める上で、NECの貢献と、高い能力と責任感を持つ技術者や専門家の存在、そして革新的なテクノロジーの導入を柔軟でオープン、なおかつ決断力をもって進めた現代的な市政が大きな役割を果たしたと強調しました。このように、ティグレ市には高い適応能力と開拓者としての気質が備わっていることを主張しました。

サモラ市長は、「安全な都市の実現により、犯罪や事故の発生率を低減できただけではなく、経済、投資、環境、観光などの面にも影響を及ぼしました」と述べ、そのすべてに対して、NECを戦略的パートナーに選んだことに市長も市当局も満足していると語りました。最後に、次の言葉でセミナーを締めくくりました。「私たちは今後も共に歩み続けると確信しています。なぜなら、私たちはより安全な都市を実現するという共通の望みを持ち、そのための資質も共有しているからです」。

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