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「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2017」レポート

高齢化という社会課題に対し「医療×ICT」ができること

2017年12月20日

 高齢化の進展に伴い、医療の世界には財源/人材不足の深刻化をはじめとするさまざまな課題が浮上しています。この状況の下、医療法人社団KNI(以下、KNI)は、NECとの共創に基づくICT活用をベースに、医療が進むべき新たな道を開拓しています。C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2017では、KNI理事長の北原茂実氏が登壇して取り組みの概要を紹介したほか、展示会場で、実際の実証について紹介しました。

高齢化の進展に伴う医療の重要性

 超高齢社会を迎え、一人暮らしのお年寄りも増えています。その暮らしは決して裕福とはいえませんが、生活保護が受けられる人は一握り。さらに非正規雇用者についても、1994年に1000万人以下だったものが、2016年には2000万人に上っています。これらの人の平均賃金は、正規雇用者の約8割程度です(1)

 このように、高齢化と貧困というものがこの国の重要課題になりつつある中、私たち日本人は、医療の在り方をわが身のこととして真剣に考えなければならない段階にきています。例えば、2030年には65歳以上の高齢者が人口の1/3を占めます(2)。そうなったとき、必要とされる医療者の数は、約1000万人だそうです。これはつまり、その家族も入れると数千万人が、医療にかかわることで生計を立てる社会になることを意味します。つまり医療は、日本最大クラスの「産業」になる。この巨大産業を適切に育てていくことは、国の課題に対する1つの解決策となり得るでしょう。

 高齢化により医療を受ける人が増え、また、医療従事者自身も高齢化していくという全体構造の中では、過剰な負担を病院や医療従事者にかけずに済む仕組みをつくっておくことも、今を生きる私たちに課せられた使命です。

医療法人社団KNI
理事長
北原 茂実 氏

人と自然と技術の調和で「ブルーゾーン」をつくる

 そこで私たちKNIは、ICTを積極的に活用することで、そのための取り組みを進めています。具体的には、「ヒーリングファシリティ」の建設と「トータルライフサポート」の展開です。

ヒーリングファシリティ&トータルライフサポートのイメージ
医療法人社団KNIではICTを活用した「ヒーリングファシリティ」の建設と「トータルライフサポート」を事業の2本柱と位置づけて取り組みに注力しています。
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 まず、ヒーリングファシリティについて紹介します。世界には「ブルーゾーン」と呼ばれる、「90歳以上で、現役で働く人が非常に多い地域」といった場所が何か所か存在します。そうした地域の人の健康寿命がなぜ長いのかを調査したところ、見えてきた要因の1つが、適切な運動をしているということでした。ここでいう運動とはスポーツのことではなく、「井戸水を汲みに表へ出る」「リヤカーを引く」といった、暮らしに欠かせない動作のことを指しています。

 我々のヒーリングファシリティの取り組みは、そうしたブルーゾーン、つまり過剰な医療を必要とせず、健康に長生きできる仕組みをつくる取り組みです。東京・八王子市にある我々の施設では、病院を中核としながらも、温泉を備えたスパ棟や、健康に良く美味しい料理を提供するレストランなどを併設しており、敷地内には牛や羊などの牧場、農園、果樹園、ワイナリーなども設置を計画しています。

 また、施設の中核となる北原リハビリテーション病院新棟は、「デジタルホスピタル」のコンセプトに基づいて建設したもの。カメラを用いた顔認証システムによるセキュリティ対策や病院運営、臨床の場面でもAIやIoTを活用した業務効率化の実現を目指します。「人と自然と技術の調和」により、医療に頼りすぎない高齢者の新しい生き方を模索する──。それが、私たちがヒーリングファシリティで目指していることです。

病院が人々のライフサポートの一元窓口になる

 もう1つのトータルライフサポートは、医療を含むすべてのライフサポートを病院がワンストップで提供する、会員制のサービスです。

 これを支えるのが、「デジタルリビングウィル」というシステムです。そこには、基本医療情報や生活情報、さまざまな医療処置に対する承諾事項や遺言に至るまで、会員様に関するすべての個人情報を蓄えておきます。これにより、例えば事前に「脳卒中になった場合、手術を受けたいか、延命治療を受けたいか」といった会員の意思を登録しておけば、意識を失って倒れた場合も、本人の意志に沿った治療行為や医療サービスを迅速に受けることが可能になるわけです。

デジタルリビングウィル
基本医療情報や生活情報、さまざまな医療処置に対する承諾や遺言に至るまでの、会員の個人情報を蓄えておくためのシステム。トータルライフサポートの根幹を成すシステムと位置づけています。
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 また、ここまではトータルライフサポートの”ライフ”を”命”と捉えた切り口のサービスですが、私たちは、”ライフ”に”生活”という意味も含めています。病院のコールセンターに電話をすれば、生活に必要なサービスをなんでも受けられる。このようなサービスを一人暮らしのお年寄りが気軽に利用できれば、その人の暮らしの質は大きく向上するでしょう。さらには、本人同意のもと、蓄積された情報をAIで分析して将来予測ができれば、より安心な生活を提供できます。そんな仕組みがトータルライフサポートの理想形です。ここまで紹介したデジタルホスピタル、トータルライフサポート、デジタルリビングウィルといった取り組みを、NECのICTとの「共創」によって進めていきたいと考えています。

ICTやAIに期待すること

 医療の質の向上や業務の効率化には、AIやICTが役に立つでしょう。一例ですが、看護スタッフがヘッドセットを使って、喋ったことがそのまま電子カルテに書きこまれたり、状況にあわせて最適な指示が案内されたりすれば、効率化に加え、ベテランでなくても安全な医療行為が期待でき、看護スタッフの働き方が変わります。ナースコールも、今は患者がベッドにいないと使えません。本当はどこで異変が起きたとしても、センサーなどが自動で察知して、スタッフにアラームをあげるようにするべきです。セキュリティの強化にも、ICTやAIの活躍が期待できます。

 医療分野は特に、多数の関連法規やガイドラインなどがある世界ですが、NECは積極的な提案と実行力によって、私たちの目指すものを支援してくれています。

 これからのICTは、社会に生まれた問題を解決するためのツールとしてではなく、そもそも問題が起こりにくいような社会の実現や、そのために必要なものを創造する力として、活かされていくべきだと私は考えています。NECには、そのための取り組みをこれからも期待しています。

AIの活用で医療現場の抱える課題を解消

 展示会場では、超高齢社会の医療現場が抱える課題をAIで解決しようとするNECの2つの取り組みを紹介しました。これらの取り組みは、KNIが運営する北原国際病院にて実証が行われ、高い成果を出しています。

 1つは、「不穏行動の検知」です。この不穏行動とは、入院患者に起こり得る急性の錯乱状態(幻覚妄想、感情不安定、混乱)のこと。これが起こることで、退院の遅延や、患者自身や対応に当たる看護師がケガを負うなどの事故につながるケースがあります。そこでNECは、腕時計型のセンサーを患者に装着してもらい、心拍、体温などのバイタル情報を取得。そのデータをAI(機械学習)にかけることで、不穏発生の予兆を検知する仕組みを開発しました。北原国際病院での実証では、平均で約40分前の時点で7割の検知が可能になっています。

 もう1つが「退院支援」です。急性期病院における長期入院の原因のひとつに、患者の退院調整があります。患者の入院時に、自宅、回復期病院、といった退院先が予測できれば、治療と並行して退院・転院調整を行うことができます。NECは、患者のカルテ情報や患者の状態、家族構成などの情報を基に、AI(異種混合学習)によって退院先予測に取り組んでいます。北原国際病院の実証では約84%の精度で予測に成功。入院期間の短縮により、退院待ち解消・患者の早期の自宅復帰・新たな救急患者の受け入れなどが見込まれています。

医療現場を支えるNECのAI活用の取り組み
高齢社会の医療現場が抱える課題を解決するために、NECはAIの活用を積極的に提案しています。その例として、展示ブースでは不穏行動の早期検知と退院支援の2つの実証を紹介しました。

 現在は、医療現場においてもICTを利用した業務効率化、医療の質の向上に向けた改革が求められています。NECは、今後もAI、IoTなどの先進ICTの活用によって、そうした社会の要請に応えていきます。

※本紹介は技術実証の紹介であり、販売・授与はできません。

(1) 厚生労働省「『非正規雇用』の現状と課題」P1、P5

(2) 内閣府 平成28年版高齢社会白書

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