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「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2017」レポート

女川町の取り組みに学ぶ「共創」による復興とまちづくり

2017年12月18日

 東日本大震災の被災地域では、持続可能な地域社会づくりに向けた先駆的な取り組みが進められています。その1つが宮城県女川町です。同町長の須田 善明氏、三陸石鹸工房KURIYAを運営するアイローカルの厨 勝義氏、ジャーナリストの津田 大介氏、NEC 未来都市づくり推進本部長の小野田 勇司をパネリストに迎え、共創の可能性について興味深い議論が展開されました。モデレータを勤めたのは、NPO法人ETIC.の山内 幸治氏です。NECと協働で、次代を担う起業型リーダーを育成する「NEC社会起業塾」を運営し、女川町にも多くのリーダー人材を派遣し、新しいまちづくりを支援しています。

震災からの復興の中心に「チャレンジ」を据える

──東日本大震災からの復興に向けて、女川町はどのような取り組みを行っているのでしょうか。

須田氏:
 女川町は仙台市から車や電車で約1時間半の町。震災前の人口は1万人ほどで、全国有数の漁港を持つ、自然豊かな水産漁業中心の町でした。しかし、大震災で町は壊滅的な被害を受け、町民も1割近くが犠牲になりました。残った町民も4分の1が町外に転出し、大幅な人口減少を招きました。

NPO法人ETIC.
理事
山内 幸治 氏
宮城県女川町
町長
須田 善明 氏

 よく「復興とは何か」と聞かれるのですが、「その道のりを通じて、新たな価値や地方の可能性を生み出すこと」と、本町における復興の本質を定義しています。個々の単位では、住宅や事業の再建こそが復興ですが、町全体という観点で見据えれば、今後も地方社会は人口減少などの問題に直面し続けるのであり、復興を通じ、その課題に対応していけるまちを作らないといけません。

 女川町では公共的機能をまちの中心に集約配置して拠点化し、その周辺に新設住宅地を配置することによる動線集約型のまちを作っています。これは、人口が減っても活力を生み出し続けるための構造です。人が集まると、そこにサービスが生まれる。それがコンテンツとなって、更に内外のさまざまな人が集まり、交わることで化学反応が起こり、新たなアイデアやアクションが生まれる。このありようこそが、現在の女川町の可能性ではないかと思います。実際、現在の町の中心街区では起業も多く、イベント時なども含め地元・外部問わず、たくさんの人が集われ、具体的な経済の動きが生まれていることを実感しています。

 また、復興を進めるうえでは「まちを一つにすること」「それを共にみんなでやっていくこと」をずっと考えてやってきました。女川町では、住民の方々にも、どんな町にしていきたいかを聞き、直接まちづくりに参画してもらっています。これまでの経験から、これからの小さな地方社会は、知や人などのさまざまな「財」を自治体などの枠組みにとらわれずシェアしあえる環境を作って行くことが非常に重要になると感じています。

──アイローカルも女川町で起業した企業の1社です。経緯をお聞かせください。

厨氏:
 当社は宮城県産の素材を使った石鹸を製造・販売する「三陸石鹸工房KURIYA」を運営しています。目指しているのは「石鹸で世界を席巻する」ことです(笑)。素材は地元宮城のもの、雇用は地域から行っており、女川町で1次生産者や地域と共創しながら事業を行っています。

 日々、NPO法人やまちづくり会社、女川町さんの手厚い支援を受けていますが、同時に事業の立ち上げに時には、若手社会起業家を育成・支援する「NEC社会起業塾」の協力も受けました。そこからNECとのつながりが生まれ、今は業務システムの構築などをサポートしてもらっています。

株式会社アイローカル
代表取締役
厨 勝義 氏

──私も「NEC社会起業塾」に参画していますが、「共創」はNECの事業の大きな柱となっていますね。

NEC
未来都市づくり推進本部
本部長
小野田 勇司

小野田:
 「NEC社会起業塾」を通じた復興に取り組むリーダー人材の育成や、現地へのボランティア派遣を継続しています。女川町では、津波で流された写真を回収・返却するプロジェクトで、NECの顔認証技術を使って、写真に写っている人物を特定することで、多くの方々に写真を返却することができました。

 また、未来都市づくりにおいては「データ中心のやわらかな都市経営」を目指しています。具体的には、さまざまなデジタル情報、さらには人を上手くつなぎあわせ、新しい価値を作っていきたい。まさに昨今、注目ワードとなっているデジタルトランスフォーメーションというべき取り組みです。ただし、こうした活動はNECだけではできません。自治体様や他の企業の方々と共に「共創」して、実現していきたいと考えています。

前例踏襲主義を捨て、町外の人も積極的に受け入れる

──なぜ女川町から新しい取り組みがたくさん生まれるのでしょうか。そこに社会イノベーションのヒントがあるのではないかと思います。

津田氏:
 私はジャーナリストとして被災地や地域おこしに取り組む全国の自治体を取材し、支援活動などにも取り組んできました。その経験を踏まえて、女川町から新しいスタートが生まれる理由を一言で言うと、前例踏襲主義を捨て、迅速に物事を前に進めるコンセンサス作りがうまく、そうした意識が町全体に共有されているからだと思いますね。象徴的なのは、外部の力を積極的に活用すること。女川町は震災直後のかなり早い段階からそれを自覚的にやっている。何かと縦割りになりがちな官民連携で、それぞれの役割を分担し、試行錯誤しながら連携を進めるその姿勢が非常に特徴的だと思います。

ジャーナリスト
津田 大介 氏

須田氏:
 女川町を襲った津波の被害は甚大なもので、既存の枠組みも守るべきものも一度に失われました。その守るべきものをもう一回創り出すことこそが復興です。ですから、やり方にこだわる必要はありません。

津田氏:
 また、女川町は計画をしっかり立てて、できるところからカタチにしていくということがきちんとプロセス化されています。訪れるたびに景色が違うほど変化を続けている。そして、町長をはじめ、女川町の方が、そのことを情報発信し続けることで、「次」へのワクワク感も提供される。それが観光客だけではなく、女川町に関わりたいと思う人たちの関心をひきつけ、リピーターを増やしているのだと思います。

厨氏:
 私は人の「巻き込み力」に、起業する場所としての魅力を感じました。町外の人でも積極的に巻き込んでくれるので、よそ者感を感じない。地元の人たちは本当にアグレッシブです。たまたま、別のミーティングの打ち上げを女川の仮設商店街でしていた時、商工会の職員の方が突然目の前を指差して「ここが空いているから、ここでやるか」と言うのです。詳しく説明を聞こうと、次の日にもう一度会ったら、すぐに申込書が出てきました(笑)。この巻き込み力のおかげで、町内のたくさんの方々と知り合うことができ、助けられています。

共創の第一歩は「人」と「人」とのつながりから

──復興や地方創生における共創の必要性と企業の役割をどのように見ていますか。

須田氏:
 これからの地方は、財政もマンパワーもシュリンクしていくでしょう。今までと同じようにやっていくのは難しい。行政は、これまで行政自身が担ってきた公共機能の領域や自分たちがアプローチできない領域の知見を持っている民間と組んで、政策目的を達成していくことが必須になると思います。

津田氏:
 「行政と企業のコラボ」ではなく、本質は「人」単位ではないでしょうか。時間の経過に伴い、関係性が薄れてしまうケースもある中で、女川町が企業とのコラボを上手く続けられているのは、担当者を町に惚れこませてしまうから。共創の実現は、まず個人の単位でつながり、そこから生まれる可能性をどう大きくしていけるかがキーになると思います。

小野田:
 より良いモノを作り、提供する。それがこれまでの企業の価値でしたが、最近は変化しています。既存の枠組みを越えて、いかに共創できるか。それが今、企業に求められているのだと思います。その共創を担う最終単位は、ご指摘の通り「人」です。NECも、そのために人材育成に注力しています。

須田氏:
 復興もまちづくりも、やり続けることが大切です。アイデアが出た時に「できる、できない」ではなく、「良いか、悪いか」で判断する。そして良いとなったら「どうやるか」を考える。それを実践し、チャレンジしていく姿勢こそが今の女川町の価値だと思いますし、今後もぜひそうしていきたいですね。

社会価値創造のための共創の取り組みを紹介(展示会場レポート)

 C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2017の展示会場では、パネルディスカッションでテーマとなった共創の一環として、NECが展開する「共創を支援するプログラムの手法や先駆的な取り組み」を紹介しました。

 NECの共創は、お客さまやパートナーと共に、社会の本質的な課題探索から始める「社会課題への気づき」、課題解決に必要な人たちとつながる「価値創造への仲間づくり」、先進のICTを活用した新たなビジネスモデルを創出して社会価値を創造する「ICTを活用した価値づくり」の実践を通して、社会価値の創造を目指しています。

 NECは、社会価値創造プロセスに沿った「共創プログラム」を通じて、未来社会のビジョンやサービスを自治体・市民と一緒に考える「社会共創」、お客さまとNECが相互に強みを活かして新たなビジネスを創造する「ビジネス共創」など、様々な取り組みを進めています。

NECの「共創プログラム」
課題を抱える地域社会や企業の関係者が集まり「共創型ワークショップ」で徹底的に議論し、目指すべき方向性を探ります。NECは独自の方法論とツールを駆使し、課題の探索から仮説の立案・検証、ICTの導入活用による効果の創出までトータルにサポートします。
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 このプログラムの特長は「人」と「社会」の両方の視点で価値を創出するデザインポリシー「ソーシャルバリューデザイン」を展開していくこと。それを支援するツールも数多く提供しています。これらのツールを活用することで、経済状況、技術進歩などを反映した未来社会と、そこに住む生活者の求めるニーズをイメージし、新しい魅力的なサービスを創出します。ブースでは共創プログラムの手法や具体的な成果について、説明員の話に熱心に聞き入る来場者の姿が数多く見受けられました。

ソーシャルバリューデザイン・ツール
「未来創造キャンバス」で未来のトレンド把握やアイデア発想し、「未来ペルソナ」で未来の社会とそこに住む人々の生活をイメージします。更に「ラピッドペルソナツール」と「UXマップ」で具体的なユーザー像の行動やニーズを想像します。これらのツールを組み合わせて活用していくことで新しいサービスアイデアを創出します。
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 すでに「共創プログラム」は、多数のプロジェクトに適用されています。具体的には、地域鉄道を活性化し、地方創生につなげるためにICTの貢献領域を探索する「四日市あすなろう鉄道 地方創生共創プロジェクト」、地元の企業、行政、コミュニティとともに持続可能な有人離島モデルの構築を目指す「久米島まちづくり共創プロジェクト」などです。

 今後もNECは、お客さまやパートナー、市民、行政などとの共創を加速し、新たなビジネスモデルの創出や社会価値の創造を支援。持続可能な豊かな社会の実現に貢献していきます。

「共創を支援するプログラムの手法や先駆的な取り組み」を紹介
ブースでは、「ソーシャルバリューデザイン・ツール」を来場者に実際に触ってNECの「共創プログラム」を体感いただきました。

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