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2019年07月09日

デジタルの力で社会課題を解決
セブン‐イレブンのイノベーション戦略

 経済・社会環境が大きく変化する中、コンビニチェーン大手のセブン‐イレブン・ジャパンは新たな価値創造に挑戦し続けている。IoTやAIなどのデジタル技術を積極的に活用した「守り」と「攻め」のイノベーションを推進し「止まらない店舗」や「新しい買い物体験」を実現。さらにSDGsに代表される社会課題の解決にも取り組んでいる。

株式会社セブン‐イレブン・ジャパン
執行役員システム本部長
粟飯原 勝胤(あいはら かつたね)氏

世界初・業界初のイノベーションを次々に創出

 世界18の国と地域にコンビニエンスストア、スーパーマーケット、百貨店、ファミリーレストランなど6万7600店舗以上を展開する総合流通グループのセブン&アイグループ。同グループの中核企業の1つがコンビニエンスストア大手「セブン‐イレブン」を展開するセブン‐イレブン・ジャパンである。

 現在、セブン‐イレブンは国内に2万965店舗(2019年5月末現在)を展開。2019年7月にはこれまで出店のなかった沖縄県に新規店舗をオープンする。その成長の歩みは、挑戦とイノベーションの歴史でもある。「例えば、今では当たり前になっているおにぎりの販売や料金収納・チケットサービスもコンビニ業界ではセブン‐イレブンが初めて行ったものです」と同社の粟飯原 勝胤氏は話す。

 IT活用においても1978年に世界で初めて発注業務にコンピュータを導入(※1)。全国の店舗に導入してIT化にいち早く舵を切った。1990年には、こちらも世界初となる店舗用発注端末「GOT(Graphic Order Terminal)」を開発し(※2)、売れ行きや在庫状況を見ながら、売り場ですぐに商品を発注できる仕組みを実現した。

※1、2:セブン‐イレブン・ジャパン調べ

設備トラブルを未然に防ぎ「止まらない店舗」を実現

 もちろん、先進的な取り組みは現在も継続している。現在の主なテーマは、労働力人口の減少、人手不足に対応するための働き方改革、キャッシュレス決済普及への貢献、人々の健康意識や環境意識の向上に対応したヘルシーでエコな商品の開発など。そして、その中心にはIoTやAIといったデジタル技術がある。

 「データの利活用を進め、新たなグループシナジーを創出。より良い商品やサービスの開発・提供につなげ、同時に社会問題の解決に貢献していきたい」と粟飯原氏は言う。

 このデジタル化の取り組みは「守り」と「攻め」の2つのアプローチに分類できる。

 まず守りの取り組みを象徴するのが、2012年から開始した店舗の電力使用量の見える化だ。各店舗にインテリジェント分電盤を配置し、消費電力を基に設備の稼働状態を把握できるようにし、この仕組みを店舗の設備管理に応用。以前は店舗でトラブルが発生しても、現場ではどの設備が故障しているのか、何が起こっているのかを判断できず、保守業者に正確な情報を伝えることも難しかったが、この仕組みによってどの設備が原因になっているのかを特定しやすくなり、対応の時間と手間を削減している。

 さらに現在はこの仕組みを進化させた「設備管理トータルシステム」を構築(図1)。全国の店舗にある約50万台の冷凍庫・冷蔵庫、什器などの稼働状態を集中管理するメンテナンスセンターを構築し、ここで全国の設備稼働データを蓄積・分析。「トラブルを予兆の段階で検知して、部品交換や修理を行う予防保全や計画的メンテナンス作業ができる仕組みを構築中です。設備管理の省人化・省力化に加え、設備の故障も激減し『止まらない店舗』を実現していきます。」と粟飯原氏は強調する。

顔パスで買い物ができる省人型店舗の実証実験を開始

 攻めの取り組みにおけるキーワードは、セブン‐イレブンのキャッチフレーズでもある「近くて便利」だ。物理的な距離の近さだけでなく、必要な時に必要なものを買える「心理的な距離の近さ」を実現するため、豊富な品揃えと上質な接客・サービスで「常に頼りにされる店づくり」を目指している。

 そのために注力するのが、きめ細かな商圏分析で個のニーズを捉える「マイクロマーケット」と「新しい買い物体験」の実現である。2018年12月にオープンした省人型店舗は、この取り組みを象徴するもの。キーテクノロジーとなっているのが世界No.1の精度を誇る顔認証技術(※3)やAIといったNECの技術である。

 先述した設備管理の仕組みなど、NECは重要なパートナーとして同社の取り組みを支えてきた実績を持つ。

 この省人型店舗もNECグループの入居する三田国際ビルにオープンさせ、グループの社員の買い物を通じて共に新しい店舗の実証に取り組んでいる。具体的には、顔画像によって判別した年齢や性別に応じた広告の表示、映像解析を活用した売り場の可視化、顔認証によるスムーズなキャッシュレス決済、そして、AIを活用した需要予測と発注提案など、持ち前の技術力で様々なアイデアを具現化した。「通常店舗と比較して、店員の実労働時間を5分の1に削減できるなど高い成果が上がっています」と粟飯原氏は述べる(図2)。

※3:米国政府機関による動画顔認証の性能評価で第1位を獲得

災害に強い店づくりを進め社会課題への対応も加速

 セブン‐イレブンだけでなく、セブン&アイグループ全体でシナジーを創出する取り組みも進めている。代表例がセブン‐イレブン、イトーヨーカ堂、西武・そごう、ロフト、赤ちゃん本舗などと共に展開するスマホアプリおよび「セブンマイルプログラム」である。

 各店舗で買い物をすると専用アプリにマイルが貯まり、電子マネーのnanacoポイントやイベントへの参加など様々な特典が得られる。「このデータを利活用し、新たな価値創出を図る『セブン&アイ・データラボ』の運用も2018年6月から開始しました。金融・保険、通信、鉄道・航空事業者などグループの枠を超えた多様な企業とのデータ連携も進めています」と粟飯原氏は話す。

 このような取り組みを通じて同社が最終的に目指すのは社会課題の解決だ。既に高齢化・人口減少時代の対応として「セブンらくらくお届け便」や「セブンあんしんお届け便」、子育て世代を支援するための「セブンなないろ保育園」など様々なサービスを提供しているが、BCPの強化にも取り組んでいる。災害時でも早期に店舗運営を再開し、人々の生活を支える社会インフラとして機能できるようにするためだ。災害発生時に全国の店舗の被害状況を即座に把握し、加盟店へのフォロー・アドバイスや配送ルートの最適化などに役立てられる「セブンVIEW」という仕組みなどがそれを支えている。

 テクノロジーを活用して、より顧客に身近な存在となるべく、今後もセブン‐イレブン・ジャパンはイノベーションを推進していく。「SDGsをはじめ社会課題の解決にIoTやAIなどのテクノロジーは必要不可欠。これらの技術を活用して、サプライチェーンの高度化・最適化、そしてリアルとデジタルを融合した新しい顧客体験を生み出し、多くの社会課題の解決に向けた取り組みを加速していきます」と粟飯原氏は改めて強調した。

図1 設備管理トータルシステムの進化の歩み
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 まずインテリジェント分電盤で消費電力による設備稼働の見える化を実現した。その後、メンテナンスセンターを構築し、コール情報や修理情報の蓄積・分析を推進。過去の履歴から将来を予測する精度向上に取り組み、障害予防が可能になった。

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図2 省人型店舗イメージ
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 顔認証で入店すると、年齢・性別から個人に最適なサイネージ広告を表示。支払いは顔認証でキャッシュレス決済が可能だ。発注提案や店内の顧客の動線分析はAIがサポートする。IoTによる設備の障害予防も実現。より良い顧客体験と効率的な店舗運営を両立している。

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