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2022年03月28日

“泊まる”から“新しい体験”の場へ
三井不動産ホテルマネジメントが描くホテルの未来

コロナ危機の打開を目指し、ホテルの機能を再定義

 ──新型コロナウイルス感染症の拡大は未曽有の影響を世界に与えました。ホテル事業にはどのような影響があったのでしょうか。

雀部氏:
 弊社は三井不動産グループのホテル運営会社として1981年にスタートしました。これまでもバブル崩壊、リーマン・ショック、東日本大震災などさまざまな苦境に直面しましたが、コロナ禍はかつてないほどの多大な“危機”をもたらしました。

 以前はインバウンド需要が大きく、お客様の約4割を占めていましたが、コロナ禍でこれがゼロになってしまった。国内の旅行やレジャーも自粛モードが続いています。ビジネスパーソンの出張などもメインターゲットの1つでしたが、これもテレワークの普及も相まって大きく落ち込んでいます。

株式会社三井不動産ホテルマネジメント
代表取締役社長
雀部 優氏

 ──コロナ禍の“危機”を乗り越えるため、どのような施策を行ったのでしょうか。

雀部氏:
 従来のやり方の延長では客室稼働率を上げていくのはもはや難しい。そこで全従業員に協力してもらい、現場のアイデアを募る全社コンテストを実施しました。全国のホテルから個人やチームで約80の提案がありました。これを軸にホテルを「働く・住まう・憩うための空間」と再定義し、従来の「泊まる」に加え、さまざまな過ごし方を商品化しました。目指したのは「新たな体験価値の創造」です。

 ホテルの部屋は3密を回避できる安全な場所ですし、ホスピタリティーを求めるお客様には憩いの空間・時間を提供できる。ホテルならではのメリットを、新しい体験価値として提供することを考えたわけです。既に多くのアイデアが商品化されています。

現場とマネジメント層が一体となって新プランを開発

 ──どのような新プランを始めたのでしょうか。

雀部氏:
 例えば、三井不動産グループが展開する「ワークスタイリング」という法人向けシェアオフィス事業と連携し、三井不動産ホテルマネジメントの国内38施設の客室の一部をシェアオフィスとして提供しています。

(※)「東京ドームホテル」が2021年6月から提携拠点に加わり、三井不動産グループ全体の提携ホテルは39施設となりました。

 ホテルを働く場や住まう場として利用できる「サブ住む®」というプランも開発しました。サブスクリプション(定額制)で中長期滞在が可能です。1つのホテルに中長期滞在する「HOTELここだけパス®」と、国内38施設を選びながら周遊できる「HOTELどこでもパス®」の2種類があります。

 いずれのプランもご好評をいただいており、繰り返し利用されるお客様も多くいらっしゃいます。

 ──中長期に滞在すれば、周辺地域への経済効果も大きいですね。

雀部氏:
 三井不動産グループは、日本橋の再生計画や豊洲エリアの開発に象徴されるように、職・住・遊・学が融合したエリア全体の発展を考えた街づくりを推進しています。弊社の多くのホテルも、この街づくりの一翼を担っています。また、コロナ禍でお客様の減少に苦しむ地元の飲食店と連携した宿泊プランを販売するなど、地域の皆様との共生、貢献を常に意識しています。

 もう1つ重要なポイントがあります。こうしたアイデアの多くは現場から生まれてきたということです。現場のスタッフはお客様が何を求めているかをよく分かっていて、地域の特色・強みにも詳しい。これまで本社主体で行ってきた商品造成を、現場の最前線に立つスタッフのアイデアを基に行えたことは大きな収穫であり、新しい発見です。このスキームは今後も大切にしていきたいですね。

NEC
執行役員
橋本 裕

橋本:
 本社主導ではなく、現場の従業員とマネジメント層が一体になって新しい体験価値を創造する。これは理想的な姿であり、本当にすばらしい取り組みだと思います。

 また、生産性を高める働き方の提案という点でも意義があると思います。近年、テレワークが急速に普及していますが、自宅でのテレワークは場所の問題もあって、生産性を上げられないという声もよく聞きます。仕事のオンオフの切り替えが難しくなると、かえって生産性が下がり企業としてはその継続が難しくなってしまう。こうしたときにサテライトオフィスとして自宅から最寄りホテルが加わることで利便性も上がり、集中できる環境で働きやすくなるため、合理性が高まるのではないでしょうか。

 NECでも「働く場の確保」と「ホテルの客室稼働率向上」という2つの課題を解決するため「ホテルワークスペースマッチングサービス」を開始しました。感染症対策が施されたホテルの客室をサテライトオフィスとして利用できます。このサービスには三井不動産ホテルマネジメント様にもご賛同いただいています。

体験価値にシフトした第3のホテルブランドがオープン

 ──新しい体験価値の創造は、コロナ禍をきっかけに始めたものなのですか。

雀部氏:
 ご紹介した宿泊プランはコロナ禍の打開策として商品化したものですが、新しい体験価値の創造はコロナ禍以前から考えていました。お客様がホテルに求めるものや過ごし方は、時代とともに変わりつつあると感じていたからです。

 スマートフォンやSNSの普及により、情報を受け取るだけでなく、情報を積極的に発信し、体験を多くの人と共有したいと考えるお客様が増えています。ホテルに求める楽しさは、加速度的に多様化しつつあります。5、6年前から検討を進め、独自の提案をしたいと考えていました。

 それが形になったのが、2020年8月に誕生した「sequence(シークエンス)」です。長い伝統を誇る「三井ガーデンホテルズ」「ザ セレスティンホテルズ」というブランドに加え、新しいホテルの形を追求した第3のブランドを立ち上げたわけです。現在では、東京・渋谷のMIYASHITA PARK内にある「sequence MIYASHITA PARK」、東京・水道橋にある「sequence SUIDOBASHI」、京都・五条にある「sequence KYOTO GOJO」の3施設を展開しています。

sequence MIYASHITA PARK

 ──sequenceは既存のホテルとどのような点が違うのですか。

雀部氏:
 sequenceは「連続」や「つながり」という意味です。次世代ライフスタイルホテルとして、お客様に「自由な時間と過ごし方」を提供したい。ブランド名にはそんな思いが込められています。ホテル内には客室以外にも多くのオープンスペースを用意し、誰にでも開かれた空間、その街ならではの文化を楽しむ体験の場を設えています。

 チェックイン/チェックアウト時間も17時と翌14時に設定しました。周辺で遊び、食事を楽しんでからチェックインする。朝食は12時まで利用できますから、ブランチしてからゆっくりチェックアウトできます。

 このsequenceのコンセプトを実現する上で欠かせないのが、NECさんの顔認証技術を用いた仕組みです。フロントに並ばず、顔認証でチェックインが可能です。事前に顔情報を登録し、精算を済ませておけば、最短30秒程度でチェックインできます。チェックアウトも客室のタブレットで行えるので、フロントに立ち寄ることなく出発できます。

 顔認証でチェックインすれば、カードキーも不要になります(sequence MIYASHITA PARK除く) 。部屋の出入りも顔認証で行えるからです。カードキー忘れによる閉めだしや紛失の心配もありません。ストレスフリーなホテルステイを実現できれば、お客様のライフスタイルに合わせ自由な時間を思う存分楽しんでいただける。最新技術を活用した新しい体験で、お客様の滞在価値も高めることができます。

求めていたのは、ビジョンの実現を支援するパートナー

 ──顔認証ソリューションを採用した理由を教えてください。

雀部氏:
 顔認証はコロナ禍前から導入を検討していたのですが、コロナ禍になって非対面/非接触のニーズが非常に高まりました。結果的に、お客様と従業員の安全・安心を守るためにも顔認証という最新技術が欠かせないものとなっています。

 その中でもNECさんの顔認証は世界トップクラスの精度といわれています。ストレスフリーな新しい体験を提供する上で、これは非常に重要な要素です。多くの先行事例を有するNECさんと共創することで、その知見やノウハウの提供も期待できます。

 実際にスタートするまでには、いろいろと困難なハードルもあったと聞いています。例えば、認証精度を確保した上で、どう運用を簡素化するか。互いにアイデアを出し合い、議論を交わしたり歩み寄ったりしながら、求めるシステムをつくり上げていきました。ソリューションを提供するだけでなく、こちらのニーズをくみ取って真摯に対応してくださった。その意味でNECさんは、私たちの事業に欠かせないパートナーだと感じています。

橋本:
 私たちも、新しい顧客価値の創造に向けた取り組みに参画することができ、うれしく思っています。もともとNECの顔認証技術は、手書きの郵便番号の解読に始まり、約60年にわたって画像認識技術を進化させてきたものです。NECの生体認証「Bio-IDiom(バイオイディオム)」の中核技術であり、米国国立標準技術研究所(NIST)主催のベンチマークで、世界ナンバー1の評価を複数回獲得しています※。当初は安全管理という領域で使われることが多かったのですが、今回は新しい体験価値のために採用していただきました。顔認証技術の可能性を広げることにつながり、NECにとっても大きな意義があります。

(※)2009年以来、米国国立標準技術研究所(NIST)による顔認証ベンチマークテストで第1位を獲得
https://jpn.nec.com/biometrics/face/index.html

雀部氏:
 NECさんは技術やソリューションを提供するだけでなく、それを軸に安全・安心で、誰もがデジタルの恩恵を享受できる社会の実現を目指している。弊社もホテル事業を進める中で、グループが進める街づくりに貢献することをモットーにしています。社会や地域の発展という大きな目標に向かって挑戦する姿勢に共感したことも、採用を決めた大きな理由の1つです。

橋本:
 誰もが安心してデジタルを活用できる世界を目指す、この取り組みを加速するため「NEC I:Delight(アイディライト)」というコンセプトを掲げています(コラム参照)。ここに共感していただいたことは大変光栄です。

デジタルによる安全・安心と体験価値の向上を実感

 ──顔認証に対するお客様やスタッフの反響はいかがですか。

雀部氏:
 お客様からは「非対面/非接触によるチェックイン/チェックアウトなので、コロナ禍でも安心してホテルを利用できる」「スピーディーなチェックイン・アウトが便利で快適」といったご評価をいただいており、大変好評です。ホテル利用の際に、顔認証を含むセルフチェックインをされるお客様は約8割と、非常に高い利用率がそれを裏付けています。

 またスタッフの安全・安心の向上につながっている点も大きい。チェックイン/チェックアウト時のお客様対応時間を必要最小限に抑え、感染リスクを減らせるからです。スタッフに余力が生まれれば、お客様との会話やお困りごとの対応により多くの時間をあてることができ、サービスの質の向上につながる。これも非常に大きなメリットです。

橋本:
 現在は若い方を中心に顔認証を選択されているようです。顔認証は登録などのハードルが高いと一般的に言われていますが、デジタルネーティブな世代にとってはあまり抵抗はなく、積極的にご体験いただいているのかもしれません。

NEC顔認証によるチェックインと入室のイメージ

 ──新しい体験価値の創造に向けて、今後はどのような挑戦を考えていますか。

雀部氏:
 他社事例では、チェックインしたホテル内での手続きだけでなく、街の中での食事やショッピングなども顔認証で決済できるような仕組みを整えて、地元と一帯となって観光客誘致を行っている地域もあると聞いている。NECさんにホテルだけでなく、その外側にもサービスを広げていただくことにより、当社としてもホテルご利用のお客様に買い物や食事もそのまま決済ができる環境を提供し、お客様の新しい体験価値の創造につなげていきたい。

 そのためには失敗を恐れない挑戦も重要です。今後も新しいテクノロジーを取り入れながらNECさんと共創し、魅力的な体験価値を提供していきたい。

橋本:
 NECは生体認証でID連携させるプラットフォーム上に、顔入退ソリューションや顔決済ソリューション、様々な利用シーンを想定したソリューションを順次実装していく計画です。宿泊、買い物、食事のみならず、ビジネスサービス、MaaSと連動したサービスの実現に加え、利用者の感染症対策状況を確認することも可能になります。ユーザーの行動や購買履歴などのデータを活用して、個人のライフスタイルや趣味嗜好にマッチしたサービスをレコメンドすることも考えています。

 技術の進歩に伴い、実現できる可能性はさらに広がるでしょう。今後も三井不動産ホテルマネジメント様との共創を進め、新しい体験価値、新しいビジネスの創造を支援していきます。こうした取り組みを通じて培った技術やノウハウを社会価値の創造につなげていくこともNECの重要なミッションと考えています。

NEC I:Delightが目指す新しい世界とは

 顔や指紋を使った生体認証を共通のIDとして、複数の場所やサービスにおいて一貫した体験を提供する。これがNEC I:Delightの目指す世界観だ。生体認証と複数のソリューションをつなぐID連携機能を一体化したサービス「NEC I:Delight Services」を軸に、複数のサービスをセキュアかつシームレスにつなぎ、利用者の利便性向上と安全・安心を実現する。

 これは2020年7月からスタートしたNEC社内でのシステム実証で活用したプラットフォームを発展させたもの。本社ビルでは、タッチレスな入退管理からPCログイン、自動販売機や店舗での買い物まで、生体認証を共通の鍵として利用できる。実証で培った経験・ノウハウが反映されている。

NECは「NEC I:Delight Lab」という共創の場を設け、導入を検討する企業に検証環境を提供し、専任メンバーが要件の洗い出しから導入までワンストップで支援する。顧客やパートナー企業との共創スキームづくりや事業創出もサポート可能だという。

2022年2月25日~2022年3月31日に日経電子版広告特集にて掲載。
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