ここから本文です。

2022年11月25日

「社会課題の解決」と「企業成長」の両立へ
「保険×DX」で挑む新たな価値創造とは

 先行きが見えないVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)時代といわれる現在、持続可能な社会の実現に向けたサステナブル経営の要請が高まっている。こうした状況下で企業が成長し続けるためには、どうすべきなのか。今回紹介する三井住友海上火災保険とNECが進める「保険×DX(デジタルトランスフォーメーション)」の事業は、互いの強みを生かして革新的なサービスをリリースしている注目の取り組みである。ここでは「NEC Visionary Week 2022」で行われたセッションをもとに、両社のビジョンと活動をひも解き、これからの日本企業が目指すべき方向性を展望したい。

保険事業の変革に向けて、三井住友海上とNECが共創を加速

三井住友海上火災保険株式会社
取締役 常務執行役員
一本木 真史氏

 パンデミック(世界的大流行)や地政学リスク、労働力人口不足や消費環境の変化、さらにグローバル競争の激化――。不確実性を増すVUCA時代の中で、日本企業は様々な課題に直面している。一方で、SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・企業統治)経営の推進も重要な経営テーマとなった。企業は自社の成長だけでなく、持続可能な社会の実現に貢献することが強く求められているのだ。

 これを企業単独で達成するのは難しい。企業・産業の枠を超え、互いの強みを生かして相乗効果を高めていく「共創」が不可欠だ。多くの企業が共創を模索する中、新たな価値創造に挑む企業も出てきた。損害保険会社大手の三井住友海上火災保険(以下、三井住友海上)と企業・産業のDX化を支えているNECである。

 三井住友海上は「持続的成長と企業価値向上を追い続け、世界トップ水準の保険・金融グループを創造する」との経営ビジョンを掲げ、世界41の国と地域で損害保険事業を展開している。このビジョンを実現するため、今年4月にスタートした中期経営計画の中で、保険の提供価値を変革する新たなコンセプトを打ち出した。

 「保険本来の機能である『補償』の提供に加え、お客さまや社会の課題を『解決』する。すなわちCSV(お客さまや社会との共有価値創造)を軸に、リスクソリューションのプラットフォーマーとなることを目指しています。DXはそのために欠かせない要素と考えています」。こう話すのは三井住友海上の一本木 真史氏だ。

 NECも顧客や社会の課題解決と新たな価値創造を事業の重要な柱と位置付けている。2021年5月に公開した「2025中期経営計画」の中で、NECが描く未来の社会像を「NEC 2030VISION」として発表。「ステークホルダ―と『未来の共感』を創り、技術力と社会実装を通じて、より良い暮らし・社会・環境の実現を目指しています」とNECの西原 基夫氏は語る。

NEC
取締役 執行役員常務 兼 CTO
グローバルイノベーションユニット担当
西原 基夫氏

 この活動の核になるのが「デジタルツイン」「AI(人工知能)」「プラットフォーム」からなる3つの技術ビジョンである。実世界とサイバー世界の融合を支えるデジタルツインの中で、AIを使って見える化や分析・シミュレーションを実行し、未来を共創・試行する。これによってビジネスの現状把握と予測が可能になり、タイムリーに最適な施策を打てるようになります。これらの技術は統合プラットフォーム上に実装し、多様なデータやアプリケーションとのセキュアな連携を加速させていきます」と西原氏は説明する(図1)。

図1社会価値創造を牽引するNECの技術ビジョン
図1社会価値創造を牽引するNECの技術ビジョン
社会課題から社会価値を生み出すためにNECはセキュアなプラットフォームを用意。その上にデジタルツインをつくり上げ、見える化、分析、対処という社会価値創造サイクルを駆動させていく

 三井住友海上のDXによるCSV実現を、NECがデジタル技術でサポートし、保険事業を変革していく。同じ“地平”を見つめているからこそ、互いの強みを生かし、足りないところは補い合う共創が可能になったといえるだろう。

顧客ニーズを予測し、提案から契約までデジタルで完結

 2社の共創による“化学反応”によって保険事業の変革も進みつつある。その1つの成果が、AIを搭載した代理店営業支援システム「MS1 Brain」である。顧客ニーズをAIで予測し、保険の販売活動に生かす取り組みを2020年から行っている。

 「代理店保有の顧客情報、三井住友海上保有の契約・事故データ、企業情報などの外部データをAIで分析し、潜在的ニーズを予測。これを基にお客さまに最適な保険商品やプランを動画で分かりやすく説明・提案します。お客さまと代理店はスマートフォンを介し、いつでもコミュニケーションが可能で、保険の提案から契約まで非対面で完結できます」と一本木氏は説明する。

 このMS1 Brainを支える最先端技術の1つが、dotData社のAI自動化プラットフォーム「dotData Enterprise」だ(図2)。dotData社はNECよりカーブアウトされて2018年4月に設立されたAIベンチャーである。

図2dotData Enterpriseの提供価値
図2dotData Enterpriseの提供価値
分析に必要となるデータ特徴量の抽出・設計、予測モデルの作成まで自動化し、分析時間を劇的に短縮化する。複雑なデータの組み合わせや相関分析を高速かつ自動で行うほか、人が思いもよらなかったインサイトも導き出す

 「NECはデータサイエンスの民主化、すなわち『誰でも使えるデータ分析』をコンセプトにAIのプロダクト・ソリューションを提供しています。dotData Enterpriseでデータ分析プロセスの自動化をサポートし、AIが出した結果を見ながら代理店の方が『なぜその保険がお客さまにとっておすすめなのか』の理由を説明できるため、お客さまに納得いただいた上でご契約いただけます」と西原氏は述べる。

事故・災害を防ぎ回復も支援、補償の「前後価値」を創造

 三井住友海上は事故や災害の経済的損失を補償する安心感の提供に加え、補償の「前後」にまでビジネス領域を拡大し、保険の価値変革に取り組んでいる。事故や災害を未然に防ぎ、万が一、事故や災害が発生したあとには、顧客の生活や財産の早期再建を支援する。補償の「前後」まで幅広くカバーすることは、同社が目指す「リスクソリューションのプラットフォーマー」として当然の帰結だったという。

 「補償前」の価値提供の1つとして開発したのが「防災情報の見える化システム」である(図3)。これは、近年増加している豪雨や台風による水災被害を防止・減少するためのソリューション。「自治体や事業者での避難判断に活用してもらうことを目指しており、既に複数の自治体と実証実験を実施しています」と話す一本木氏。このノウハウを生かし、今後は個人契約者向けに防災関連サービスを提供することも検討しているという。

図3防災情報見える化システムの概要
図3防災情報見える化システムの概要
リアルタイムの降雨データや河川水位データ、過去の事故データ、人流データなどをAIが分析。その結果をハザードマップに取り込むことで、地域ごとのリスクや危険箇所、住民の滞在状況や避難状況を可視化する

 一方「補償後」を支えるサービスの一例が「被災者生活再建支援サポート」である。「水害発生時にその被害(損害)調査情報を自治体に提供し、お客さまの早期の生活再建と自治体の調査業務の効率化に寄与します。既に50を超える自治体に採用されています」と一本木氏は続ける。被災者生活再建支援サポートでは、保険金支払いのために、水害の浸水の深さや被害状況などを調査し、その調査結果を自治体に提供することで、罹災証明書の発行を早期化し、被災者の生活再建を支援するという。

 NECはこれらのサービスの今後の高度化を見据え、技術面でどのようにサポートしていくのかを具体的に描き始めている。防災情報の見える化を実現する技術の1つが先述したデジタルツインだ。「IoT技術やセンサーなどNECの最先端技術を駆使し、現実世界の事象をサイバー空間に可視化・モデリングします。これをAIでシミュレートし、リスク発現の予兆を捉えることができます」と西原氏は話す。

 ほかにも、衛星を用いたリモートセンシングの技術を使えば、社会インフラの重大損傷を発見することができるという。「実際、昨年和歌山県で発生した六十谷水管橋(むそたすいかんきょう)の崩落事故では、崩落前2年間の衛星画像を入手し、過去にさかのぼり評価した結果、本技術を使えば、事前に橋の崩落を予兆しアラートを上げることが可能だったことが分かりました」(西原氏)。

 また、既設の通信用光ファイバーをセンサーとして活用することにより、高速道路上の交通流監視や橋梁の常時観測/異常検知も可能になる。この技術は橋梁モニタリングの実用化に向け、現在検証を実施中だ。

 万が一、災害や事故が発生したあとの復旧に貢献する技術もある。「最先端の画像解析・画像照合技術は、人のいない地域でも被害状況を正しく迅速に把握することができます」と西原氏は話す(図4)。電波の発信位置検知ドローンは、携帯電話が発信する電波を検知することで、救助者に被災者の位置を知らせ、迅速かつ正確な救助活動を支援するという。

図4NECの画像解析・画像照合技術
図4NECの画像解析・画像照合技術
災害発生エリアに近い複数の衛星情報を結合し、夜間や悪天候でも数時間で見える化が可能だ。衛星画像と現場画像を高精度に照合することで、災害場所を素早く推定することもできる

 映像の中の人やモノを理解し、配置や距離感から危険を察知するAIもある。これを活用すれば、災害復旧作業時に現場の状況をAIが把握し、現場の安全を確保することが可能だ。例えば、危険箇所への接近や標準作業時間を経過している人をAIが検知しアラートを出す。この技術は重機を使った掘削など危険な作業を伴う工事現場の安全確保にも有効だ。

 「これらの技術の活用・社会への実装を進め、三井住友海上の保険事業変革の価値向上を支援していきます」と西原氏は前を向く。

「信頼」を軸にオープンイノベーションを支援していく

 社会課題の解決につながる新たなビジネス創造には、デジタル技術の活用や企業、自治体、研究機関とのアライアンス強化が重要なポイントになる。

 グローバル拠点間のCSVとDXの取り組みの展開、先端技術の探索・実装を目的として三井住友海上はグローバルデジタルハブ「GDH」を2018年度に開設し様々な取り組みを進めている。今後は、外部の知見を積極的に取り入れるため、メタバース上にグローバルなビジネス創出拠点「GDHメタ」をつくり、先端技術の研究開発を担う各拠点の交流を促す。デジタル技術を使った、新しい共創のかたちである。

 「GDHメタではオープンイノベーションやアライアンスを推進しています。また、Web3やNFT(Non-Fungible Token:代替不能な固有価値を持つ情報資産)といった新技術が活用されるメタバース上の経済活動において、予想外の損失を補償する保険を提供することも研究していきたい」と一本木氏は意気込む。

 オープンイノベーションやアライアンスを推進する上で、より重要になるのがセキュリティである。NECはこの分野においても積極的に技術開発を進めている。また、NECが三井住友海上をはじめとするリーディングカスタマーとの未来の共創づくりにおいて大切にしているキーワードが「Truly Open, Truly Trusted」だ。真にオープンな世界を実現していくためには、技術そのものやその担い手に対する「信頼」が欠かせないという考えである。

 「NECは長年にわたり多くの業界のミッションクリティカルなビジネスの発展を支えてきました。この強みを生かし、新しい価値創造に加え、その土台となる『信頼』も技術で担保し、ステークホルダー全員が安全・安心で利益を享受できる社会の実現に貢献していきます」と西原氏は展望を語る。

 「保険×DX」は新しい保険事業のかたちを創出し、社会課題の解決に向けて大きな役割を担い始めた。ビジョンを共有し業界の枠にとらわれない共創が、社会課題の解決と企業成長の両立につながる。三井住友海上とNECの共創はそれを証左する好例といえそうだ。

2022年10月20日~2022年11月19日に日経電子版広告特集にて掲載。掲載の記事・写真・イラストなど、 すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます。

関連キーワードで検索

さらに読む

この記事の評価


コメント


  • コメントへの返信は差し上げておりません。また、いただいたコメントはプロモーション等で活用させていただく場合がありますので、ご了承ください。
本文ここまで。
ページトップ