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「進化したPOS」で顧客のビジネスを成長させる!
──NECのタブレット型POSへのチャレンジ

 店舗での精算と購買データ取得に広く用いられているPOSシステムが、タブレット端末とクラウドの組み合わせによって大きく進化している。ユーザビリティが向上し、データのリアルタイム一元管理が可能になり、機能の拡張性も加わった「進化したPOS」。従来の据置型POSで業界2位のシェアを誇るNECが、その進化したPOS──「NECモバイルPOS」──の開発に乗り出したのはなぜか。その経緯と導入事例を紹介する。

気軽に導入できるPOSシステムを!

 飲食店や小売店舗などのレジでタブレット端末が活用される場面を見かける機会が増えている。この数年、タブレットタイプの新しいPOSシステムの市場が活性化していて、従来の据え置き型POSからタブレット型POSに切り替える店舗の数が年々伸びているという事情がその背景にはある。

タブレット型POSの設置イメージ

 据え置き型POSシステムを広範な事業者に提供してきたNECも、4年ほど前からタブレット型POSシステム事業に乗り出した。

 「NECではかねてより、据え置き型POSシステムとは別に、電子マネー決済サービスを提供していました。カードや電子マネーによるキャッシュレス決済を推進するには、高額な専用機に加えタブレットを用いた仕組みが必要である。そう考えて、タブレット端末による決済システムのテストマーケティングを始めました」

 そう話すのは、第二リテールソリューション事業部バリュークリエイション部の黒田正治だ。

NEC 第二リテールソリューション事業部マネージャ 黒田 正治

 テストマーケティングの結果、決済情報に「何を買ったか」を示す購買情報を紐づけたいというニーズがあることがわかったという。そこで黒田らは、決済とPOSの両方の仕組みを備えたタブレット型POSの仕組みづくりに乗り出した。その仕組みが「NECモバイルPOS」として事業化されたのが2014年2月のことである。

 「それまで、NECの据え置き型POSシステムは大企業のお客さまへの提供が大多数だったのですが、小売店や小規模のチェーン展開をしているお客さまにも気軽に導入いただけるPOSシステムを提供したいという思いがありました。また、お客さまのご要望に応じてシステムを構築するという従来のビジネスモデルを、提案型のビジネスに転換していきたいと考えていた時期でもありました。NECモバイルPOSは、それらの思いを現実化したサービスでした」

POSを中心としたエコシステム

 従来型のPOSシステムは、POS専用機と店舗ごとのサーバが必要なこともあって、導入時にコストがかかるビジネス構造になっていた。それゆえに、導入は主に大手企業に限られていた。一方、NECモバイルPOSには、汎用デバイスであるiPadを使うことができて、データをクラウドで一元管理するのでサーバが必要ないというメリットがある。その分、初期コストが抑えられるので、小規模のチェーン展開をしている小売店や飲食店などでも比較的導入がしやすい。

 ほかにもiPadの特徴でもある直感的な操作性、クラウドを活用することによるデータ処理のリアルタイム性、コンパクトで場所をとらない省スペース性などメリットは多い。スタイリッシュなビジュアルも、顧客との対面ビジネスにおいては大きな利点となる。黒田はさらに、アプリケーションによる拡張性をこのサービスの特徴として挙げている。

 「予約システムや顧客情報管理など、他社が提供しているさまざまなサービスを加えることで、POSを中心とした一種のエコシステムを構築できるのがiPadをベースにしたサービスの大きなメリットであると考えています」

若手が中心となった柔軟な事業体制

 タブレット型POSのサービスを展開しているのは、主にベンチャー企業や他業界からの参入企業で、従来型のPOSシステムを手掛けてきた企業が新たなサービス型事業として展開しているケースは現在のところ例がない。

 「老舗POS機器メーカーの中で唯一市場参入しているのがNECです。POSを熟知しているからこそ、現場のニーズに即した使いやすくわかりやすいサービスを提供することが可能である。そう私たちは考えています。また、専用データセンタのデータ管理、24時間365日体制のコールセンター、機器に不具合があった際に全国どこでも迅速に交換に駆けつけられるサポート体制といったサービスインフラが整っていることで、お客さまに安心・安全をご提供できることも、大きな強みです」

 NECならではの安心感を提供できる一方で、20代、30代という若手中心で事業が進められている点にもこのビジネスの特徴がある。iPadの活用や、他社サービスとの連携など、NECの製品やサービスにこだわらない柔軟な姿勢にその特徴が表れている。

 「プロモーションや広告展開も、全社の共通組織に任せるのではなく、自分たちで手掛けています。事業の主体である私たちがお客さまのニーズをじかに汲み取り、お客さま目線でメッセージを直接発信していくことが重要であると考えるからです」

全国2,700店舗にシステムを導入

 NECモバイルPOSのこれまでの導入実績は約400社。端末数はおよそ1万台に上る。もともと小規模な企業でも導入しやすいことをメリットして打ち出していこのサービスだが、これまでの実績が注目され、大手からの引き合いも増加傾向にある。そのような企業の一つが、最近、自社で展開する全国2,700店舗の持ち帰り弁当店「Hotto Motto(ほっともっと)」にNECモバイルPOSを導入したプレナスである。業界トップの店舗数を誇るHotto Mottoでは、以前よりNECの据え置き型POSシステムを活用していたが、保守契約切れに伴い、iPadのPOSシステム導入を検討していた。

 「iPadは直感的な操作が可能で、メニューをビジュアルで表示することができるので、クルー(現場従業員)の研修などに時間がかからないといったメリットがあると考えました」

 そう話すのは、会計本部IT本部IT企画部長の高橋孝夫氏だ。ベンチャー企業とともにiPadを活用したPOSシステムの実証実験を進めていたプレナスだったが、最終的にNECモバイルPOSの導入を決めた。

 「クラウドの仕組みから全国店舗をカバーする保守メンテナンスサービスまでをワンストップで提供していただける点が決め手でした」

株式会社プレナス 会計本部 IT本部 IT企画部長 高橋 孝夫 氏

 2016年11月に北海道の約10店舗で旧システムからの切り替えをスタート。その後段階的に他地域への導入を進めていった。全国2,700店舗でNECモバイルPOSの活用が可能になったのは17年7月である。同社は同時に、会員サービス「My Hotto Motto」と連動させる顧客管理の仕組みを導入し、顧客情報と購買情報の紐づけを実現している。

POSシステムを活用してビジネスを成長させる

 「レジの視認性向上に加え、場所を問わないレジトレーニングが可能となったので、レジ作業の効率化や新規店舗スタッフのレジ習熟スピード向上などを実現しました。店舗スタッフの負担が低減された分、商品提供品質の向上のための作業に、より多くの時間を充てることができるようになりました」

 IT企画部IT企画課の渋田功一郎氏はそう話す。

株式会社プレナス 会計本部 IT本部 IT企画部 渋田 功一郎 氏

 同課の菅原祐人氏は、とくにクラウドの仕組みを高く評価している。

 「購買データがほぼリアルタイムでクラウドにアップされるので、売上の傾向などを本部からも個別店舗からもすぐに確認できるようになりました。顧客管理の仕組みで取得しているお客さまデータもクラウドに日々蓄積しているので、いずれマーケティングに活用していけるはずです。また、アプリを追加することで新しい機能を増やしていけるのも、このシステムの大きなメリットだと考えています」

株式会社プレナス 会計本部 IT本部 IT企画部 菅原 祐人 氏

 POSなどのシステムは、一般に経営コストとみなされる。しかし、そこから得られた詳細なデータをマーケティングや経営戦略に使うことができれば、システムは、ビジネスを成長させる経営資産となる。新しいPOSシステムで獲得した購買データと顧客データをいかに活用していくか──。それが次のチャレンジとなると高橋氏は話す。

 黒田は、Hotto Mottoへのシステム導入をサポートする過程で、POSのユーザーの多様性に気づいたという。

 「商品を購買する方々だけでなく、店舗のオーナーさま、POSを現場で活用する店員の皆さまと、いろいろな立場の方々がPOSシステムのメリットを享受されることを学ばせていただきました。今後もその視点を忘れずに、多くのお客さまにシステムを提供していきたいと考えています」