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社会価値創造レポート Work Style

デジタルを活かす企業に魅力と競争力を生む「働き方」の作り方

2018年07月18日

労働力の確保と生産性の向上が競争力につながる

生産年齢人口が減少する中、労働力確保は経営課題の一つに

 2017年3月、内閣府は日本経済再生に向けた最大のチャレンジとして「働き方改革実行計画」を決定し、日本も「働き方改革」に向けて舵を切りました。
働き方改革実行計画は労働生産性向上、長時間労働の是正、柔軟な働き方がしやすい環境整備など9つのテーマを提示しており、政府主導のもと日本特有の労働制度や働き方を改革していこうというものです。

 日本の労働における問題の一つは、2030年にかけて生産年齢人口(15歳〜64歳)の減少が加速することです。生産年齢人口を諸外国と比較してみても、日本の減少率はマイナス12%と高い数字となっています。労働参加が進展しても就業者数は減少する見込みとなっており、労働力の確保は今後ますます重要な経営課題となります。

 その状況を表すデータとして、厚生労働省が発表した2017年10月の有効求人倍率(季節調整値)が前月比0.03ポイント高い1.55倍に上昇し、1974年1月(1.64倍)以来43年9カ月ぶりの高水準となりました。

 過労死やブラック企業などの言葉が日本を席巻しましたが、労働力確保が困難となる中、労働者の環境は改善傾向にあります。生産年齢人口が減少する中、今後も労働力を確保し続けるためには、労働者にとって働きやすい環境を提供することが企業にとってますます重要となってきます。

世界的に見て低い日本の生産性。違いは労働時間の長さ

 日本の場合、低い労働生産性も大きな課題です。OECD※1によると時間当たり労働生産性は46.0ドルでOECD加盟35カ国中の20位となっています。産業構造が日本と似ているドイツは68.0ドルの第8位で、その違いはドイツの労働時間の短さにあります。OECDによると、2016年のドイツ労働者一人あたりの年間平均労働時間は1,363時間、日本は1,713時間です。

 このような短い労働時間では成長できないのではないか?と思うかも知れません。しかし、ドイツ商工会議所は2018年の経済成長率の見通しを2.7%と発表しており、好調なドイツ経済は短い労働時間でも経済成長を維持できていることを示しています。

 また、短い労働時間で成果が出せることは、労働者の一日において自由に使える時間を増やすことにもなり、結果従業員満足度を高めることにもつながるでしょう。労働力の確保の為にも、労働時間を短くすることは一つの重要な経営課題と言えるでしょう。

労働環境の国際比較(出典:公益財団法人 日本生産性本部労働生産性の国際比較2017版)
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※1 Organization for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構

労働者の多様な価値観に対応した労働環境の整備

多様な価値観への対応が人材獲得のカギ

 生産年齢人口が減少する日本においては、労働者の働く意識の変化に対応することも、人材確保の観点で重要となります。

 「男女共同参画社会に関する世論調査(2016年)」によると、「子供ができても、ずっと職業を続ける方がよい」が54.2%と過半数を超え、子育てと仕事の両立に対する意識が増加しつつあることが分かります。

 また若い世代の働き方に対する意識も変わりつつあります。
経済産業省の「賃金水準下落と消費者物価」によると、賃金水準は1997年をピークに、それ以降は低下し続けており、大幅な昇給は期待しづらい状況です。さらに、ある調査では管理職を目指す若者が減少しているというデータもあります。若い世代の人材獲得においては昇給や出世意欲といったこれまでのインセンティブにこだわらず、働くことに対する様々な価値観に柔軟かつ持続的に対応していくことが、企業経営の視点で重要です。

働くことに対する多様な価値観
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企業の持続的成長を実現する労働者の幸せと企業の成長の両立

 国連の「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」は、ウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態)に基づく、国別の「世界幸福度ランキング2017」を発表しています。ランキングでは、ノルウェーが1位でオランダが6位、米国が14位、ドイツが16位に対し、日本は51位でG7(主要国首脳会議)の最下位でした。調査では特に職場での幸福度にも着目し、精神疾患や心の病が不幸の最大原因になると指摘しています。

 幸福度が高い国には、働き方において各国に応じた文化や制度があることも考えられます。オランダは多様な働き方が認められている働き方先進国です。週3勤務、週4勤務も珍しくなく、多くの企業や業界が、いつでもどこでも仕事ができるリモートワークやテレワーク、在宅勤務などを積極的に取り入れています。またドイツでは短時間で成果を上げる社員が最も評価されます。1日10時間を超える労働は法律違反となり、企業に罰金が科されます。企業は罰金を科された場合、長時間労働を課していた管理職に対しポケットマネーから罰金を支払うことを要求します。

 オランダもドイツも、国や企業がICTも活用しながら労働時間を短縮し生産性の向上、労働参加の推進を図り、仕事と生活の調和を意味するワークライフバランスを維持しています。柔軟で魅力的な労働環境を提供し、従業員の幸福に寄与することが、企業の持続的成長を実現する原動力となるのです。

ICTの活用で進む働く環境の変革

ICTの活用は働き方の多様化と生産性向上には不可欠

 デジタル化の進展により産業構造が変わり、価値観が多様化するなか、ICTを活用し時間や場所にとらわれない新しい働き方が登場しています。事業者がWebサイトで働き手を公募し、仕事を発注するクラウドソーシングは欧米を中心に利用が拡大しています。またスキルを提供したい個人とサービスの提供を受けたい個人をマッチングさせるシェアリングエコノミーでは、デザインや秘書業務、語学レッスンなど専門的なスキルを提供するサービスも生まれています。
新しい働き方の普及促進では、ICTを活用しながら人件費を抑え、必要な時に必要な人材を確保できる事業者と、自由度の高い働き方ができる働き手の相互にメリットのあることが重要です。

 AI(人工知能)の進展も働き方の変化を促す要因の1つです。金融機関ではAIの導入により業務の自動化を積極的に進めています。自動化による業務効率・生産性の向上とともに、従業員をより創造的な仕事にシフトしていくことが狙いです。またコールセンター業務のAIによる自動応答も始まっています。
オペレータの対応時間の短縮はもとよりお客様へのサービス向上が図れます。ICTを活用した働き方改革は、生産性の向上や新たな価値提供による競争力の強化を後押しします。

ビジネスへの活用が急速に進む、AIシステムの市場
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ICTを活用した働き方改革

 働き方改革には、企業文化や人事制度などの根本的な変革が必要となります。その為に日本にとって特に重要となるのがICTを活用して抜本的に働き方を変革・改革していくという攻めの経営です。

 テレワークについてみてみると、その導入企業は米国が約9割、イギリスが約4割であるのに対し、日本は約1割です。日本政府は、2020年までに「テレワーク導入企業を2012年度比で3倍」にするという目標を掲げています。国家公務員におけるテレワークの導入も進められています。総務省では職員に対しテレワークウィークを実施しており、2015年度は大臣からの呼びかけにより前年度比で利用者数が約3.9倍、利用日数が約4倍に増えました。働き方改革は企業変革と一体となるため、経営者の強い意志とリーダーシップなくしては実現することはできません。

テレワーク導入状況の国際比較
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