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2019年07月30日

~お金の「安全」と「便利」~
【LINE Payの挑戦】コミュニケーションと決済をつなげる「顔」を使った仕掛け

 政府はキャッシュレス決済の普及を掲げ、経済産業省は「キャッシュレス・ビジョン」を作成。2025年までにキャッシュレスの決済比率を40%にしたいという目標を立てた。他国と比較して現金主義が根強い日本も、徐々にキャッシュレスに向けて動き出している。こうした大きな流れの中で、電子決済事業者間の激しい争いが始まっている。

 その中で注目を集めているのがLINE Pay株式会社。同社は、国内月間アクティブユーザーが約8000万という怪物プラットフォーム「LINE」が強化事業に挙げるFinTechをリードしている。

 そんなLINE Pay株式会社が挑んだ試みが、犯罪収益移転防止法に基づく本人確認がオンライン上でできる仕組み「e-KYC」の導入だ。なりすましによる不正使用を防ぐための仕組みで、本人確認を、オンライン上で顔認証を用いて行うというもの。NECをパートナーにして、「安全(セキュリティ)」と「便利」という、相反する価値を両立させた。

 LINE Pay株式会社が勝ち抜くために挑んだe-KYCという新たなチャレンジ。その中身を同社プロダクト室 室長の池田憲彦氏へのインタビューをもとに解き明かす。

決済でも”デファクト”獲りへ

 2011年に誕生したLINEは、メッセージング・コミュニケーションツールとして圧倒的な地位を築き、その強力な顧客基盤をもとにビジネスの多角化を図っている。

 主力の広告やコンテンツビジネスをコアに据えながら、戦略事業として金融サービスやeコマースなどに積極的に打って出ている。その中でも特に力を入れているのが、モバイル送金・決済サービスの「LINE Pay」だ。コミュニケーションの「デファクトスタンダード(事実上の業界標準)」の座に就いたLINEが、今度はデジタル上の「お金の流通」でデファクトを獲ろうとしているのだ。

 LINE Payでは、スマートフォンのLINEアプリで決済ができるほか、アプリ内にある電子マネーを、銀行口座やATMから出金したり、LINEで友だち登録されているユーザー間で送金ができたりする。

 「電子決済サービスは、簡単に使い始められるかどうか、つまり、事前登録・設定がいかにシンプルかが大切。その点、LINE Payはいつもお使いいただいているLINE上で規約への同意とパスワード設定をするだけで基本機能を使うことができます。それが他社のサービスとの差異化ポイントになっています」と、LINE Pay株式会社プロダクト室 室長の池田憲彦氏は語る。

LINE Pay株式会社
プロダクト室 室長 池田 憲彦氏

 国内でLINE Payで決済可能な箇所数は136万カ所を超え、国内外での取引額は1兆円を突破した。順調にユーザーを増やしている中、LINE Payはさらなるユーザー獲得と満足度向上に向け、今回新たなチャレンジを仕掛けた。

 それが「e-KYC」、オンライン上で行う本人確認の仕組みの導入だ。

60%が断念するという障壁

 LINE Payの機能は、①決済②送金③出金に大別できる。実は、池田室長が話した規約への同意とパスワード設定で使える機能は、決済にとどまる。送金・出金は犯罪の防止とセキュリティ強度を高める観点で、法律によりKYC(Know Your Customer=取引時の本人確認)が必要になり、もう一手間がかかるのだ。

 LINE Payで本人確認を行うためには、サービス内で銀行口座と連携する必要があった。ユーザーはLINE Payから各金融機関のウェブサイトにページ移動し、各銀行のセキュリティポリシーに準じた情報の入力を行わなければならない。

 「申し込んでからすぐに利用したいという思いに対して、手続きが難しく、使いたいという熱意が薄れてしまうという高い障壁がありました。調べてみると、最後まで登録を完了させるユーザーは4割にとどまっていました。つまり、残りの6割が登録の途中で断念してしまっていたわけです」

 「本人確認ができなければ残高の上限が10万円に制限されてしまう(本人確認を行えば100万円)ほか、何より『LINEの友だちに送金』や『LINE Payの口座残高を銀行口座へ出金』という、LINE Payがユーザーに届けたい価値のすべてを享受いただくことができません。何か他の本人確認方法がないものか、模索していました」

きっかけになった法改正

 そんな状況の中、キャッシュレス化を進めたい政府は2018年11月、犯罪収益移転防止法施行規則を改正。オンラインで完結する本人確認方法「e-KYC」が可能になった。

 「7月にパブリックコメントが募集されたタイミングで、いよいよだと確信して、新しい本人確認方法を実現する手段として、e-KYCの導入を具体的に検討し始めました」

 e-KYCとは、本人の顔写真と本人確認書類を撮影することにより、本人確認がオンラインで完結する仕組み。これで銀行口座の連携手続きの手間が軽減されることを期待するほか、ユーザーにいろいろな本人確認方法の選択肢を提示できる。この仕組みをLINE Payは導入し、2019年5月にサービスを開始した。

 LINE Payでは、スマートフォンのカメラで撮影した自分の顔と運転免許証などの本人確認書類、住所や氏名の登録を済ませることで本人確認できる。

 また、できるだけ多くの方に利用していただけるよう、運転免許証の他にも、運転経歴証明書、日本国政府発行のパスポート、在留カード、特別永住者証明書、マイナンバーカードと、幅広い身分証に対応。

 そして、登録時にはLINEでおなじみのキャラクターが画面に登場し、丁寧にチュートリアルで誘導するので、ユーザーを迷わせないようにするなどの工夫も施した。

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 LINEのアプリ内で完結させられるため、ユーザーが使い慣れた操作感と世界観をそのままに、優れたユーザビリティで手続き完了まで導くことが可能だ。

 このユーザビリティを支えるのが、顔認証技術。証明書の写真と実際の自分の顔写真を照らし合わせ、本人かどうかを判断するキーテクノロジーだ。パートナー企業を模索するなか、LINE Pay株式会社が選んだのはNEC。同社のe-KYCソリューション「Digital KYC」を導入した。

 NECの「Digital KYC」は、わずか3ステップで本人確認申込が済むように設計されている。①スマートフォンで自分自身と運転免許証などの身分証を一緒に撮影②運転免許証の厚みを撮影③必要事項を記入。これだけで本人確認申込が終わる。

群を抜く認証精度が決め手

 この簡便さとNECが世界に誇る認証精度をLINE Pay株式会社は高く評価した。

 「本人確認のための生体認証では、なりすましを防止することも大事ですが、正しいユーザーを正しいとスピーディに判断することもそれと同じくらい重要です。自分が自分だと認証されないとユーザーは強くストレスを感じるので、LINE Payが理想とするユーザビリティではなくなってしまいます。そういった観点で、認証精度の高さを重視しパートナーを選びました。その中で、群を抜いていたのがNECでした」

 NECは生体認証に強く、顔認証だけでなく、虹彩、指静脈、指紋・掌紋、耳音響、声の合計6種類の生体認証をカバーしている。いずれも高い精度が特徴だが、その中でも顔認証技術は世界トップクラスの性能を誇っている。

 米国政府機関が2017年に実施した動画顔認証技術のベンチマークテストでは、NECの認証精度は99%以上と他社を大きく引き離して第1位の性能評価を獲得。これまでの静止画の顔認証テストに続き、4回連続の世界一を獲得している。

 また、採用実績も世界トップクラスを誇り、入出国管理や国民ID、犯罪捜査など国家レベルのセキュリティを支えているほか、企業での入退管理や端末ログインや決済など、さまざまな用途で使われている。

導入実績はこちらから

 こうした実績をLINE Pay株式会社は高く評価。「LINEは、『コミュニケーション』というユーザーにとって機密性の高い情報を扱っており、高いセキュリティが求められています。中でも、お金を扱うLINE Payは一層高いセキュリティを求める。厳格な指標がある中で、NECはそれをクリアしてくれました」

 そして、今回の取り組みは、LINE Payとしては先例のない取り組みだったという。

 「単純にサービスを組み込むといっても、元々自社開発をメインとしていた私たちにとっては異文化を取り込む行為ですので一大プロジェクト。かなり慎重に動きましたが、NECの認証精度の高さと、e-KYCという新しいチャレンジを一緒になって取り組もうという熱意で、最短のロードマップで実現することができました」という。

キャッシュレス化はこれからが本番

 国も後押しするキャッシュレス化の流れで、モバイル決済は将来性のあるビジネスになるだろう。それゆえに、競争が熾烈。ネット系ベンチャーや流通小売業など、この分野に参入する企業が後を絶たない。LINE Pay株式会社もこれからが本番だろう。

 「私たちには、LINEという、圧倒的な数のユーザーが毎日使うツールがあります。LINEとの連携によって、ユーザーに手間をかけさせずに優れた操作性でキャッシュレスを実現することができる。ユーザーも機能ごとに複数のツール(アプリ)を使うよりも一つのツールでさまざまな機能を使ったほうが効率的だと思っているはず。それゆえに、これは強力なアドバンテージだと思っています」と池田室長はLINEグループとしての優位性を語っている。

iStock/DjelicS

 最後に、今後の展望についてこう語っている。

 「キャッシュレス化を推進するリーディングカンパニーとして成長していきたいです。キャッシュレス化を進めるためには、個人間送金機能が重要なポイントだと思っています。しかし、個人対個人におけるお金のやりとりは、これまで本人確認手続きの手間が原因で、一部のユーザーでしか利用されていませんでした」

 「それが、NECとの協業によってe-KYCが実現できた結果、手間が激減してLINE Payはユーザビリティの高いツールへと進化しました。ぜひ、より多くの方にLINE Payのフル機能、世界観を味わって便利なキャッシュレス生活を体感いただければと思っています」

 「そして、コミュニケーションと決済の融合は、さまざまな新しい価値をもたらすと確信しています。たとえば、決済によってつながった加盟店とユーザーがLINEで『友だち』になれば、長期的なつながりを生み出し、エンゲージメントを高めることが可能になります。こういった『つながり』の輪、そして新しい価値による広がりは、産業の枠を超えた異業種間のアライアンスなどにもつながっていくと考えています」

 「便利さ」と「セキュリティ」という相反することを両立させ、「つながる」という顧客体験をさらに高めたLINE Pay。コミュニケーションと決済をつなげたからこそ実現できる新しい価値創造によって、これからのキャッシュレス時代をリードしていく。

(制作:NewsPicks Brand Design 取材・編集:木村剛士構成:加藤学宏 撮影:北山宏一 デザイン:Seisakujo)

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