

SEの働く環境に新提言
システムだけでなく”人にも優しい”
日本中で働き方改革が大きなテーマとなっています。そうした中、システムの開発や運用を担うSEにも、生産性向上による長時間労働の抑制や、心身の健康と働きがいを重視した職場環境が求められています。NECは2019年4月に新設したNEC名古屋データセンターにおいて、SEの働き方改革を意識した“人にも優しい”データセンターを実現しようとしています。
システムの安定稼働が優先され
負担を強いられる現場のエンジニア
少子高齢化に伴う人手不足などを背景に、国を挙げての取り組みとなっている「働き方改革」。生産性を向上して残業時間を削減し、従業員の心身の健康と働きがいを重視する。フリーアドレス制をはじめ、オフィス環境を見直し、業務の内容に応じて最適かつ快適な環境を実現する。在宅勤務などのテレワークを推進して、多様な人材の戦力化を目指すなど、さまざまなアプローチで改革が進んでいます。
そうした中、これまで過酷だと指摘されることが多かったSEの働き方についても改革するための取り組みが進んでいます。改革の舞台はデータセンターです。
一般的にデータセンターというと、拡張性のある土地を確保するため、郊外の交通の便があまり良いとはいえない場所に立地している場合が多く、また、多数の顧客の重要情報を保管していることから、入館時には何重ものセキュリティチェックが必要になるなど、さまざまな制約があります。
もちろんシステムを安全に守り、安定稼働させるために必要なことなのですが、SEがデータセンターに出向くのは、休日や連休など短期間でのシステムの立ち上げ時やトラブル対応などの緊急時であり、大きなプレッシャーを抱えている状況にこれらの制約が加わりさらに負担が増えることで、大きなストレスにつながります。
さらにはデータセンターの主役はあくまでもサーバなどの機器やシステム。そのため、人が腰を据えて作業を行えるスペースがなかったり、気分転換できる休憩スペースがなかったりなど、あまり環境が整っているとはいえません。
働くSEにも配慮した
新設データセンター
NECは、このような状況に一石を投じ、データセンターを利用するSEの働く環境を見直したいと考えました。「システムを安全・安心に守りながら、”人にも優しい”データセンターを実現する。そう考えて建設したのが、NEC名古屋データセンターです。これまでは、よく最新の設備を導入している点を指して『次世代』という言葉を使っていましたが、NEC名古屋データセンターは、”人にも優しい”という新たなコンセプトを持つデータセンターです」とNECの三森 健太朗は語ります。

サービスプラットフォーム事業部
三森 健太朗
では、どのような点が、”人にも優しい”データセンターなのか。具体的な特長を見ていきましょう。
利便性を向上させてストレスを軽減
サーバラックへの到達時間短縮にチャレンジ
まず1つ目の特長が、データセンターへの入館に関する利便性の追求です。従来の入館方法とは異なる顔認証によるセルフチェックインを採用し、入館にかかる時間を削減します。
具体的には、運転免許証の写真と顔画像によって自動で本人確認を実施。その上で発行されるICカードには、登録した顔画像、利用中のシステムがどのフロアのどのラックで稼働しているかという契約情報が紐付けられます。

運転免許証で本人確認を行うことが可能。顔画像の登録、ICカード発行までをセルフサービスで行える
また、主要なゲートはICカードと顔認証の多要素認証で不正な入室を防止しますが、サーバルーム入室の際の顔認証はウォークスルーでの認証を実現しており、ストレスを感じさせません。さらに、サーバルームに入った後はICカードをかざせば、契約しているラックの扉が自動解錠されるようになっており、カギを持ったスタッフと同行する必要もありません。

金属探知ゲートに加えて、ICカードと顔画像による多重認証ゲートを設置
このように、NEC名古屋データセンターはサーバラックへの到達時間を大幅に削減し、利用者の利便性を向上させています。「NEC名古屋データセンターを設計する際には、お客様が入館してからラックに到達するまでの時間を従来の半分にすることを目標にしました。ただし、それで安全性を犠牲にするのは本末転倒。NECが世界に誇る顔認証技術を活用することで、トレードオフの関係にある利便性と安全性を高度に両立することができました」と三森は言います。
落ち着いて業務ができるオフィスエリア
カスタマイズ可能な専用スペースを用意
次に挙げられる特長が充実のオフィスエリアです。これまでもNECのデータセンターには、ミーティングルームなどを設置していました。しかし、NEC名古屋データセンターは、利用者のさまざまな業務を想定して、バリエーションを拡大。作業内容や用途に応じた最適な環境を利用できるよう工夫がされています。
例えば、最上階にはデータセンター利用者向けのコワーキングスペースを用意し、一般的なオフィスと変わらない環境で業務を行える上、集中して作業したい人向けの半個室席、打ち合わせを行うためのスペースなどが用意されています。

窓や無線LANもある一般オフィスと変わらない環境で業務を行える。集中して作業したい人向けの半個室席、打ち合わせを行うためのスペースなども用意
(※写真はイメージです)
また、利用者の要望に応じて広さやセキュリティレベルを個別に設定可能な専用エリアも用意。「システム運用やメンテナンスと一言でいっても、状況によって行う作業はさまざまです。より広範な視点に立ち、その時々に最適な働く場所を提供します」(三森)。
現地にいるオペレーターの作業を遠隔から支援
もちろん、お客様だけでなく、NEC名古屋データセンターの運用を担うNECのオペレーターのことも配慮しています。その1つがスマートグラスを活用した遠隔運用です。

NECの本社やほかの拠点にいる専門技術者がスマートグラスを介してセンターのオペレーターに遠隔で作業内容を指示できるような仕組みを整備。将来的には顧客向けのサービスとしても提供予定
この仕組みを利用すれば、データセンターの設備や預かっているシステムにトラブルが発生した際には、NECの本社などにいる専門技術者がスマートグラスを介してすぐに状況を把握し、現場のオペレーターに正確な指示を送ることが可能。それにより、高品質な運用サービスを提供します。
「この仕組み自体はまだトライアルの段階ですが、将来的にはお客様にもご利用いただき、お客様が自社にいながら、スマートグラスを装備したNEC名古屋データセンターのオペレーターを介して作業を行うといったことも想定しています」と三森は語ります。
このように”人にも優しい”特長を持つNEC名古屋データセンターですが、データセンターとしての基本的なスペックも極めて高いレベルにあります。
建物の堅牢性という観点では、免震ダンパー、積層ゴムを用いた免震構造が採用されており、大規模地震などに向けた万全の対策が施されています。
次に、事業継続性の観点では、万一の被災時も安定的な稼働を続けるためにUPSや非常用発電機など、各種設備は冗長化が図られており、例えば電源についても異なる変電所から2系統で受電することで停電リスクを軽減します。
また名古屋駅から15分以内という好立地の上、NECの開発拠点や保守拠点からも10分以内で駆けつけることができ、万一の際にも万全のサポートが期待できます。
「さらに運用面でも、東日本大震災や北海道胆振東部地震などの大災害から得た教訓を活かし、常に運用体制やプロセスを見直してきました。それがデータセンターを安定稼働させる大きな土台となっています」と三森は言います。
システムだけでなく”人にも優しい”。これまでの常識を見直し、NEC名古屋データセンターを通じてNECが提言する新しいコンセプトは、ITで社会やビジネスの課題を解決することだけでなく、IT分野が抱える課題を解決することの重要性に改めて気付かせてくれます。