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地方創生現場を徹底取材「IT風土記」

大分発 営農の見える化を実現 農業再生の道開く原価管理

2017年02月27日

 農地法の改正に伴い、農業に参入する企業が増え、日本の農業再興へ向けた動きが始動している。ラーメン店「一風堂」を傘下にもつ株式会社力の源ホールディングス(福岡市)のグループである農業生産法人「株式会社くしふるの大地」が大分県で取り組んでいる営農改革もそのひとつだ。高齢化や新規就業者の不足により、担い手の減少が深刻な問題となる中、若者たちが夢を託せる職業に農業を進化させることが大切だ。大分県で始まった営農改革は、カンと経験に頼ってきた農業に、生産性の向上やカイゼンなどの経営感覚を取り入れることを目指し、着実に成果を実らせ始めている。

営農の見える化の第一歩は「原価管理」

 「私たちは農業の素人ですので、まずは飲食店の運営のように原価管理を大切にしました」。力の源カンパニーの清宮俊之社長はこう話す。

 くしふるの大地は2009年、農業参入の圃場に大分県竹田市の久住農場を選び、2015年には通年出荷の体制を確立するため、農地面積の拡大が必要となり、大分県豊後大野市の旧三重農業高校跡地を活用し重政農場を整備した。くしふるの大地の営農は、作付け計画から栽培管理、出荷・販売に至るすべてのオペレーションを20代~40代のスタッフが手掛けている。各セクションに責任者を置き、計画、実行、評価、改善という「Plan-Do-Check-Act(PDCA)」のステップを繰り返すことで、生産管理や品質管理の業務を継続的に改善することを目指している。

力の源カンパニー清宮俊之社長

 なかでも、力を入れているのが、生産原価を把握する点のデータ活用だ。清宮社長は「原価管理がきっちりできれば、PDCAのサイクルも血の通ったものになり、農業経営が見違えて良くなるはずだ」と考える。ICTを活用し、農業の経営や販売をガラス張りにすることで、問題点を把握し、次の一手を打てる営農を目指す狙いだった。

くしふるの大地の重政農場。三角屋根がシンボルの旧農業高校校舎の面影を残している

生産、流通双方の悩みをICTで解決

 福岡県、熊本県、山口県などで展開している、中堅スーパーマーケットは、店内や商品のディスプレーに工夫を凝らし、アミューズメントパーク化していることが特長で、客を楽しませる仕掛けが随所に見られるユニークなスーパーとして知られる。

 同スーパーは生鮮食品の新鮮さをアピールポイントのひとつにしており、徹底した品質管理に基づく安全性に加え、買い物が楽しくなるような新鮮な情報を消費者に届けることを目指している。ただ、農家の多くは情報化が進んでいるとは言えない状況で、生鮮野菜の仕入れの情報を早く正確に知ることが出来ないだろうかと悩みを抱えていた。

 その頃、NECは農業への貢献をICTで実現することを模索しており、各方面にヒアリングを行っていた。その矢先、スーパーからの紹介によりくしふるの大地と出会った。原価を把握したい農業従事者と、仕入れ情報を把握したいスーパー。両社の悩みをICTで解決することができれば、農業の再生の大きなヒントになるかもしれないと考えた。

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