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2014年03月26日

NECのイノベーターズたち

予測の力で社会を変えるデータサイエンティスト

データの中にある真実をたしかな価値に変えていきたい

──NECの異種混合学習技術には、どんな強みがあるのでしょうか。

本橋:
 最大の強みは、機械自身による自動的な場合分けです。従来、予知や予測を行う場合に大きな課題となっていたのが、適切な予測式を導き出すためにかかる煩雑な手間でした。予測に必要なさまざまな条件や要因を掛け合わせると、その場合分けは膨大な数にのぼります。異種混合学習技術は多量かつ多彩なデータの中から、その要因や条件などを機械自身が動的に組み合わせたり、取捨選択を行って適切な予測式を自動的に導き出してくれるのです。これまで煩雑な場合分けの作業に手を焼いていたデータサイエンティストの立場からすれば、それはもう画期的なことです。

 もうひとつ重要なことがあります。分析ソリューションというのは高精度な予測をすれば、それで終わりというワケではありません。当然のことですが、お客さまは予測した結果をさまざまなオペレーションに役立てたいと考えています。ところが最先端機械学習アルゴリズムの多くは、学習結果である予測式がブラックボックス化していて見えないため、お客さまは店舗や製品戦略、メンテナンスの改善など、次のオペレーションに役立てることができないのです。異種混合学習技術の分析エンジンの場合、パターン分けの条件や予測式の内容などが、お客さまにわかりやすく可視化できます。高精度な予測とお客さまが見てわかる可視化を両立しているのは、この分析エンジンだけと言えるでしょう。

異種混合データ
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──NECの分析ソリューションには、ほかにどんな強みがあるのでしょうか。

本橋:
 現在、NECはデータサイエンティストやドメインエキスパートなど、人材の大幅な強化を進めています。そのひとつとして、分析のためのノウハウや方法論をNEC独自の標準プロセスとしてまとめ、体系化を進めています。実証実験やトライアルの実績もNECの強みのひとつです。

 異種混合学習技術に関して言えば、この1年半の間でトライアルは数十件の実績があります。その分野は建設業、重工業、流通業、自動車製造業、石油化学工業、電力会社、官公庁、金融業、通信キャリアなど、多岐にわたっています。商談を含む引き合いも、百数十件におよんでいます。こうした数多くの案件を少人数のスタッフで、しかも短期間で対応することができたのも、適切な予測式を自動的に機械が導き出してくれる異種混合学習技術という、すぐれた分析技術があるからです。

分析システム導入でお客さまの製品力が向上

──異種混合学習技術を活用した分析ソリューションを導入するお客さまについて教えてください。

本橋:
 導入実績については進行中の案件もあるので、お話しできる範囲内でご紹介します。ある流通業のお客さまでは、商品の需要予測に基づいた発注システムの最適化を図っています。天候、曜日、時間、気温などのさまざまな要因から、異種混合学習技術を使って高精度な商品の需要予測を行い、在庫切れによる販売機会損失や在庫過剰による廃棄ロスなどの課題解決を図り、ムダやロスのない発注業務を可能にしています。

 大林組様からは、エネルギー需要予測システムを導入頂く予定です。気温、時間、従業員数、過去の電力使用履歴などをもとに、時間や日、週単位で、電力や熱使用量を予測して、ビルのエネルギー管理の最適化を図るのが目的です。同じくエネルギーの需要予測として、三菱重工業様からは船舶用の分析システムを受注しました。船舶におけるエネルギーの需要予測では気象や航路、航行の仕方、停泊や係留など、さまざまな要因が関わってきます。エネルギーの需要予測という点では大林組様と同じですが、船舶では分析する条件や要因も大きく異なってきます。

 すぐれた汎用性を誇る異種混合学習技術は、こうした多彩な目的や多様なデータに対しても、柔軟に対応して力を発揮できるのが大きな強みです。

──NECの分析ソリューションに対する、お客さまの評価はいかがですか。

本橋:
 通常のシステム開発の場合、お客さまの窓口は主に情報システム部門ですが、分析ソリューションではお客さまの窓口も違ってきます。先ほどの事例で言えば、流通業のお客さまの窓口は情報システム部門でしたが、大林組様の窓口は新しい建築物開発のマネジメント部門でした。そして三菱重工業様では船舶の設計製造部門が窓口でした。大林組様では新しいビルに、そして三菱重工業様では新しい船舶に、エネルギー需要予測の分析システムを組み込むのが目的です。そこには、より付加価値の高いビルや船舶をつくって売るという、両社のビジネス戦略があります。つまり、分析システムを自社の製品のバリューアップやライバルとの差別化に役立てる狙いがあるのです。

 お客さまの評価や反応は、大きく分けて2つあります。その第1は、適切な予測式を機械が自動的に導き出す分析エンジンに対する驚きや関心です。お客さまから高い評価をいただいているもうひとつの点は、データ分析に精通しているスタッフがお客さまと一緒にディスカッションするということです。私の場合ですが、打ち合わせの場には必ずホワイトボードの用意をお願いして、その場でデータを見ながらお客さまとさまざまな議論をします。分析結果の根拠や理由を、研究者が最前線でお客さまにきちんと提示して説明することを常に心がけているからです。

野球観戦は、得意のデータ分析で楽しむ

──分析ソリューションの今後の展望を、聞かせてください。

本橋:
 異種混合学習技術の分析ソリューションチームとしては、初めに少し触れましたがビジネスや社会システムの制御など、予測の先にある次のステップに繋げていきたい、と強く思っています。予測した結果をもとに次は何を改善すべきかを機械学習の力によって割り出し、お客さまのさまざまな課題を解決していきたいと考えています。

 私たちのチームとしての目標は、一流のデータサイエンティストを数百人に増やすこと。NECとして、より多くのお客さまに分析ソリューションによる価値を提供するため、これはぜひ成し遂げたいと思っています。年間数百件以上の案件を簡単にこなせるようになりたいのです。また、個人的な思いとしては、データ分析の観点から、2020年を見据えてTOKYOを変えてみたいです。交通システムやスタジアム、さらに観光ビジネス、エネルギー活用など、データ分析に基づいた都市計画の改革や整備にチャレンジできたら良いな、と思っています。

──本橋さんにとって、ビッグデータの分析とはどんなモノですか。

本橋:
 データ分析は、過去や現在の世の中を映し出す鏡だと思います。人間の仮説というのは、実際の状況と違っている場合が多いです。実際のデータを使って過去や現在の現象を数学的に解き明かすデータ分析は、世の中の本当の姿を正しく、ありのままに映してくれます。予測は当てることがもちろん大切ですが、当たらなかったとしても、そこには理由や意味があるので、その事実の中に有用な知識を見出すことができる、と思っています。

──余暇の過ごし方や趣味など、本橋さんの素顔を教えてください。

本橋:
 個人的には、テレビを観るのが好きです。ニュースやドキュメンタリー、バラエティ、スポーツ観戦など、いろいろな番組を観ます。空いた時間は、テレビの前にいることが多いですね。もちろん休日は妻のショッピングにつき合うなど、家族サービスも大切にしています。競馬も好きで、時々ですが馬券も買います。データ分析のプロであるにも関わらず、勘を頼りに穴狙いで馬券を買ってしまうことも多いです(笑)。テレビで野球観戦する時には、データ分析的な視点からも楽しんでいます。ピッチャーの球種や球速、投球数、バッターの得意なコース、2人の対戦成績など、公開されているデータをいろいろ集めて、自分自身でデータを加工し、分析しながら勝負の行方を予測します。これは、私なりの野球のディープな楽しみ方ですね。

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