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土砂災害の危険性を“見える化”する「土砂災害予兆検知システム」とは?

2017年07月20日

 気候変動により土砂災害や洪水などの自然災害リスクが高まっている。NECは独自のセンシング技術やビッグデータ技術などのICTを活用し、土砂災害の危険性を“見える化”する「土砂災害予兆検知システム」により、地域の安心・安全に貢献することを目指す。

 本システムは、NECが新たに開発したデータ解析技術を活用した世界初の手法(注1)により、斜面に設置したセンサーから得られる土砂に含まれる水分量データから、リアルタイムに斜面の危険性を把握し、崩壊の予兆を検知するものである。センサーデータにより土砂災害が発生する前から斜面の危険性を“見える化”するため、災害発生前における住民への連絡など、効果的な対策が可能になる。

(注1):平成26年11月18日NEC調べ

NECが開発した世界初の解析技術

 「土砂が崩れる」ということはどういうことか。たとえば、自分が斜面に立っていることを想像してみる。滑り落ちないように踏ん張っていても、斜面の勾配が急な場合や、地盤が緩い場合、どこかで耐えきれなくなって滑り落ちてしまうだろう。地盤の上に積もっている土砂においても同様である。

 通常は、斜面の土砂の浅い部分が、土砂の深い部分の上に乗って滑らずに耐えている。そこに大雨が降ると土が徐々に水を含んでいく。水分量が増えていくと土砂がゆるみ、上に乗っていた土砂が耐えられなくなり、ついに土砂斜面が崩壊する。

 この土砂に水分が入っていく過程で、変化していく土の性質を表わす「特徴量(パラメーター)」を計測し続ければ、斜面が崩壊する危険性が高まるタイミングを判断できるのではないかとNECは考えた。

 土砂の状態を示す指標は、土の重さを示す「土塊重量」、土のすき間に入ってきた水による圧力を表す「間隙水圧」、そして土の粘り気や強さを表す「粘着力」「内部摩擦角」の4つである。この4つの指標を斜面の安全性を評価するための計算式(斜面安定解析式)に当てはめ、斜面の「安全率」(注2)を算出する。その値が、あるしきい値を上回っていれば安全で、下回ると斜面が崩壊する危険が高まると判断される。

 しかし、従来この4つの指標を測定することは、コストも手間もかかり困難とされてきた。これを解決したのは、NECが開発した世界初のデータ解析技術である。

データ解析イメージ

 NECは、4つの指標を土砂の水分量のみから算出するデータ解析技術(注3)の開発に成功した。この解析技術を用いることで、センサーのモニタリング値から複数の解析値を算出、解析結果を「斜面安定解析式」に適用することにより、斜面の危険性を高精度に算出することを可能にした。

斜面崩壊実験時の安全率推移

 このように、水分量を計測し、土の特徴量を算出して、最終的に「安全率」を算出するまで行う土砂災害予兆検知のシステムは、現時点で他に存在しないと思われる。

(注2):土質力学のひとつである「斜面安定解析式」を用いて算出される、斜面の安全性の指標。
(注3):本技術は特許公開中 特願2016-543791

従来型の手法に比べ早期に土砂災害の予兆を把握

 従来、土砂災害の危険性は、主に「ワイヤーセンサー」や「土砂災害警戒情報」によって把握されていた。

 「ワイヤーセンサー」は、土砂災害発生時に土砂でワイヤーが切れたときに通知するもので、危険性の事前把握は不可能である。「土砂災害警戒情報」は、ある程度事前に危険を把握できるが、気象情報からのデータをもとにしているため、対象が広範囲となり、ピンポイントで監視したい斜面を観測することは難しい。

 これら従来型の監視手法に比べて、NECの「土砂災害予兆検知システム」は、監視したい斜面にセンサーを設置し、設定した降雨条件に合わせてデータを取得する。取得したデータを無線で中継局を経由して、データセンターに集約して解析を行い、安全率をリアルタイムに算出する。この結果をウェブサイト上に表示するため、利用者はサイトにアクセスし監視地図画面で斜面の状態を確認できるほか、あらかじめ設定したしきい値を超過した際はアラートメールにて通知を受けることも可能である。

設置箇所の「土」を持ち帰りデータ取得

 本システムの妥当性評価のため、NECは島根県・津和野町をはじめ国内外10か所以上の場所で実証実験を行っている。前述の4つの指標を計算するために、観測する設置箇所の土を大量に土木研究所に運び込んで実験を行い、それぞれの土のデータを取得し、それぞれの土の斜面に合わせた安全率の算出を実現した。その中で、2016年9月に安全率が崩壊のしきい値を下回り、同日中に斜面が崩壊するという結果が得られた。

 さらに、土木研究所、及び防災科学研究所において、人工降雨で実際に土砂崩れを発生させ、安全率が崩壊のしきい値を下回ってから数分~数十分で崩壊することを確認し、安全率算出の妥当性を確認した。

斜面崩壊実験風景(国立研究開発法人防災科学研究所)
斜面崩壊実験風景(国立研究開発法人土木研究所※)
※NEC単独で実験を実施

将来の災害発生の危険性推測も可能に

 「土砂災害予兆検知システム」を導入することで、土壌雨量指数や実効雨量(注4)のような指標ではなく、土中の水分量を直接モニタリングすることで、土砂災害発生の危険性を土中水分量に基づく「安全率」という指標で確認することが可能になる。また、予測雨量も合わせて表示されるので、利用者が将来の災害発生の危険性について推測することができる。

(注4):半減期等を考慮した計算で算出される土中に残存している雨量に相当する値。

 また、NECの防災情報システムや発令判断支援システムと連携することによって、土砂斜面の危険性や河川水位、監視カメラ映像など各種データの統合管理を実現し、迅速かつ的確な意思決定を支援する。今後も他の気象、災害シミュレーションシステムをはじめJアラート等各種システムとの連携を予定している。

 NECは、本ソリューションの活用により、迅速な避難勧告・指示の実現に貢献し、住民の避難時間や安全を従来以上に確保できるよう、さらにシステムの精度を上げていく。さらに、日本国内のみならず、土砂災害で被害を受けている世界の各地域に展開していく考えだ。

 [関連資料]実証実験の結果詳細を含む資料は以下よりダウンロードいただけます。

関連資料のダウンロードはこちら

本コンテンツは、2016年9月6日に掲載した記事の情報を更新し、再掲載しています。

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