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AI対談:稀代のアイデアマン×AI・ビッグデータ事業開発のリーダー

人の暮らしや繋がりをもっと楽しく面白くしたい――人の「想い」にAIはどう応えてくれるのか

2017年03月02日

 食べるスープの専門店「スープストックトーキョー」を創業し、その他セレクトリサイクルショップ「PASS THE BATON」などを展開するスマイルズ。その代表取締役社長を務める遠山 正道氏が目指しているのは「世の中の体温をあげる」こと――少しでも、毎日が楽しくなることに貢献できれば、人の生活が充実し、世の中もいい方向に変わっていく――そんな想いでビジネスを展開しているのです。「世の中ではこれが流行っている」からといってそれに飛びついては、目的を見失う。逆に「自分がやりたいからやっているんだ」という信念をしっかり持てば、自分事としてやり抜くことができる、というのが遠山氏の経営哲学です。

 また、遠山氏は稀代のアイデアマンとしても知られています。斬新な発想で新しい生活の在り方を提案する遠山氏は、AIにどのような可能性を感じているのでしょうか。遠山氏とAIを活用したソリューション開発に取り組むNECの中村 慎二が、AIの“今”と“未来”について語り合いました。

※スープストックトーキョー:スープを主役にし、ファストフードとして提案するスープ専門店。化学調味料や保存料に頼らず、素材本来のおいしさを活かした安心・安全なスープを提供している。

※PASS THE BATON:現代のセレクトリサイクルショップ。NEW RECYCLEをコンセプトに、個人から集めた想い出の品物や愛用していたけれど今は使わない品物を、持ち主の顔写真とプロフィール、品物にまつわるストーリーを添えて販売している。

AIを使って、深みのあるビジネスモデルを創ってみたい

遠山氏:
 今日はAIをテーマにした対談だと聞いて、実はちょっとしたアイデアを持ってきたんです。かなり妄想的ではあるのですが、まずはそこから始めさせてもらってもよいでしょうか。

株式会社スマイルズ 代表取締役社長
遠山 正道 氏

中村:
 この対談のために、アイデアを暖めてきてくれたんですね。ありがとうございます。ぜひ、聞かせて下さい。

遠山氏:
 そのアイデアというのは「PASS THE BATON Deep Closet」という新しいビジネスで、そこにAIを使ったら面白いものができるのではないかと思っているんです。これは今、スマイルズで運営しているセレクトリサイクルショップ「PASS THE BATON」をさらに発展させたもの。モノにフォーカスするのではなく、価値観やライフスタイルを基軸に人との交流を深めるサービスです。

 具体的には衣服や食器などを収納するクローゼットの中を全部スマホのカメラで撮影してWebにアップします。すると個人のクローゼットが仮想空間上でつながっていき、世界をまたいだ1つの大きなクローゼットになる。さらに自分の趣味・嗜好、モノへのこだわりやストーリーなどとともに、好みのコーディネートも自撮りしてアップしておくのです。

 ここからがAIの出番です。膨大なデータの中から自分の好みのものを見つけるのは大変ですが、AIを使えば、自分のコーディネートの写真を基に、似たような趣味・嗜好の人のコーディネートやクローゼットの中身を見られるわけです。そこから思ってもみない掘り出し物が見つかるかもしれない。あとは当人同士でモノの取引をしてもいいし、情報交換を楽しむだけでもいい。AIの力を借りれば、世界の異なる文化や環境の中にあっても同じような趣味・嗜好や価値観を持つ人とのマッチングの精度が高まり、深みのあるサービスになるでしょう。どうでしょうか。

中村:
 もちろん、実際のビジネスとなるとクリアしなければならないハードルはいろいろと出てくるのかも知れませんが、すでに事業の骨格はできていることに驚きました。NECでも、クローゼットの中にある衣服や食器などの認識に活用できるような「画像認識技術」や膨大なデータから自分の好みのものをコーディネートしていく「機械学習」など、多数のAI技術を有しています。これらの技術を使えば、今すぐにでも実現できそうなサービスですね。

NEC ビッグデータ戦略本部 本部長
中村 慎二

――やはり、斬新な発想を持っていらっしゃいますね。AIのビジネス活用という点で、ほかにもアイデアをお持ちですか。

遠山氏:
 「スープストックトーキョー」を取り巻く環境でも「こんなことができないか」と考えてみました。今はスープの種類によって値段が決まっていますが、お客様にお支払いいただく金額は必ずしも定価でなくてもいいのではないかというのが発端です。いわば「値段のオープン化」ですね。

 原材料の産地や流通経路、製法など、トレーサビリティを確認できるようにして、さらにお店の雰囲気や衛生度、店員の仕事ぶりや接客態度なども客観的な指標で見える化する。その価値を評価してその評価したポイント数がそのまま金額となってお支払いいただくというモデルです。

 お客様の値付けの基となる情報の収集や客観的な指標づくりは重要です。これを人が行うと主観や恣意的な感情が入り込む恐れがありますが、AIを使えば、そういうリスクを減らせます。いいものをきちんと提供すれば、お店も店員も評価してもらえるので、やりがいが高まる。お客様側も自分が下した評価がそのままその人自身の評価にもなっていく。すべてに正直な世界が構築される。

中村:
 いつでも同じ品質のものを提供することが定価モデルの基本的な考え方ですが、ある時あるタイミングでしか飲めないスープ、自分だけのスープなら価値はまったく変わってきますね。モノだけでなくコト(体験)を重視するお客様が集まってくるとコミュニティが形成され、モノにストーリーが加わってくる。お客様一人ひとり求めるものが違うから、客観的であることが非常に重要になります。AIの活躍の場は十分にあると思います。

 値段のオープン化とは少し趣旨が異なりますが、昨年11月にスナック菓子の「うまい棒」とコラボして、味の好みとは一見関係のないような5つの質問に答えると、回答者の好きなうまい棒の味を予測するというサービスを行い、好評を博しました。回答データが蓄積されていけば、統計的な傾向も見えてくるので、店舗側はマーケティングツールとしても使えます。

遠山氏:
 そんなことができるのですか。それも面白い。お客様の特性を聞いて、好みのスープを提案する。「スープストックトーキョー」でもアレンジすれば使えるかもしれませんね。

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