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AIがスーパーマーケットの業務を自動化する!
──需要予測とマーケティングにおけるAI活用の実証実験

2017年06月08日

 この数年、AIが人の職業を奪うという予測がネガティブに語られてきた。しかし実際には、AIが人の作業をサポートすることで、生産性が大きく向上し、ビジネスが効率化することがさまざまな業界の取り組みで明らかになってきている。スーパーマーケットの業界団体である一般社団法人日本スーパーマーケット協会は、人手不足の悩みをAI活用によって解決しようとしている。同協会とNECによる実証実験をレポートしながら、スーパーマーケットの現場におけるAI活用の可能性を探る。

スーパーマーケットの課題は人手不足と「独自化」

 人口減による人手不足の影響が、現在あらゆる産業に及んでいる。物流などと並んで、とりわけその影響を強く被っているのが、小売り・流通業界だ。スーパーマーケット89社が加盟する一般社団法人日本スーパーマーケット協会(JSA)の川野幸夫会長は話す。

一般社団法人 日本スーパーマーケット協会 会長
株式会社ヤオコー 代表取締役会長
川野 幸夫氏

 「スーパーマーケットは労働集約型、つまり、人の手で行わなければならない作業が数多くある業態です。近年の人手不足によって、一人一人の従業員の負荷が非常に増えています。従来は店内で行っていた食品加工の作業をセンターに移すなど、さまざまな工夫はしているものの、依然として現場の負荷が大きいのが現状です」

 スーパーマーケットが抱える悩みはそれだけではない。顧客のライフスタイルやニーズの多様化への対応もまた大きな課題だ。

 「以前のスーパーマーケットは、何でも揃う“万屋(よろずや)”であればよかったのですが、それではお客さまに支持されない時代になっています。この店の特徴は何か、この店でしか買えないものは何か、この店ではどんな体験ができるか──。そういった店の個性をお客さまは求めるようになっています。お客さまの要望を踏まえながら、店のアイデンティティーを明確にしていく“独自化”が求められているのです」

 川野氏によれば、「独自化」はますます激化する競争環境を生き抜くための方策でもある。スーパーマーケットの主要な商材は食品だが、少子化により食品を必要とする人口は少なくなり、高齢化により人々の胃袋は小さくなる。結果、日本の「食」のビジネスの規模は今後どんどん縮小していくことになる。一方で、コンビニエンスストアはもとより、ドラッグストア、ホームセンター、ECといった他業態が食品に力を入れることで、競争はいっそう激しくなっている。シュリンクするマーケットで、いかに競合との差別化を図っていくか。その方法が各店舗の「独自化」ということだ。

AIが需要を予測し、商品を自動発注する

 それらの課題を解決する強力なツールとして期待されているのがAIである。同協会は一昨年、2025年に向けたスーパーマーケット業界の課題と展望をまとめた「シナリオ2025」を発表するのと同時に「ロボット・AI研究会」を立ち上げ、店舗現場におけるAI活用の検討を始めた。その一環として昨年10月に実施されたのが、NEC独自の「異種混合学習技術」を用いた需要予測の実証実験だった。

 「人手不足の問題を解決するには、現場の作業をロボットやAIに委ねていくことが必要です。品出しなどの作業をロボット化するにはまだハードルがありますが、商品の発注はAIを使えば、これまでよりも精度の高いレベルで自動化できるのではないかと私たちは考えました」

 そう説明するのは、JSA事務局長の江口法生氏だ。従来は、現場のスタッフが前週の実績などを見ながら、売れ行きをある程度予測して商品を発注していた。欠品や過剰在庫を防ぐのは、そのスタッフの経験値だった。AIが発注作業を担うことができれば、現場の労働負荷が減るだけでなく、属人的な経験値に依存しないモデルを作れるかもしれない──。

一般社団法人 日本スーパーマーケット協会
理事 事務局長
江口 法生氏

 「この実験に使ったのは、過去の計16カ月分のデータでした。まず、13カ月分のデータをAIに学習させ、それをもとにその後3カ月間の需要予測を立てさせ、それを実際の売れ行きと比較するという方法です」

 東京都内の「クイーンズ伊勢丹」2店舗で行われたこの実験をサポートしたNEC産業ソリューション事業部の安田智は、そう説明する。

 「活用したのは、売り上げ、客数のほか、曜日、週、イベント情報、気象といったデータです。それらのデータから読み取ることのできる規則性は一種類だけではありません。異なる種類のデータをもとにいくつかの予測式と条件を自動的に作り、そこから高精度の予測結果を導き出す。その異種混合学習技術の仕組みをこの実験で用いました」

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