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「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2019」レポート
デジタルビジネスを成功に導く!クラウド活用、次の一手
「デジタルビジネスを加速したいが、社内にクラウドが乱立して事業のリスクが増している」「既存のレガシーシステムが、新規ビジネスの足かせだ」――。企業/公共団体の関心がDX(デジタルトランスフォーメーション※1)へと向かう中、ICTのあり方やシステム運用の手法をどう変えていくべきなのかが、いま大きなテーマとなっています。
こうした潮流を踏まえて、NECは2019年11月に東京国際フォーラムで開催した「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2019」において、「デジタルビジネスを成功に導く!クラウド活用、次の一手」と題したセミナーを開催。企業が取り組んだDXへのアプローチ事例を交えながら、クラウド活用の具体的な要点を解説しました。
- ※1 :DX(デジタルトランスフォーメーション)…「リアルとサイバーをつなぎ合わせる情報技術で新たな価値を創造し、経済や生活をより良い方向に変えていく」という概念。
DXを推進するための、2つのアプローチ
本セミナーではNEC サービスプラットフォーム事業部 事業部長 上坂利文が登壇。冒頭で上坂は、年間15~20%ものペースで成長している国内DX市場に触れながら、NECが取り組むDXの概念と、お客さま・パートナーさまとの共創によって目指している未来社会の姿を提示しました。続いて、DXを構成するIoT、Mobile、AIなどの技術要素を稼働させるためには、柔軟性や拡張性に優れるクラウドを活用することが最適であることを説明しました。
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「企業がDXを推進するねらいは、新たな価値と新たな収益源、および成長の創出。その方法としては、既存ビジネスの”深化(高度化や価値の拡大)”によるDXと、新規ビジネスの”創出”によるDXという、二つのアプローチがあります」と、上坂は説明します。
既存ビジネスを”深化”させる方法によって得られるメリットは、既存事業が生み出す付加価値の拡大と、レガシーシステムの刷新によるTCOの削減などです。ただし、約8割もの企業で稼働中のレガシーシステムは複雑化・ブラックボックス化が顕著になっており、COBOLなど汎用機系エンジニアの高齢化問題にも直面しています。つまりクラウドを活用したリフト&シフト※2を推進するうえで、企業のCIO/CDO※3はこのような課題を「足かせだ」と感じているのが実態です。
一方、新規ビジネスの”創出”によるDXというアプローチは、ビジネスモデルの変革や新たなマーケットの開拓によって、トップラインを拡大していく企業戦略にも合致したものです。このアプローチには、柔軟性と拡張性、および構築スピードを確保できるクラウドネイティブなシステムを活用していく必要があります。反面、企業の各事業部門ですでにクラウドが乱立しており、マルチクラウド環境の複雑化によるセキュリティリスク・コンプライアンスリスクが増大しているというケースも、かなり見受けられます。
- ※2 :リフト&シフト・・・既存のオンプレミスによる情報システム基盤をまずクラウドに上げて(Lift)、その後、クラウドに適した環境へと進化させていく(Shift)手法のこと。
- ※3 :CDO・・・Chief Digital Officer
事例に見る、DX推進の実際
上坂はこうした課題を念頭に入れて、企業がクラウド基盤を取り込みながらDXを推進した4つの事例を紹介しました。ひとつ目は、個別ホスティングで運用していたオンプレミスの集配信システムを”深化”させ、クラウドへリニューアルした製造業A社様のケースです。繁忙期・閑散期に応じて、システムリソースを柔軟に増減できるようになり、顕著なTCO削減効果が得られています。ふたつ目のDX事例では、店舗とECサイトごとに閉じていた業務システムを撤廃し、リフト&シフトで連携させたことで、売上高や在庫をリアルタイムで管理できるしくみを構築した、流通業B社様のエピソードに言及しました。B社様では個々の業務領域をマイクロサービス化し、店舗とECで共通化したプラットフォームを構築。在庫・オーダーの統合を実現したことにより、店舗・EC 間でリアルタイムにデータが共有でき、ストレスの少ない商品購入・受取りが可能になるなど、利用者の利便性向上を実現しました。
続いて「新規ビジネスの”創出”によるDX」事例として、家電メーカーC社様の取り組みをピックアップ。IoT基盤をクラウド上に構築し、顧客に販売したIoT家電から、製品の利用状況・メンテナンスに関するデータを常時収集して、事業強化に活用するというDXモデルです。「C社様はこうして収集したデータを、品質向上やOne to Oneマーケティングに活かす、新しいサービスモデルを開発されました。従来のモノ売りに加えて、コト売りによる付加価値の提供に成功された例です」と、上坂は補足します。
四つ目に取り上げたDX事例は、NEC社内で取り組んだ、リーン・スタートアップ※4による新規ビジネスの創出プロセスです。街角でたびたび見かけるようになったデジタルサイネージを、職場での情報共有媒体として用いる「オフィスサイネージ」。NECでは、DXを手軽に始められるモデルケースとして、このオフィスサイネージを活用したビジネスの創出に着手しました。「きっかけは、じつは社内の”トイレ難民”問題でした。各階・各所に設置しているトイレに人感センサーを取り付け、それらの混雑状況をオフィスサイネージで見える化しました。従業員満足度が向上したことから、現在ではNECの全ての事業拠点に、このサイネージを展開しています。その結果、お客さまからの引き合いも増えており、DXによるビジネス創出のわかりやすいモデルとして、社内では認知されています」と、上坂は明かします。
- ※4 :リーン・スタートアップ・・・新規事業などを、ムダを少なくしながら迅速に立ち上げるためのマネジメント手法。
DX開発・運用の総合的な支援体制と、最新の国際規格に準拠したセキュリティ
セミナーの後半では、DX推進を支えるNECの取り組みをご紹介しました。
まず、クラウドの乱立という課題に対して、NECではマルチクラウド/ハイブリッドクラウド環境をシングルウインドウで提供するトータルなサポートを実施しています。「たとえば、『フロントシステムはメガクラウドで、個人情報を取り扱うシステムはNEC Cloud IaaSで』といったご利用形態が多く、各々の構築支援・運用支援チームや問い合わせ窓口は弊社で一本化し、マネジメントしています」と、上坂は述べます。
安心・安全なクラウドサービスを提供する要になるのが、データセンターです。NECでは現在、全国に約60カ所、総マシンフロア面積 約64,000m²のデータセンターを展開しています。中でも神奈川・神戸の2カ所を『フラグシップデータセンター』と位置づけ、クラウドとハウジングのハイブリッド環境を提供しています。2019年4月には、名古屋駅からアクセス15分圏内という利便性の高い場所に「NEC名古屋データセンター」を開設。全国のデータセンターとお客さまの事業所を専用線で接続し、DXを安全かつ堅牢な環境で推進できる手段を提供しています。
データセンターのセキュリティ認証については、金融機関に求められるFISC安全対策基準はもとより、国際標準であるNIST (米国標準技術研究所)SP800-171へも対応しています。
続いて上坂は、お客さまのサービス事業の早期立ち上げを支援する「サービス化設計支援」、サービス共通業務に必要な機能を米国のSaaSであるZuoraを一部活用して提供する「ビジネス基盤サービス」、さる11月1日にプレス発表を行った「コンテナ活用を加速する国内初のマネージドサービス」などを紹介しました。これまでのサービス事業で培った知見を活かし、お客さまの新規ビジネスへの取り組みを支援します。
上図は、DXを推進する一連のプロセスをトータルで支援するために、NEC側であらかじめ用意しているDXプラットフォームです。「ほとんどのクラウド事業者は、この図の中の[L5]の部分のみをカバーしています。一方でNECは[L4]以下の部分、つまりエッジゲートウェイやセンサーデバイスを含むend to endで、DX推進のためのアジャイルな開発・運用を支援しています。たとえば現在、クラウドシステムが攻撃されるケースで最も多いのは、エッジゲートウェイ経路によるアタックです。この部分のセキュリティも含めた防御のしくみをご用意できるのも、NECの特長となっています」。上坂はこのように、当社プラットフォームの優位点を強調します。
また、今後の事業拡大によって生じる、運用管理の複雑化という課題を支援する取り組みとして、NECではグローバル標準ツールを採用した、マルチクラウド環境のマネージドクラウドサービスも強化していきます。「IT専門調査会社のIDC※5によるレポートでも、ハイブリッド/マルチクラウドへのいち早い対応、ライフサイクルを通じた顧客支援やパートナー連携の強化などが評価され、国内市場における『リーダー』にも選出されている」と上坂は強調します。
- ※5 :IDC MarketScape: Japan Managed Cloud Services 2018 Vendor Assessment(2019年2月)
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NECはこれからも、多様化するクラウド活用ニーズに対応し、お客さまの経営計画/事業戦略を共に実現するパートナーとして、DX推進体制をさらに強化していきます。