2015年09月11日
日本企業必見!興隆アジアの新ビジネス事情
タイ進出の前に知っておきたい「ビジネス習慣10選」
約120年にも亘り、日本との外交関係が築かれている「タイ」。ビジネスにおいても両国の関係は深く、タイに進出する日系企業が会員のバンコク日本人商工会議所は、2014年には設立60周年を迎え、2015年4月時点で登録社数は1618社におよび、タイに進出する日系企業はますます増えています。本シリーズでは、インターネットで調べただけでは知り得ない、しかし進出する前に知っておきたい、現地ならではの「ビジネス習慣」を、現地で活躍する日本人ビジネスパーソンへの取材を交えてご紹介します。
今回お話を伺ったのは、タイ人向け化粧品のメディアコマースネットワークSaroop.netを運営するBuzzCommerceの若井伸介さん、同じくタイ人向けに人材系のウェブプラットフォームを運営するTalentExの越陽二郎さん、ASEAN最大の電子書籍アプリとコラボレートしたECサイトを運営するOokbeeMallの木村麗蘭さんです。
現地で長年ビジネスに携わる多くの経営者は、「タイでビジネスを始める魅力は、東南アジア周辺国と比較して、オペレーションレベルとインフラレベルが非常に高いこと」と語っています。また、日系企業が多く進出しているため、事業ノウハウの蓄積があることも魅力のひとつです。政情不安などのリスクを抱えつつも、サービス産業にとっては低コストで質の高いオペレーションが可能。その他にも、英語圏とは異なる言語環境のため、ユーザーや従業員のふるまいが日本に近しいといった魅力もあるそうです。

「仕事の関係づくり」編
1.タイ人のプライドの高さをケアする
「タイ人は日本人と比べてもプライドがすごく高いように感じます。それは「自分の仕事に対するプライド」と言う面もありますが、それよりも「自分のメンツをつぶされたくないがゆえのプライド」というものも見受けられます。なので、スタッフが仕事中になにかミスをしたとしても、それをほかのスタッフの前ですぐに注意するのではなく、個別でミーティングを設定し、同僚のいないところで「直接、ゆっくりと」指摘するようにしています。こういう配慮を積み重ねることで、彼らの考え方が理解でき、またスタッフも日本人上司の考え方を少しずつ吸収してくれます」(若井さん)
2.タイ語を使うことを社内の日課にする
「タイ語を覚え、タイの文化を受け入れようとしている姿勢を示すことが大切です。コツとしてはタイ語のレッスンを受けて、上達していることを社員に示す場を定期的かつ自然につくることですね。たとえば、全社の朝会をタイ語で始めるなど。すると「そんなことまでタイ語で言えるようになったの!」と距離が縮まりますし、アウトプットの場を明確に設けることで自分の学習の後押しにもなります」(越さん)
3.相手にとことん歩み寄る
「ひととしての違いや共通点を見つけ、同僚や部下ではなく、まずは友人として関係を築きましょう。そのためには、国籍の壁を意識しない心構えや、一人ひとりと話して悩みを聞いたり、その解決策を一緒に探そうとする姿勢が大切です。「タイ人はホウレンソウ(報告・連絡・相談)をしない!」と言われますが、「このひとなら話を聞いてくれる」と思ったら、よく相談してくれます。また、その重要性をしっかりと伝えれば、連絡や報告もしてくれます」(木村さん)
相手に歩み寄る上で「LINE」を使うのも有効でしょう。タイ人は仕事のコミュニケーションツールにLINEを使うことが多いです。年輩の上司にスタンプを使ってくることもざらにあります。日本では考えられないかもしれませんが、そこはタイ人の人懐っこく、人見知りしない国民性だと受け止め、こちらも親しみを込めてタイ語のスタンプを使います。そうすると、より深いコミュニケーションができるようになります。
「部下・パートナー企業のマネジメント」編
4.ミスマッチを起こさないよう採用前の対面の機会を大切に
「社員が入社初日、入社前日で辞めるということは日常茶飯事です。しかも理由が「思ったより家から遠かったから」「思っていた仕事や会社の雰囲気と違ったから」など、日本では考えられないことも多くあります。採用する前には最低3回は会って話し、そのうち1回は営業時間中に会社に来てもらうなどして、おたがいのミスマッチを防ぎましょう」(越さん)
5.家族や両親との関係を把握した上でのキャリア設計をする
「仕事の昇進は必ずしもタイ人の社員の望むところではないケースもあります。仏教国であるタイでは家族、特に両親への孝行を何よりも大切にします。そのため、仕事ができて、 ときにはまわりのスタッフの仕事を手伝ってあげるなど、リーダーとしての資質がある優秀な社員がいたとしても、すぐに「マネジャーに昇進させてチームを強化したい」と考えるのは早とちりとなる可能性があります。「仕事の責任が大きくなりはたらく時間が長くなったことで、家族と過ごす時間が減ってしまった。給料は上がらなくてもいいから私に責任を与えないで。定時に帰れる仕事を望みます」と、役職を与え給与を倍にしても、その後すぐに辞めてしまうことがあるのです。ただし、留学経験があったり、都会育ちのタイ人の中にはキャリア志向が強いひともいるので、社員一人ひとりとコミュニケーションをしっかり取り、彼らが望むキャリアパスを尋ねる機会をつくることが大事です」(若井さん)
6.最悪の場合を想定させる機会をつくる
「タイ人と仕事をしていて驚くのは、バックアッププランを用意していない場合があることです。これは日本でもあることですが、そのような状況に遭遇する場面が多くて驚きます。対策として「もしこういうことが起こったらどうしよう?」と、とにかくしつこく質問し、確認すること。言語が異なることも踏まえ、確認は口頭だけでなく図を描いたり、結果を画面で見せてもらうなど、自分の目で「見る」ことを心がけています」(木村さん)
