2015年10月30日
日本企業必見!興隆アジアの新ビジネス事情
インドネシア進出の前に知っておきたい「ビジネス習慣10選」
「会社設立・ビザ取得など手続き」編
6.就労ビザの取得手続きには余裕を持っておくこと
「役所業務に関しては、期待値を下げてストレスをためないことが大事だと思います。
例えば、日本人の就労ビザの審査は、最近は通常3ヶ月程度かかります。現在弊社で申請中のビザに関しては、手続き中でしたが移民局のデータが消えたという理由で進捗が1ヶ月程度遅れ、合計4ヶ月程度かかりそうです。エクスプレスというビザを早期発行できるプランを持っているエージェントに頼めば所要期間を短縮することもできるようですが、あまり期待せずに余裕を持って早め早めの申請を行うことをオススメします」(加藤さん)
7.信頼のおけるエージェントを見つけておく
「エージェントは非正規・臨時などさまざまな形態があるので、怪しいひととは付き合わず、きちんと知識がある、信頼のおけるエージェントと付き合うようにしてください。なお、必要な手続きのすべてを1から自力で理解しようとするのは、重要ではあるのですがかなり骨の折れる作業です」(辻さん)
「施行される規程と役所での運用の実態がかい離しており、規程が施行されてもその内容を役人が知らないことが多々あります。現場での運用フローが完成されていないままに新たな規程が施行されるため、半年ほどかけて試行錯誤しながら、規程の内容に運用の実態を合わせていくというのがインドネシアの労働相やイミグレーションなど役所の特徴です。また、運用フローが確定するまでは、それに何度も変更が加えられ、先週できたことが今週はできなくなったということが日常的に起こります。役所のウェブシステムは、日本で言うβ版でリリースされ、告知なく随時変更が行われ、1週間に何度もシステムダウンが起きます。対処方法は、信頼できる専門エージェントに依頼をし、その状況を随時共有してもらうことです」(中嶋さん)

「各業界の特徴や日本との違い」編
8.ウェブメディア業界:ビジネスの収益化は未だ困難
「インドネシアではウェブメディアのビジネスがまだまだ利益体質になっていません。私がインドネシアにやってきたのが2012年5月で、3年後の2015年にはウェブメディアはビジネスとして大成しているという見解が多かったのですが、3年以上経ってもまだ「2~3年後には」というような話を聞きます。このまま誰も利益を生まない体質が続くと、当然投資家の熱も下がり、資金がインドなど注目を浴びる別の国に向かう可能性があります。その場合、現在大型調達をしている複数の企業同士が利益を出せないまま、長い時間をかけてゆっくりと淘汰されていく可能性があり、かつ、その長い時間軸の中で技術やコンセプトが進化し、新たなチャレンジャーが入り組むことにより、プレイヤーの「勝率」と「勝者の旨み」の小さいマーケットになり得るリスクを孕んでいるように思います」(加藤さん)
9.家電業界:高額な輸入品も信用ならない
「インターネット業界は成功事例が少ないため、参入者は良くも悪くも全員チャレンジステージにいます。多くがピボットを繰り返しながら試行錯誤しています。ネットの家電販売市場の特徴としては、正規品であってもeコマースサイトで買うよりも、ショッピングモールの中の店と交渉して買った方が、かなりの確率で安いです。製品に関しては、たとえ同じ商品であってもアメリカ、香港、シンガポールなど、流通元の違いで保証や価格もそれぞれ異なります。また、ほとんどの高額商品が輸入品で、政府はその部品の国内製造比率を引き上げるのに必死です。どんな商品だろうが、店頭で開けて動作確認をしてからお金を払うようにしましょう。たとえ見知っているメーカーの商品だとしても万全を期す必要があります」(辻さん)
10.人材業界:ジョブホッピングが普通
「ウェブ業界で言うと、みんながお互いに知り合いで、情報交換を活発にしています。日本だと競合企業のひとと直接話す機会は少ないと思いますが、こちらでは交流の場がたくさんあり、そこで話す機会がたくさんあります。また、業界内でのジョブホッピングの激しさも、日本とはまったく異なります。転職するたびに給料が1.3~1.5倍になるのが普通で、2年未満で転職してしまうひとがとても多いです。雇用する側としては非常に頭を悩ませる課題です」(中嶋さん)

番外編「政府の外資規制・緩和の現実」
インドネシアはジョコ・ウィドド大統領の就任以降、外資を誘致するために規制緩和に積極的になったと言われますが、実際はどうなのでしょうか。
「投資を呼び込みたいが売上は内資企業に落としたいという、ある種真っ当な政府の思惑と、そこに利権等が絡んだ不適切な思惑が加わり、非常に動きが激しい状態です。特に現在、新しい政権が発足したことで、さまざまな方面で利権との綱引きが複雑に行われています。外資企業の誘致の方針についても、会社設立や外国人に対する就労ビザの取得の厳しさなど、外資企業から見ると不安になるような問題も上がっています。そのため、予期せぬこと、理解に苦しむことも多く起きていますが、幸いにも現在のジョコ・ウィドド大統領は民間から生まれ、不義・不正をつぶしていく動きを取っています。もちろん従来の文化からすぐに脱することは簡単ではないと思いますが、着実に進歩しているように思えます。そういった方針の大統領が民意で選ばれたことは、インドネシアの今後の可能性を広げることになったのではないかと思います」(加藤さん)
「狭義のeコマース市場は規制強化の傾向にあります。例えば、今は外資系企業はeコマース市場に参入できません。また、ウェブポータルやコンサルティングといった分野での登記も難しくなってきています。ただし、慣例としてこうした規制は過去に遡及しないので、参入するなら急いだ方が良いでしょう」(辻さん)
最近、筆者は首都ジャカルタを訪れた。インドネシアは他の東南アジア諸国とは異なる独特の熱気を感じた。滞在した際に驚いたのは、市街地にあるカフェやレストランの値段が日本とそこまで変わらないにも関わらず、多くのインドネシア人で賑わっていたこと。高級ブランドが多数出店している富裕層向けのデパートも多く、プラザスナヤンと呼ばれる高級ショッピングモールにはそごうも入っており、日本食も販売されていた。また、2015年5月30日にはイオンがインドネシア1号店を出店するなど、国民の所得と消費意欲の高さが伺えた。
インドネシアでのビジネスにおいては、明確なルールが設けられていないことも多々ある。だからこそ、チャンスもリスクも大きい。進出する際は十分なリスクヘッジが必要だが、そのために現地にすでに進出している企業やそこで働くひとから正確な情報を得ること、また政府が発表する情報に対してアンテナを張っておくことが鍵となるでしょう。
(編集協力:岡徳之)