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2015年12月11日

日本企業必見!興隆アジアの新ビジネス事情

インド進出の前に知っておきたい「ビジネス習慣10選」

「思いもよらないトラブル」編

8.日本では数ヶ月の手続きもインドでは10年…

 「インドにおける知的財産権(知財)の取得には、先進国に比べて非常に時間を要す場合があります。例えば、日本では特許について早期審査制度を活用すれば、数ヶ月で取得できますが、インドでは少なくとも6〜9年かかります。よって、会社における確固たる知財戦略確立が非常に重要です。会社の都合により急に知財が必要になっても、知財先進国であればすぐに対応可能なことがインドでは不可能です」(奥さん)

9.会社設立にも長めに設定した以上の時間がかかる

 「会社設立に半年、雇用ビザ取得に3ヶ月かかりました。ビザ取得に際して役所に2度も呼び出しをされてしまい大変でした。ビザ取得までの道のりは容易くはなく、友人の中にはインド渡航を諦める人もいます。しかし、郷にいれば郷に従う。心に余裕を持つことが、インドでビジネスを展開していく1つのコツかもしれません」(奥さん)

10.インドは「かなりしたたかだ」と思わせる面も多い!

 「(自分の経験はではないですが)工場用地の手配がすごく大変です。土地を売った農民が、数年後に売った値段が安すぎたと裁判所に訴えたことがあるそうです。裁判所もこれを正当化し、さらに政府土地公社もそれに応じて買い手に通知もしないまま農民に差額を払い、最後は政府土地公社が進出企業に1ヶ月以内に同額を払わなければ追い出すと脅しをかけてきたという話を聞きました」(中さん)

 「現地でのブランドや商品認知を確立するための広告宣伝は非常に重要。そのため、商品と同様に会社やロゴの認知向上も図っています。しかし、これに対しインド国税局としては、会社やブランド、またそれらのロゴの所有者は日本の親会社であり、インド子会社が費用を負担するのは不適切だと主張。会社やロゴの広告宣伝費は損金として認めないと法人税の嵩上げを主張され、こちらも応訴するので税務訴訟となりました。折り合いはつかず、毎度同じ主張が国税局から繰り返され、どちらが負けても控訴するので、訴訟案件は日を増すごとに増えています。どの会社もしばらくはこういった係争案件を抱えるでしょう」(中さん)

カシオのインド法人社長である中正男さん

編集後記:まだまだパイオニアになれるインド市場

 いかがでしたか。これまでご紹介したベトナム、タイ、インドネシアに輪をかけて苦労する場面が多くありそうですが、それでもインドはチャンスに満ち溢れていると言ってよいでしょう。日本の10倍ほどの人口規模がありながら、未開拓の市場が多いからです。例えば、二宮さんによると保険業の外資規制緩和により、12億人の人口に対し保険加入(浸透)率がたった3パーセント台という市場に、外資系企業から大量の資金が投じられているのだとか。

 しかし、外資規制の緩急は業界によりけり。奥さんによると、小売業界ではマルチブランドを扱う外資系企業の進出に対する認可がおりず、文具一つ買うにしても買う場所に悩むこともあるそうです。進出を検討する企業は、そのための情報収集や事前準備を早めに進めておくのがよいでしょう。

 筆者も米シリコンバレーの近くで育ったこともあり、幼い頃からインド出身の人たちとの付き合いがありました。奥さんがインド人の時間感覚を「ルーズ」ではなく「寛容」という言葉で表現していましたが、たしかに納得します。そして、「物腰穏やか」「笑顔」「とにかく優秀」という印象を、今でも抱いています。

 今から30年以上前になりますが、筆者の父は商社勤務時代にインドに5年間駐在した経験があります。父はよくインド人の口癖は「No problem」だと言っていました。どう考えても一大事のときでも平気でそう言うそうです。「起きてしまったことは仕方がない。今できるベストをすればいい」とよく言われたんだとか。何もかもが遅れるので当然納期が間に合わず、日本の本社から怒鳴りの電話がかかってきた際は、インドの電波事情のせいにして電話の回線を引き抜いていたエピソードは家族の笑い話です。

 父はよく「インドに行くと人生が変わる」とも言っていました。近年では「インドビジネスの最大のリスクは、進出しないことによる機会損失」だとも言われています。日本とは別次元のまったく環境が異なるインドでのビジネス経験が、これから世界のしたたかさと戦っていくための寛容さを身につけるのに役立つのかもしれません。

(編集協力:岡徳之)

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