2016年08月19日
日本企業必見!興隆アジアの新ビジネス事情
フィリピン進出の前に知っておきたい「ビジネス習慣10選」
インターネットで調べただけでは知り得ない、しかし進出する前に知っておきたい現地ならではの「ビジネス習慣」を、現地で活躍する日本人ビジネスパーソンへの取材を交えてご紹介する本シリーズ。今回は、フィリピン進出の際に必要なビジネス習慣10箇条をご紹介します。
2014年に人口が1億人を超えたフィリピン。若年層が多く、今後経済が著しく伸びる可能性を秘めている市場です。
HSBCのレポート「The World in 2050」では、2050年にフィリピンの経済規模が世界16位になると予想。13位が韓国、14位がスペイン、15位がロシアと、2050年には現在先進国と言われている国に並ぶ経済規模になるようです。
そんなフィリピンの可能性を見出し、すでに進出している日本企業も多く、外務省の「海外在留邦人数調査統計」によると、2015年10月時点の日系進出企業数は1521社で、前年比で20.7%(261社)増えていると言います。
フィリピン国内に200以上あるとされる経済特区では、外資優遇制度が受けられるということもあり、今後もますます日本からの進出企業は増えることが考えられます。
日本からの赴任、転職、起業など、さまざま形でフィリピンでビジネスをする機会も増えるかもしれません。そんなときに知っておきたいフィリピンの商習慣や暮らしに関するティップスを現地で活躍する日本人ビジネスパーソンから教えてもらいました。
今回お話を伺ったのは、スマートフォン向けゲーム・アプリの開発を行うKLab株式会社のフィリピン現地法人代表の野口太郎さん、リクルートグループの海外教育事業 Quipperフィリピンのカントリーマネジャー 直鳥裕樹さん、同じくリクルートグループの海外旅行事業 Travelbookのゼネラルマネジャー 中澤匠さんの3名です。
交通、オフィス:日本の常識が通用しない「インフラ」編
1. 通勤時間往復4時間以上は普通。スコールの時期には注意が必要
「フィリピンは日本に比べ交通インフラが整っていないので、往復の通勤時間が4時間以上というひともめずらしくないです。今(7月)は特に雨季なので、道路の浸水などで帰宅に5~6時間かかってしまうという従業員もいて、15時とか16時に帰宅したいと言われることもありますね。その場合はやむを得ず帰宅させることにしています」(直鳥さん)
2. フィリピンでは新築ビルは避けるべし
「『フィリピンでは新築ビルは避けろ』と言われています。新築ビルは雨漏り・停電などが必ずと言っていいほど起こります。停電時の自家発電システムが作動しないということもあります。こういう問題が起こってもビル業者は対応してくれないので、自分たちでなんとかしなくてはならない。なので築2~3年くらいのビルだと、前のテナントが自分たちで雨漏りや停電対策をしていて、新築よりも信頼できる状態になっていることが多いんですよ」(野口さん)
3. 祝日が数日前に決定されることが年に5~6回
「国民の祝日がいきなり決まるのがフィリピンです。つい先日、7月8日(水)が祝日になったのですが、その日を祝日にすると発表されたのが2日前なんですよ。こうなると、その日のスケジュールはすべてキャンセルになります。こういうことが年に5~6回くらいあります」(中澤さん)
ペナルティ文化と企業間契約に注意:「商習慣」編
4. 従業員が出した損害は従業員が給与から支払う「ペナルティ文化」
「フィリピンには、従業員がミスをすると、その損害分を給与から天引きするペナルティ文化があります。以前、従業員がホテルとのやり取りで、間違った価格を設定してしまって、損害分約2000ペソ(約4500円)をその従業員が給与から支払うということがありました。給与水準が2万~3万ペソ(約4万5000~約6万7000円)なので、少なくない額です。今は業務上のミスはマネジメントに責任があるとして、従業員が支払うという制度はなくしました」(中澤さん)
5. 企業間トラブルを想定し契約書レビューは慎重に
「従業員のミスで被った損害は、その従業員の給与から天引きするペナルティ文化があるのがフィリピン。当社では行っていませんが、取引相手との間でどちら側に過失があるのかということでもめることがあります。こうしたトラブルを避けるためにも、取引先との契約書には、さまざま状況を想定して、対処方法などをしっかりと明記しておく必要があります。そのため、契約書のレビューには時間をかけたほうが良いですね。感覚的には、契約書関連のやり取りは、日本の2~3倍くらいかかると考えたほうが良いと思います」(中澤さん)