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2017年02月23日

AFP通信ニュースで世界の「今」を読み解く

教育改革最前線!AI時代の子どもたちに必要なものとは何か

未来を担う子どもたちに必要なのはSTEM+A=STEAM

 Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字を合わせたSTEM教育という言葉は、オバマ大統領時代のアメリカで教育や移民問題を論じる政策提案の中で用いられ、世界的に注目されるようになった。これらの科目に精通した人材の継続的な育成がIoTやビッグデータの進化に適応するのに不可欠であり、国家経済の興亡に関わる重大ごとであるのは、我が国でも同様である。文部科学省が取り組んできた学習指導要領の見直し、入試制度やセンター試験の改革、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)、国際科学技術コンテスト(国際科学オリンピック)、科学の甲子園、グローバルサイエンスキャンパス(GSC)、次世代科学者育成プログラム、中高生の科学研究実践活動推進プログラムなどがその現れと言える。

 ただ、STEMだけ勉強すればいいというわけではない。文部科学副大臣を2期務め、上記の取り組みの大半で重要な役割を担ってきた、現在も文部科学大臣補佐官である鈴木寛教授(東京大学、慶応義塾大学)は、『AI時代の人生戦略「STEAM」が最強の武器である』(SB新書)の中で成毛眞氏との対談において、AIが人間の能力を超える「シンギュラリティー」以降、人間の仕事として残るのは「善と美」だと仮定し、そこで必要なのはSTEMにA(アート)を追加したSTEAM教育だと言っている。

 女子美術大学付属高等学校・中学校紀要35集(2015)に掲載された並木憲明教諭による「「造形教育の九九」をめざして(2)教育実践研究の今(アクティブラーニング)と、これから」の冒頭にキーワードとして提示されている「白紙の脅迫」という言葉にハッとした。「さあ、あなたのいちばん心地良いと感じる風景を自由に描きましょう。上手でなくてもよいのです、自由に発想し(考え)て、たくさんの色を使って描いてみましょう。」こう言われて白紙を渡されたら、固まってしまう人は多いだろう。小中高で美術教育を受けてきたにも関わらず、どうしてそうなってしまうのか。そこから、まさに「造形教育の九九」たるべきアクティブなアート教育の手法が論文で展開されている。

 世界の教育現場では既に、教科の枠を超えた学力を深めていく鑑賞教育が徐々に浸透している。詳しい手法については、元MoMA(ニューヨーク近代美術館)教育部部長フィリッピ・ヤノウィンの『どこからそう思う?学力をのばす美術鑑賞ヴィジュアル・シンキング・ストラテジーズ』(淡交社)という本が出ている。ニューヨークでは早朝MoMAに若いビジネスマンが集うというのも、教養を広げるだけでなくビジネスにおける問題解決に役立つクリエイティブな発想を養うには、アートを学ぶことが必要だと彼らが気づいているからだろう。日本でも感度の高いビジネスマンは『エグゼクティブは美術館に集う「脳力」を覚醒する美術鑑賞』(奥村高明著、光村図書)などに反応している。

 ニューヨークのメトロポリタン美術館は、絵画や彫塑、宝飾品など20万点以上の収蔵作品について、高解像度デジタル画像をWebサイトで閲覧したりダウンロードしたりできる形でオープンアクセス化している。しかもダウンロードした画像は制約なく利用可能。未来の世界を創っていく子どもたちにはできる限り本物に触れてほしいが、テクノロジーのおかけで限りなく本物に近い体験ができるようになった。

 AI時代に恐々とするより、テクノロジーと人間が手を携え、善と美の実現する世界を創っていく、それができる人材を育てるのが真の教育なのだろう。

(文/有限会社ラウンドテーブルコム Active IP Media Labo、写真/AFPBB News)

(1)AFPBB News 関連記事(2017年1月9日)「チェスは「ただの趣味」 台湾の視覚知能ロボット CESで職探し?」

(2)AFPBB News 関連記事(2016年11月17日)「EU域内の子ども4人に1人が貧困の危機、EU統計局」

(3)AFPBB News 関連記事(2016年10月21日)「途上国、少女たちへの投資で経済効果は2兆円超に 国連」

(4)AFPデータベース ID:000_ CW0PD

AFP通信(Agence France-Presse)
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