2017年02月23日
AFP通信ニュースで世界の「今」を読み解く
教育改革最前線!AI時代の子どもたちに必要なものとは何か
チェス、将棋に続き、囲碁でも人間を破るAI(人工知能)が出てくる時代である。巷では、10年後、20年後に「なくなる仕事」、つまりコンピューターに取って代わられる仕事は何か、という話題で喧しい。かつてのように一流大学を出て大企業に勤めれば安泰と言えないのはもちろん、医者や弁護士のように高度な専門知識が必要な職種でも、既に仕事の大半がコンピューターによって行われている。一方で、貧困のために学校さえ通えない子どもたちがまだ世界中にたくさんいる。しかも親の教育水準が低いことが貧困や社会阻害の原因になるという、負のスパイラル状態である。
将来AIに使われる側になってしまうのか、AIを使いこなせる側に立てるのか、という不安から一歩踏み出して、こんな時代に子どもたちは何を学ぶべきか、そもそも何のために学ぶのか、という根源的な問いを見つめ直してみたい。
世界中の子どもたちが安心して学べる環境づくり
EU域内の子ども4人に1人が貧困の危機にあるという昨年11月のEU統計局による発表は衝撃的だった。(2)
EU統計局によれば、EU全体で18歳未満の26.9%に当たる2526万4000人が危険にさらされている。2010年調査での27.5%、2595万7000人という数値から、わずかな改善がみられたものの、依然として深刻である。また、EU統計局は、親の教育水準が低いと貧困や社会的疎外のリスクが著しく増加すると指摘しているので、教育を受けられなかった親の子どもはまた教育を受けられないという悪循環から、なかなか脱出できないということになる。
また、昨年10月に出た2016年版「世界人口白書」の中で国連人口基金は、途上国が少女たちの健康や性教育などの改善に取り組めば経済効果は210億ドル(約2兆1800億円)に上ると推測した。(3)
一度も学校に通ったことのない6~11歳の少女は1600万人に上り、少年の約2倍になる。途上国の少女たちが少年たちに比べて学校教育課程を修了できないケースが多い理由として、強制結婚や児童労働、非近代的な慣習などが挙げられる。中東諸国およびアフリカの10歳児の人口は世界全体の70%を占めるが、それらの地域では中等教育過程まで進学できる少女たちは少ない。
途上国では、現在10歳の少女たちの健康、教育、自立のための投資を今後の15年間で行うか否かにより、劇的な経済成長を遂げて貧困から脱出するか、あるいはその機会を失ってしまうかの分かれ道となり得る。
ICTで全ての子どもたちに教育の機会を
Right to Dream Academy、「夢見る権利」という名の学校は、イギリス人の社会起業家が1999年に開校したアフリカのサッカー学校である。ガーナの首都アクラの狭い運動場でほんの少人数の少年たちのトレーニングから始まり、わずか16年で、アフリカ7カ国からの奨学生90人以上が集まり切磋琢磨する全寮制のトップ校になった。サッカーだけでなく学業でも、ケンブリッジ国際検定の認定校であり、国内外の様々なカリキュラムを提供している。
Right to Dream Academyのミッションは「アフリカのロールモデルを創ること」。それは、アフリカの抱える問題を理解し、発信する能力と機会を持ち、ポジティブチェンジをインスパイアし、創出し、導いていける人材のことである。将来の国や地域の発展を支える人材への投資なのである。
ロールモデルはスポーツ選手や芸能人に限らない。イノベーティブな商品やサービスを生み出していくクリエーターの卵たちも、貴重なグローバル人材である。プログラミング教育の分野でも、革新的な学校がある。MIT中退とUCLA退学の20代の二人が2011年に創設したMake Schoolは、授業料「出世払い」の長期コースなど未来の学校のあり方を示唆するような画期的な挑戦が話題を呼び、日本、台湾、シンガポールなどアジアにも拡大してきた。ここでは日本からの学生も、毎日世界中から来たクラスメートたちと切磋琢磨し、シリコンバレーで実際に技術を創っているクリエーターの話を生で聴くこともできる。
MOOCS(ムークス)という言葉も耳慣れてきた。Massive Open Online Courses、インターネット上で誰でも無料で利用できる大規模な公開講義のことである。日本でもJMOOC(一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会)が東大、慶應、早稲田などの大学をはじめ、著名人や企業などによる講義を無償で開講している。条件を満たせば修了証が交付される。MOOCSで集めた修了証が評価されて奨学金を獲得したり、進学や就職の夢が叶ったりする事例が、これから増えていくのかもしれない。