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2017年04月18日

AFP通信ニュースで世界の「今」を読み解く

働く環境と保育事情、世界では今
~ワークライフバランス推進を目指して

海外でもやっぱり不足している保育施設

 近年、結婚出産を経ても働き続ける女性が増えている。その一方で都市部では子供を預かる保育所の数が足りないという課題がある。第2次安倍政権が誕生する前にも、この問題はすでに報じられている。(8)

 政府は「待機児童解消加速化プラン」を作り、 保育施設への受け入れ数を増やし、待機児童問題に取り組んでいる。また、保育事業に参入する企業も出てきている。しかし、依然として不充分で、女性の社会進出を阻んでいる一つの要因になっている。この結果として日本は男女平等ランキングで2016年には過去最低の111位を記録した。(9) 男女間の所得格差は世界的にも依然として残っており、原因として待機児童の問題もあり得るが、それでは海外の保育事情はどのようになっているのだろうか?

 海外では子供の保育にベビーシッターを雇うことも一般的である。また保育施設へ子供を預けることも可能であることから、選択肢が多いと言える。しかし、ヨーロッパでも保育施設が不足しているところもあるようだ。待機児童問題があり、子供を保育施設に預けられない場合は働きに出ることが困難になる。当然収入が減ることになるが、ドイツ連邦裁判所は、復職できない夫婦に対して補償義務が政府にあるという判決を出している。(10)

ドイツ北東部ポツダムにある幼稚園の遊戯室(2007年4月17日撮影、資料写真)。©AFP/JOHN MACDOUGALL

 その一方で同じドイツで、「母親になると後悔するのか」ということが大きな議論になっている。(11) 社会的に母親の役割が重要だと信じられてきたドイツでは、大学を卒業した女性の3分の1以上が子供を持っていない。

ドイツ・ベルリンで、学校に11歳の娘を迎えに行き、一緒に帰宅する母親(2016年6月23日撮影)。©AFP/John MACDOUGALL

 フランスでも保育施設は不足している。フランスは働く女性が多く、出生率は先進国の中では高い。保育施設が不足し待機児童が増加すれば出生率が下がりかねないために、認定保育ママという制度があり、これが保育施設の不足の問題を補完している。

 収入が十分ではない世帯への支援という側面ではどうだろうか。日本では地方自治体から保育施設に対して給付金や助成金が支払われることで両親が支払う保育料の引き下げに繋がっていく。文献等からアメリカでは控除という形のインセンティブがあり、ヨーロッパでは助成金という形で公的な支援が行われている。実際にドイツでは公的な支援策を拡大することで出生率が少し上昇することに繋がった。(12)

場所や時間にとらわれない「自由な働き方」実現へ

 企業が競争力を高め、持続的に成長するために、女性の活用が不可欠である。そのために、出産・育児等を経ても女性が就労を継続できるような働く環境整備の早期実現が期待される。すでに在宅勤務制度やサテライトオフィスを導入している企業もあるが、人と時間という貴重なリソースの無駄をなくし、女性を含め労働力を最大限に生かすカギとしてICT活用がある。スムーズなスケジュール共有や臨機応変なコミュニケーションを可能にするソリューション、グループウェアの運用管理負荷を削減する外部のクラウドサービスやデータセンターの利用、変化に柔軟に対応できるハイブリッドな環境構築…企業ごとに課題があるはずだ。ビジネスのグローバル化に対応してコミュニケーションをスピードアップできるかも明暗を分ける。場所や時間の制限なく誰もが快適に働ける環境で、諸外国に負けない日本のワークライフバランス推進を望む。

(文/有限会社ラウンドテーブルコム Active IP Media Labo、写真/AFPBB News)

(1) AFPBB News 関連記事(2017年4月1日)「JALグループが入社式、会場は今年も格納庫で」

(2) 平成28年6月2日閣議決定「ニッポン一億総活躍プラン」

(3) AFPBB News 関連記事(2017年3月4日)「日本でメディアへ圧力強まる=電通過労死にも言及-米人権報告」

(4) Bauman AE, Ainsworth B., Sallis J, et al. The descriptive epidemiology of sitting: A 20-country comparison using the International Physical Activity Questionnaire(IPAQ). Am J Prev Med 2011; 41: 228 – 235.

(5) van der Ploeg HP, Chey T, Korda RJ, et al. Sitting time and all-cause mortality risk in 222,497 Australian adults. Arch Intern Med 2012; 172: 494–500.

(6) AFPBB News 関連記事(2014年7月8日)「イスの代わりにトレッドミル、「立って仕事」が米国で人気」

(7) 武石恵三子「ワーク・ライフ・バランス実現への課題 国際比較調査からの示唆」独立行政法人経済産業研究所

(8) AFPBB News 関連記事(2012年11月26日)「日本経済再生の「秘密兵器」、女性の就労が日本を救う」

(9) World Economic Forum: The Global Gender Gap Report 2016

(10) AFPBB News 関連記事(2016年10月21日)「保育所不足で復職できない親の所得、行政に補償義務 ドイツ連邦裁」

(11) AFPBB News 関連記事(2016年7月7日)「「母親になると後悔するのか」…ドイツで一大論争に」

(12) AFPBB News 関連記事(2016年9月24日)「ドイツで出生率低下に歯止め、反転上昇」

AFP通信(Agence France-Presse)
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