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2017年04月27日

AFP通信ニュースで世界の「今」を読み解く

スポーツビジネス最前線!
F1に見る、巨大な国際ビジネスとしてのスポーツ

大金の動く世界ビジネスF1はどのような利益があるのか?

 フォーミュラーワン通称F1とよばれる世界最高峰の自動車レースは、1シーズンで世界各国においてレースを開催し世界王者を決める自動車レース(モータースポーツ)の頂点である。そしてF1は産業という視点から見ると、多くの利益を生み出すことができる場所であるようだ。

 モータービジネスの分析によると、2003年から2014年にF1は7億2,900万ドルから15億2,300万ドルの収益増加を達成している。3分の1はテレビの放映権料として世界各地から支払われ、そのほか3分の1ずつはサーキットがF1世界選手権に対し支払っている登録料とその他スポンサー料やサービス料となっている。サーキット登録料は各サーキット異なり、モナコモンテカルロ市街地コースだけは例外的に無料となっているそうだが、高い金額を投資してまでもF1を開催し世界に自国をアピールしたいと考えている国が多いのだ。(5)

 日本は車社会である。モータースポーツが日常に根付く可能性は大いにあるはずだ。1980、90年代には日本企業のホンダ、日本人ドライバーの中島悟選手やアイドル的ドライバーのアイルトン・セナの登場によるモータースポーツ・ブームもあった。モータースポーツに対する正しい認識を広めるべく、企業・レース運営側もアピール戦略を工夫することで、スポーツとして日本人の生活に根付いていけるのではないか。(6)

世界でのスポーツビジネスの教育・実績から学ぶ日本のスポーツ市場の改善点

 日本でモータースポーツに特化したエンジニアリングを勉強しようしても、国内ではモータースポーツに特化した大学レベルの教育機関は少ない。そこで海外に留学するケースも増えている。F1発祥の地であるイギリスには、モータースポーツエンジニアリングに特化する大学がいくつも存在する。Oxford Brookes Universityでは世界中からモータースポーツチームで活躍する夢を持った学生が集まり、F1チーム勤務経験者の講師による講義や現チームスタッフによる講演会など専門的なレベルの高い授業が受けられる。技術色の濃いエンジニアリングコースであっても、モータースポーツ産業に関するビジネスマネージメントの授業もあるし、課外活動である学生フォーミュラーカーチームではビジネスセクションが設けられ、チーム運営のためのスポンサー集めを学生自身が行っている。これからスポーツを運営する側になる人材として、機械に関する技術・知識だけではなく、ビジネスとして人との関係性からどのように利益を生み出すことができるのかを考える機会を、学生は多く与えられているようだ。

FIA-F4選手権のシーズン開幕を控え、静岡県小山町の富士スピードウェイでテスト走行に臨む小山美姫(手前、2016年3月23日撮影)。©AFP/TORU YAMANAKA(7)

 学生の小さなフォーミュラーカーチームでさえスポンサーが必要なように、モータースポーツ参戦には莫大な費用が必要とされ、その最高峰のF1においてはマーケティング部門が重要となってくる。では実際にはどのようなマーケティングが行われるのか。

 ヨーロッパでモータースポーツ向けのマーケティング専門集団の代表を務めるグレッグ・リー氏によれば、F1規模の世界レースになると、タイトル・スポンサーの車体へのロゴカラーリングから、レースでドライバー、チームスタッフが着用するスーツ、ヘルメットまで、マーケティング展開に利用できる。また、レース場の外では、広告としてドライバーにスポンサーイベントへの出演依頼をしたり、車体展示をしたりなど。10万人強の観客に向けての企業アピールが可能になる。(8)

F1チーム・サハラフォースインディアのドライバー、セルジオ・ペレスのヘルメット

 スポーツビジネスが発達途中にある日本であるが、スポーツビジネスを活性化する新たな試みも出てきている。チケット購入の簡略化や、集めたチケット購入顧客データから新たな顧客獲得への対策を考案できるシステムの導入。また、若い年代の観客に合わせ、スマートフォンの利用により応援している選手の成績状況を確認することができるシステム、またスポンサーの長所を活かした最新製品や前例のない取り組みをすることによって顧客を増やす戦略である。

 世界レベルの大会は、選手だけでなくコーチ、トレーナー、栄養士などのスタッフがチームとなって戦う、いわば情報戦でもある。情報の収集・分析にICTを活用できるかで勝負が決まることもあるだろう。スポーツの信頼感を左右する審判においても、高性能なセンサーによるデータの取得・解析が大きな役割を担っている。観客にとっても、最先端のCGや3Dの技術を駆使した迫真の映像がリアルタイムで巨大スクリーンに映し出されると観戦の楽しみは倍増する。こうした周辺産業も含め、ビジネスとして発展していくことで、スポーツはますます面白くなっていくのではないか。

(文/有限会社ラウンドテーブルコム Active IP Media Labo、写真/AFPBB News)

(1) AFPBB News 関連記事(2016年12月31日)「年俸や放映権が高騰、大金が投じられた2016年のスポーツ界」

(2) 東洋経済ONLINE(2016年06月17日)「アトキンソン氏「スポーツ産業の課題」を語る 日本のスポーツは観光並みに伸び代だらけだ」

(3) AFPBB News 関連記事(2017年3月22日)「新オーナーの下で迎えるF1の新シーズン、高速化で新たなファン開拓なるか」

(4) Sports navi plus(2015年03月05日)「相撲人気をブームで終わらせないために。そのカギを握るのがお笑い芸人「マービンJr」さんである理由とは?」

(5) WIRED(2013年9月14日)「F1:経済危機とは無縁の金満ビジネス」

(6) 車知楽(2015年12月31日)「なぜ日本にモータースポーツは根付かないのか? 不人気の原因は、日本人のスポーツ観にあった。」

(7) AFPBB News 関連記事(2016年4月26日)「フォーミュラレースの頂点目指す日本人女性ドライバー」

(8) 英国をもっと好きになる ニュースダイジェスト(2015年5月5日)「モータースポーツを通じたマーケティングとは?グレッグ・W・リー氏に聞く」

AFP通信(Agence France-Presse)
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