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2017年04月27日

AFP通信ニュースで世界の「今」を読み解く

スポーツビジネス最前線!
F1に見る、巨大な国際ビジネスとしてのスポーツ

 日本ではスポーツを「体育」と称してきたように、スポーツを通した産業振興を充分に行ってこなかった。欧米ではスポーツの持つ経済的な力を各国の成長につなげている。2015年にスポーツ庁が発足した。スポーツ人口の拡大、地域への貢献、他分野との融合による新市場の創出が期待される。周辺産業も含めたスポーツビジネス、今後の可能性と課題を探る。

遅れを取った日本のスポーツ産業

サッカーヨーロッパリーグ、グループA第2節、マンチェスター・ユナイテッド対FCゾリャ・ルハンシク。試合後の歓声に応えるマンチェスター・ユナイテッドのポール・ポグバ(2016年9月29日撮影、資料写真)。©AFP/PAUL ELLIS

 近年、多彩なスポーツが社会的ブームを巻き起こしている中、多額の金額がスポーツ界に投じられている。

 特に昨年話題を呼んだのが、サッカープレミアリーグでのフランス代表ポール・ポグバ選手の移籍金額である。昨年夏、ポグバ選手は1億500万ユーロという破格の移籍金と共に古巣イタリア・セリエAで戦うユベントスからイングランド・プレミアリーグで人気を誇るマンチェスター・ユナイテッドへの移籍を発表し、世界中に衝撃を与えた。サッカー界だけではなく、アメリカで圧倒的な人気を誇るバスケットリーグNBAでは放映権が高騰し、選手の年棒が増加傾向にある。また、世界三大スポーツの一つであるフォーミュラーワン(F1)を米メディアのジョン・マーロン氏率いるリバティメディアが買収したことにより、ファン離れが懸念されていたF1の価値が80億ドルになり将来的に多額の利益増加が予想された。(1)

 このように世界のスポーツ界で大金が移動しているのに対し、日本のスポーツ産業は観光業同様に伸び代だらけが現状だとイギリス人アナリストのデービッド・アトキンソン氏(小西美術工藝社社長)は語っている。アンダーアーマーの日本総代理店のドーム代表取締役CEO安田秀一氏とかねてから交友があり、様々な日本のスポーツ産業の課題を語ってきた彼によると、現在巨大なスポーツ産業を展開しているアメリカでも20年ほど前は産業としてのスポーツは未発達だったという。しかし、2010年にはその利益は約3倍にも跳ね上がり、現在のような産業規模になった。このような結果は日本とアメリカのスポーツ観戦の現場を比較すると、日本はスポーツ観戦のみの集客に重点を置きすぎていて、その他の飲食店や試合の休憩時間中のエンターテイメントなど、そのスポーツ自体の知識や興味が薄い観客層の集客が思うようにいっておらず、コアなファン層の集客しか見込めないため施設投資も人口減少と共に難しくなっていってしまうという悪循環があるとアトキンソン氏は分析する。(2)

英シルバーストーン・サーキットで披露されたメルセデスAMGの2017年シーズンの新車「W08」(2017年2月23日撮影)。©AFP/OLI SCARFF(3)

 そんな中で、国内外から幅広い層の観客を呼びこみ、周辺産業も含めこれから大きく発展していける可能性を持つスポーツが、F1をはじめとするモータースポーツである。

 訪れたことのある人ならわかると思うが、コアなファンならずともF1サーキットは華やかで楽しい。決勝レースの数時間前に全ドライバーが運転手付きのオープンカーに乗り込みファンの為にコースを一周するドライバーズパレードが行われる。ドライバーが乗るオープンカーも有志のヒストリックカーであったり、またファンだけではなくドライバー自身もレース中に見ることができない会場を一望できたりとファンとの距離が近いので、アイドルのようなルックスのドライバーを一目見ようと女性ファンが駆けつける。

 エンターテイメント性や話題性で集客率を増加させるのも一手ではあるが、それが一時的なブームとして過ぎ去ってしまいなかなか人気が定着しないスポーツが多くあることも日本の課題である。近年、相撲ブームとして多くの人が相撲観戦に足を運び、関係者は高い品質の競技を観客に提供することでファンの心をとらえようと努力しているようだ。女子バレーボールにおいても、ロンドンオリンピックで銅メダルを取った選手たちがVリーグで活躍している状況を何とかして集客率増加につなげようと模索している。そんな中で長期的なファン獲得のために、メディアでの工夫も必要となってくる。コアなファンだけがわかる専門的な技術用語を使うことなく、誰にでもわかる言葉で高度なスポーツ技術を解説できる解説者の存在がにわかファンを本物のファンとして産業に取り込む解決策になるかもしれない。(4)

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