ここから本文です。

2017年05月23日

AFP通信ニュースで世界の「今」を読み解く

モビリティ・イノベーション! 街と道から始まる社会変革

多様化する新しい都市交通

 収益性に偏った交通政策が多くの問題を引き起こし、経済的ハンディを持つ人々、高齢者、子どもなどに公共交通サービスが行き届いていないという、80年代の西ヨーロッパ諸国と似通った状況にいる現在の日本でも、多様化するニーズを満足させるべく、マルチモーダルな交通政策が望まれる。

 2012年のオリンピック開催を機にロンドン市とオックスフォード大学の官学連携による「マルチモーダル交通モデル」には、低炭素排出車両、代替燃料、課金制度、公共交通、徒歩、自転車が列挙されている。(4) フランスでは前述のトラムに加えてバス、BRT、コミュニティサイクル、車、超小型PMを組み合わせた、すっきりとしたシームレスな交通まちづくりが進んでいる。BRTとはバス高速輸送システム、バスを基盤とした大量輸送システムのことで、フランスではBHNS(高レベルサービスバス)と呼ばれ、次世代交通システムとして注目されている。

 コミュニティサイクルは日本で言うレンタサイクルだが、既往の公共交通の補完公共交通、個人利用の公共交通として、注目されている。ドイツでは昨年、自転車用高速道路が開通した。(5) 都会の交通渋滞や大気汚染問題への解決策として、また、朝9時から夕方5時まで働く人たちが安全に自転車で通勤できる手段として歓迎されている。自転車高速道路はこれまでオランダとデンマークが先駆的に取り組んできた。ドイツでは金融の中心地フランクフルト、南部バイエルン州の州都ミュンヘン、ニュルンベルクなどでも予定され、首都ベルリンでも予備調査の実施が決まった。

ドイツ西部のミュールハイム・アン・デア・ルールで、自転車専用高速道路を走るサイクリストたち(2015年12月24日撮影)。©AFP/PATRIK STOLLARZ

 欧州で最も緑豊かな都市の一つ、フィンランドの首都ヘルシンキでは、オープンスペースの47%を占める緑地を守るため、都市計画当局は今後、市内の自動車の数を減らして二酸化炭素排出量を削減する計画を立てている。(6) 自動車が禁止されることはないが、新たな公共交通機関や徒歩圏内の各種施設および緑地の整備、駐車料金の引き上げなどにより、店舗や学校、各種サービスが徒歩圏内に集約されるため、市民らにとって車は不要になるかもしれない。また職場が遠い人にも対応して、地下鉄や路面電車などの公共交通機関の充実も図る。

未来のフィンランド首都ヘルシンキを描いた想像図。都市計画当局提供(撮影日不明)。©AFP/HELSINKI PLANNING DEPARTMENT

移動の安心・安全を支えるICT

 交通を巡る諸課題を解決するため、IoT、ビッグデータ、人工知能、ロボット・センサーなど先端技術を活用し、街と道から社会の変革を先導していけないだろうか。さらに安心・安全で、多様な人々にとって平等に便利な、高精度の混雑改善や道路課金などの次世代道路技術の仕組みができないだろうか。交通システムを最適化することで、観光客のリピート率向上や地域内の物流効率化につなげられないだろうか。

 現在実現している事例としては、自動走行を支える白線検知技術や、携帯があればワンクリックでバスを呼べるオンデマンドの公共交通サービス、そして欧州ではトラムがほとんど信号で停止せずに拠点間をノンストップで移動できるサービスがある。バスと信号機が通信で結ばれ、バス運転手の操作で信号制御が行われる。街路や付属物、移動体に設置されたセンサーネットワークのおかげだ。(7)

 今年1月、パリで無人運転バスの初の試験走行が始まった。レーザーやカメラを使って周囲の障害物や歩行者などを探知することができる。パリ交通公団のエリザベート・ボルヌ代表は、こうしたバスがいつか家庭と駅を結ぶようになると予言している。(8)

仏オステルリッツ駅とリヨン駅の間を試験走行する自動運転のシャトルバス(2017年1月23日撮影)。©AFP/GEOFFROY VAN DER HASSELT

(文/有限会社ラウンドテーブルコム Active IP Media Labo、写真/AFPBB News(*を除く))

(1) AFPBB News 関連記事(2017年1月19日)「超高速交通システム「ハイパーループ」、チェコ─スロバキア間で予備調査へ」

(2) 国土交通大学平成26年度専門課程総合交通体系(地域モビリティ戦略)研修(2014年11月25日)「カーフリーデーと世界の交通まちづくり:環境と人に優しい交通まちづくりの取り組み」

(3) 流通経済大学経済学部准教授 板谷和也、早稲田大学理工学術院教授 森本章倫(都市とガバナンスVol.24, 2015)「フランスの公共交通を活かしたまちづくり」

(4) 岡山大学地域総合研究センター地域公共交通総合研究所 三村聡(2015年9月18日)「あらたなモビリティ活用による地方創生」

(5) AFPBB News 関連記事(2016年1月4日)「ドイツ初、自転車用の高速道路が開通」

(6) AFPBB News 関連記事(2015年12月4日)「2050年には自動車不要に?ヘルシンキの新都市計画」

(7) 牧村和彦(IBS Annual Report 研究活動報告2015)「モビリティ・イノベーション」

(8) AFPBB News 関連記事(2017年1月24日)「仏パリで無人運転シャトルバスの試験走行開始」

AFP通信(Agence France-Presse)
AFP通信は、世界で最も長い歴史を持つフランスの通信社です。1835年の開設以来、記事の信頼性、中立公正、速報性を守り続ける歴史と信頼のブランドとして高い評価を得ています。「AFPBB News」は、2007年にAFP通信が立ち上げた日本語のニュースサイトです。

関連キーワードで検索

さらに読む

この記事の評価


コメント


  • コメントへの返信は差し上げておりません。また、いただいたコメントはプロモーション等で活用させていただく場合がありますので、ご了承ください。
本文ここまで。
ページトップ