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AFP通信ニュースで世界の「今」を読み解く

ICT×農業、アグリビジネスの未来

2017年09月26日

 暗黙知、経験則が多い農業はICT活用のメリットが多い。生産性や品質の向上、自動化・省力化によるコスト低下、AIやビッグデータで暗黙知の可視化、トレーサビリティー導入で販路拡大や信頼性向上などが期待される。世界最先端の農業におけるICT活用の事例を紹介、緊急と言われる人材育成の課題にも触れる。

フランス中部トゥール近郊アテ・シュル・シェールの小麦畑に出現した巨大な「HELP」の文字(2017年4月13日撮影)。©AFP/GUILLAUME SOUVAN ──仏大統領選を前に、農家の男性が大統領候補たちにフランスの農業の窮状を訴え対策を迫るため、まだ青々とした小麦を刈り込んで作成したものだ。(1)

世界の農業が直面するさまざまな課題

 増大する食料需要、気候変動による環境変化、グローバル化による安定性や安全性への影響…世界の農業は今、さまざまな課題に直面している。

 気候変動によって、小麦、コメ、トウモロコシなどの主要農作物の収穫量が減るのは避けられないとする研究結果が今年8月、米科学アカデミー紀要で発表された。気温の変化が世界的/局地的規模で農作物に与える影響のシミュレーション、天候と収穫量の過去データに基づく統計モデル、人工的に温暖化を発生させる実証実験など、これまでに行われた地球温暖化と農業に関する研究70件を再検証したものだ。論文によると、世界の平均気温が1度上昇するごとに、小麦の収穫量が平均6%減少すると推定され、コメでは同3.2%、トウモロコシも同7.4%の減少となるという。大豆では有意な変化はみられなかった。人類が生き延びる上で極めて重要なこれら4種の農作物は、人が摂取するカロリーの約3分の2を占める。増え続ける世界人口の食糧供給を確保する上で、温暖化への対策は必須だ。(2)

 一方、世界第2位のワイン生産国であるフランスでは、ブドウの生産地が今春、寒波に見舞われたことから、2017年のワイン生産量は「歴史的な低水準」に落ち込む可能性があると、フランス農業省が明らかにした。仏農業省統計局が7月に公表した統計によると、今年のワイン生産量は前年比17%減の3760万ヘクトリットルとなる見通しで、この数字は過去5年の平均も16%下回る。(3)

仏北部シャブリで、寒波に見舞われたブドウ畑(2017年4月21日撮影、資料写真)。©AFP/PHILIPPE DESMAZES

 また、フランスでは今年、バター価格の急騰により、パンや菓子の製造業者も利幅が縮まって業界全体が脅かされる事態となった。原因は、原料である牛乳の生産量がフランスを中心に欧州で落ち込む一方、国内外で需要が高まったためと見られる。一方でフランスの酪農業者からも、生産する生乳が原価割れを起こしていると不満の声が上がっている。欧州では粉ミルクが35万トンの供給過剰となっているため、価格が押し下げられているという。(4)

 国際間の問題もある。イタリアでは、東南アジア産の輸入米の流入で、国内産のコメの価格が急落した。イタリアの農業生産者団体によると、1年のうちにコメの小売価格は半分になった一方で、東南アジア諸国からの輸入量は4倍に膨れ上がったという。東南アジア産のコメは「農薬を使用しているため危険な上、未成年の子どもを働かせ搾取して栽培されている」「イタリア国内で販売されているコメの4袋に1袋は外国産だが、表示規制が緩いために消費者は小売店で売っているコメの原産地が確認できない」との声もある。(5)

 これらの問題を解決し、持続可能な農業を目指すため、世界では今、どのような取り組みが行われているのだろうか。

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