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2017年09月28日

電子マネー「nanaco」利用でEV・PHVの充電がより身近に
──充電時間の繰り越しもできる画期的サービスがスタート

徹底した顧客視点でのサービスを目指して

 その方法が今年になってようやく実現したのには理由がある。柴崎氏は続ける。

 「私たちが最も重視したのは、お客さま視点での充電サービスを実現させることでした。そのハードルとなったのが、"充電の残時間"の扱いでした。充電料金は1時間あたりの金額を電子マネーで前払いしていただくことになります。しかし、お客さまが早めに買い物を終えて、例えば30分で充電を切り上げてしまった場合、その残りの時間をどうするか。それをお客さま視点で考え、システム化することに時間をかけました」

 イトーヨーカ堂がこだわったのは、「残時間を繰り越しできる」仕組みの構築だった。充電時間が余ったら、それを次回の充電時にそのまま使うことができる。繰り越しの期間は最大1年間とする──。それがその仕組みである。これによって利用者は、実利用時間に対する料金過払いの心配がなくなり、それぞれのペースで充電サービスを気軽に利用できることになる。

 もっとも、前例のないシステムづくりは簡単ではなかった。このシステムは、クラウド、決済装置、充電器といった要素で構成される。セブン&アイ・ホールディングスの各店舗に充電サービスを提供しているNECは、さまざまな制約を考慮しながらシステムの内容を検討し、柴崎氏らとともに顧客視点でのユーザビリティを徹底して検証してサービスの仕様を固め、この8月についに新しい仕組みの実現にこぎつけた。充電の残時間を繰り越せる仕組みの導入は、国内初である。

 そのほかにも、ほかの決済方法と比べて充電価格が割安で、利用のたびにnanacoポイントが貯まるなど、さまざまな顧客メリットが考えられている。今後、セブン&アイ・ホールディングスの施設以外でNECが提供する充電サービスでも、nanacoによる決済が順次実現していく予定だ。

nanacoカードの利用イメージ

EV・PHVと消費者の距離がより近くなる

 セブン&アイ・ホールディングス傘下の店舗、とりわけイトーヨーカ堂は、「個店主義」の方針のもと、それぞれの店舗とその周辺地域との結びつきを重視してきたことで知られる。近隣消費者にとって物理的に近い距離にあるだけでなく、心理的にも身近な存在である店にEV・PHVの充電設備があること。さらにnanacoという、これも消費者にとって非常に身近な電子マネーで決済ができること──。それらが消費者に与える影響は決して小さくはないだろう。これまでEV・PHVに対して距離感を感じてきた人たちが、nanacoによる充電サービスを認知することによって、EV・PHVをより身近なものと捉えることができるようになることが、この取り組みのもう一つの大きな意義である。柴崎氏は言う。

 「私たちがEV・PHV充電器を設置したのは、お客様の利便性向上と地域社会への貢献のためであり、低炭素社会の実現に向けた取り組みを推進するためです。新しい社会をつくっていくためには、誰かが率先して新しいことにチャレンジしていかなければならない。その先鞭をつけたいというのが私たちの思いです。今回の取り組みによって、少しでもEV・PHVの普及が加速していってほしい。そう私たちは考えています」

 経産省の蘆原氏も、「EV・PHV充電設備の認知度と利便性を上げる画期的取り組み」と、nanacoによる決済システムを評価している。

「共創」が生み出す新しい自動車社会

 日本に比して大気汚染の被害が深刻な欧米や中国では、EV・PHVの普及が日本以上に進んでいる。フランスと英国は、2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止し、新車のすべてをEV、もしくはハイブリッド車とすると相次いで発表した。同様の動きはオランダやノルウェーなどでも進んでいると伝えられる。

 一方、わが国の経産省は、2020年までにEV・PHVの乗用車保有台数を70万台から100万台に、2030年までに乗用車の新車販売におけるEV・PHVのシェアを2割から3割とするという目標を掲げている。現在のEV・PHVの普及台数が16万5000台であることを考えれば、あと3年余りで最大100万台を目指すというのは極めて野心的な目標といっていい。しかし、「決して達成不可能な目標ではない」と蘆原氏は言う。

 「もちろん、EV・PHVの普及には、補助金などの国の政策だけではなく、、民間企業の皆さんにもご協力をいただくことが必要になります。とくに私たちが期待しているのが、充電システムの"統合的運営"です。各地に設置された充電設備をネットワーキングして、効率的なメンテナンスや故障への迅速な対応を実現したり、満空情報をユーザーに発信したりする仕組みができれば、利便性がより向上し、EV・PHVに対するユーザーの認知もさらに上がっていくはずです。それを実現するには、一事業者だけの取り組みでは難しいでしょう。さまざまな企業の協業によって、より使いやすい充電インフラが整備されていくことを私たちは願っています」

 官民が一体となるだけでなく、民間企業同士の「共創」を積極的に進めていくこと。それが新しい自動車社会をつくり上げるための必須の条件と言えそうだ。

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