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電子マネー「nanaco」利用でEV・PHVの充電がより身近に
──充電時間の繰り越しもできる画期的サービスがスタート
EV・PHVの充電設備がこの数年着実に増加している。従来は自動車会社が発行する会員カードかクレジットカードで決済する仕組みになっていた充電サービスだが、この8月から、セブン&アイ・ホールディングスの各店舗で電子マネー「nanaco」による決済が可能になった。国内初となるこの仕組みはユーザーにどのようなメリットをもたらし、EV・PHV普及にどのような影響を与えるのだろうか。
SUMMARY サマリー
順調に普及している充電設備
日本におけるEV(電気自動車)の普及台数は、2017年3月現在でおよそ9万2000台、同じくPHV(プラグインハイブリッド車)の普及台数はおよそ7万3000台となっている。いずれもこの数年安定的な伸びを見せてはいるものの、新車販売数で見るとEV・PHVを合わせたシェアはまだ自動車全体の0.6%にとどまっているのが現状である。
一方、先行して順調に増えているのが充電設備だ。同じく3月現在で、普通充電器2万700基、急速充電器7100基、計およそ2万8000基が国内に普及している。
「現在のガソリンスタンドの数はおよそ3万1500カ所です。充電設備単体とスタンドを単純に並べて比較することはできませんが、スポットの数自体はガソリンスタンドに着実に近づいています。わが国の国土の広さを考えれば、欧米に引けを取らない充電インフラがすでに整備されつつあると言っていいと思います」
経済産業省自動車課の蘆原(あしはら)瑞應氏はそう話す。EV・PHVの普及を今後加速させていくには、この充電インフラの認知度と利便性を高めることが必須であると蘆原氏は言う。
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製造産業局 自動車課 (併)電池・次世代技術・ITS推進室
課長補佐 蘆原 瑞應 氏
充電サービスの新たな決済方法
現在、経産省がEV・PHVユーザーにとってベースとなる充電施設と位置づけているのが、自宅、オフィス、商業施設に設置された充電器だ。EV・PHVの充電には時間がかかる。したがって、夜寝ている間、仕事をしている間、買い物をしている間に充電をするのが最も効率的である、というのがその理由である。
商業施設における充電設備設置をリードしている企業の一つが、セブン&アイ・ホールディングスだ。総合スーパー「イトーヨーカドー」、ショッピングセンター「Ario」、百貨店「そごう」「西武」、食品スーパー「ヨークベニマル」を全国で展開する同社は、2015年から店舗敷地内に普通・急速充電器を設置し始めた。現在その数はおよそ3000基に上る。これは国内の商業施設中、最大規模である。
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充電の決済方法にはこれまで、主に各自動車メーカーが発行する会員カードとクレジットカードの2種類があった。セブン&アイ・ホールディングスの店舗における決済方法も従来はその2つだったが、この8月より、新たに電子マネー「nanaco」による決済が可能になった。会員数5000万超、決算件数日本最大級を誇るカードによる決済システムを実現させたイトーヨーカ堂・施設管理部の柴崎善勝氏は、こう説明する。
「nanacoによる決済の仕組みは、グループ店舗への充電器設置プロジェクトがスタートした2013年から検討していました。お客さまにとってより身近で、より手軽に使える決済方法を導入することで、充電設備の利用が促進されると考えたからです」
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施設管理部
施設管理マネジャー 柴崎 善勝 氏