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2021年03月30日

AIインバリアント分析技術の導入で、よりスマートに宇宙船開発を実現

 2024年までに初の女性を含む、人間の月面着陸を目指す―――これはNASAによる月探査計画「アルテミス」計画の一つです。2028年までの人類史上初の月面基地の建設開始に向け、技術的進歩だけでなく、女性の活躍など、人類の先進的な一歩として注目されているこのミッションは半世紀ぶりの有人月面着陸となり、1960年代から1970年代にかけて利用されたアポロ計画よりもはるかに高水準で複雑なコンピュータを要すると考えられています。そこで、重要な役割を果たすと期待されるのがAIです。何十万もの測定値の監視を必要とする宇宙船の製造過程における細部までの検証試験を、NECのAIモニタリングシステムが支援していきます。

より信頼性のある宇宙船開発を目指して

 アメリカの大手航空機・宇宙船メーカー、Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)による、この複雑でスケールの膨大なNASAの有人宇宙船「オリオン」の製造およびテストを可能にする技術がNECのインバリアント分析技術です。インバリアント分析は一般的にビル、工場、発電所、橋やトンネルなどの社会インフラにて利用されています。何十万個に渡る監視センサーから、常にデータを収集、分析することで、早期の異常検知を可能とします。NECのインバリアント分析の宇宙分野への応用は、今回オリオンの製造開発の主契約企業であるロッキード・マーティンとの協業により初めて実現されることになるのです。

 近年、惑星画像分析や宇宙ステーションロボットなどでの活用により、AIは深宇宙探査や宇宙船開発において重要な技術として注目されています。例えば、NASAの「アルテミス」計画で使用される有人宇宙船「オリオン」では、宇宙船内のシステムが正常に、常に適切な状態で作動しているかを監視し、保証する役割を果たします。

ロッキード・マーティンが開発中の有人宇宙船「オリオン」

 NECのAI技術の一つ、インバリアント分析もロッキード・マーティンのAIプラットフォーム「T-Tauri」に統合されることにより、「オリオン」のテスト段階において生成される膨大な量のデータの比較、監視に貢献します。実際にカプセルの熱真空試験では、「T-Tauri」及びインバリアント分析は宇宙船内の15万以上のセンサーから、わずか4時間でデータをリアルタイムに収集・分析し、熟練のエンジニアによる手動の分析では考えられない速度で結果を生み出しました。このように、インバリアント分析はセンサー間に存在する220億以上の関係性を自動的に構築し、「オリオン」の運用において早期に異常検知するために使われていくのです。

 インバリアント分析統合による今後のポテンシャルを想定し、先日NECとロッキード・マーティンは本技術の協業パートナーシップの延長契約を締結しました。契約の最終締結に向けて両社は引き続き商品ライフサイクルの各段階に合わせて、インバリアント分析以外にも他のAIソリューションを活用していく可能性も今後検討していくとしています。

 ロッキード・マーティン・スペースのリック・アンブローズ上級副社長はこう述べています。
 「ロッキード・マーティンは全社を挙げてAIを積極的に活用しており、NECのような信頼できるパートナーとのイノベーションを加速することで、永続的な変革を社内に広げることができます。テレメトリデータを分析することで、従業員の業務を効率化しながら、さらに迅速にシステムを提供できるようになります。」

インバリアント分析の仕組み

 今回のアルテミス計画でNECのインバリアント分析が選ばれたのには複数の理由があります。まず、インバリアント分析が長年かけて大規模なエネルギープラント、製造業や交通において様々な用途で適用されている実績を誇っていること。その上、開発者にとってはスピーディーで高精度なシステム診断を可能にし、ディープラーニングのようなブラックボックス型AIとは異なり、分析結果に至るまでの過程を明確に提示できることが挙げられます。インバリアント分析の「ホワイトボックス」的アプローチはユーザビリティの観点からも評価されており、問題が発生した経緯をユーザーの思考経路をもとに反映させ、透明性を確保します。まさに、大規模な開発や試験では特に、このように分析過程の透明性を確保することはAI技術にとって非常に重要なポイントとなるのです。

 インバリアント分析は2009年にITシステム用に、また、2018年には物理的システム用に商品化され、各データの計測だけでなく、データ間の関係性を分析することが特徴といえます。インバリアント分析は、様々なシステムから平常時に変化しない関係(インバリアント)を自動的に学習してモデル化し、そのモデルと一致しない「いつもと違う」挙動を検知する技術です。時系列データ内から自動的にデータの関係性で起こる異常を検知し、データ間の関係性から既に抽出されたモデルの利用により、早期に異常を予測・検知できるのです。

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インバリアント分析独自の特徴と利用実績

 インバリアント分析はIoTの利活用に課題を抱える日本において、多種多様の複雑なシステムに導入されています。例えば、鉄道業界では、電車のバランス保持を目的に、車両用空気ばねの制御システムを監視するために利用されています。リアルタイムで空気ばねの空気圧データを監視することにより、車両のバランス異常を早期に予測し、バランスが崩れて大事故になることを防ぎます。また、発電所においては、オペレータの研修や故障に向けたシミュレーションなどのために使用されています。3500個以上のセンサーから機械の毎秒数百個の作動状況データをリアルタイムに把握することで発電所全体の安全を保証しているのです。

 10年以上AI領域で活躍してきたNECのシニアデータアナリスト、相馬知也氏はこう語ります。
 「インバリアント分析がNECの独自技術であることだけでなく、ロッキード・マーティンにて導入されたようにユーザーが簡単にデータモデルを構築し、異常検知ができることに魅力を感じています。また、ユーザーが簡単に分析結果にアクセスし理解できることに加え、NECの優秀なサポートチームが技術開発に貢献できることもさらなる強みです。」

 インバリアント分析は人の知的創造活動を最大化するNECのAI技術群、“NEC the WISE”の一つです。NEC the WISEはおよそ30のAI技術群で、「ホワイトボックス型AI」と呼ばれる、予測結果の根拠を説明することのできるAIが多いことが特徴の一つとなります。企業経営判断や人事採用、金融審査、医療など、人の意思決定が必要だったり、人がAIの判断結果から影響を受けたりするような場面では、AIには、なぜその結果を導いたのかがわかる「解釈性」が求められます。その解釈性を備えているのが「ホワイトボックス型AI」です。

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 それ以外にも、NEC the WISEの適用は様々な業務での見える化、分析、対処までサポートしており、製造現場での検品業務を省力化することはもちろん、レジに店員がいなくてもレジに通さず決済可能な店舗を可能にするなど、世界中の人材不足に貢献しています。

より明るい未来に向けて

 早期の異常検知は従来のしきい値監視のみでは困難なことです。インバリアント分析を導入することで、システムの異常を検知するだけでなく、事前に予測することができ、システム障害の防止につながります。これにより、システムの稼働性の向上やメンテナンス費用の削減に貢献できます。さらに近い将来、NECはインバリアント分析の活用をサーバーやエッジコンピューティングプラットフォーム、飛行後の機体検査、衛星地上局から、「オリオン」のような再利用可能な宇宙船への運用へ展開したいと考えています。

 「我々AIベンダーにとって、“使いやすさ“を求めてAIの開発・改良を進めていくだけでなく、活用者の目的に合わせた教育支援も使命だと感じています。AIはツールに過ぎず、AIを使って今後もパートナーとともに技術を更に発展させ提供していくことで、例えば、エネルギー問題などの大きな社会問題解決に貢献していきたいと考えます。」相馬氏はそう語ります。

 現在のデータ・AI社会でインバリアント分析及びNEC the WISEの適応範囲はますます広がっています。NECの目指す「安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会」をより鮮明に実現するためにNECのAI技術は宇宙の探査や開発だけでなく、私たちの身近な社会課題にも貢献していくことでしょう。

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