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2022年02月22日

東急ホテルズが挑む新しいホテル像
効率化を越えたDXの可能性

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はあらゆる産業を揺るがしたが、なかでも大きな影響を受けたのはホテルのような宿泊業をはじめとするサービス業だろう。外国人観光客が街から消え、国内の人々もリモートワークへと移行し都道府県を越えた出張の機会も減り、ホテルの利用者数は大きく落ち込んでしまった。COVID-19の感染拡大が長期化するなかで多くのホテルが変わろうとしており、さまざまな観点から新たなビジネスのあり方が模索されている。

コロナ禍がホテルの構造を変える

 なかでもいま注目されているのは、DX(デジタルトランスフォーメーション)によるホテル運営の改革だろう。効率的なホテル運営を通じたコストの削減だけでなく、人との接触を減らすことによる安全・安心な空間づくりなど、DXはコロナ禍のホテルが抱える多くの課題を解決する可能性を秘めている。

 「わたしたち東急ホテルズはデジタルテクノロジーの活用を通じて経営のしなやかさを高めていくことに注力しており、チェーン全体で業務の効率化と運営の刷新に取り組んでいます。もともとホテルは固定費が大きく、市場環境の変化に弱かったのですが、コロナ禍を経たこの2年で、自動化やデジタル化による構造改革の取り組みを加速させています」

 そう語るのは、東急ホテルズ 構造改革推進室 DX推進責任者の安住 修氏だ。ビジネスからレジャー・リゾートまでさまざまなニーズに応えるホテルを国内に45店舗展開している同社は、業務のデジタル化に取り組むなかで、顔認証やQRコードで非対面のチェックインを可能にするNECのスマートホスピタリティサービスを現在全国39店舗に導入している。(※)

※一部対象外のホテルがあります。詳細はこちら:https://www.tokyuhotels.co.jp/tcm/webcheckin/index.html

東急ホテルズ 構造改革推進室 DX推進責任者 安住 修氏

 本サービスはNECが有する顔認証技術やデジタルID技術を使って、スマートな“おもてなし”を実現するものだ。ホテルにおいては、利用者が事前に宿泊者情報と顔写真の登録を行えば宿泊当日にフロントのタブレット端末へ顔をかざすだけでチェックインができるようになっている。利用者からすれば他の宿泊客や従業員と接触せずスムーズにチェックインできるようになり、ホテル運営の観点では効率化によって最少人数でのホテル運営が可能だ。安住氏が「チェックイン端末を各店舗に配備するより導入や維持コストが低廉であることも魅力のひとつでした」と語るように、大掛かりなシステムを導入せずとも利用できることは本サービスの特徴だろう。「ホテルのデジタル化」と言われると随所に最先端の機能を備えた新築ホテルを想像してしまうかもしれないが、NECのスマートホスピタリティサービスであれば、既存のホテルであっても、異なる環境や規模に複数の店舗を構えるホテルチェーンであっても、問題なくDXを進められるというわけだ。

宿泊者はフロントのタブレット端末を使って簡単にチェックインができる
宿泊者はフロントのタブレット端末を使って簡単にチェックインができる

変化するニーズへ柔軟に対応

 「コロナ禍以降、都市部ではインバウンドと出張の需要が大幅に減少したことで稼働率が下がり、他方でリゾート地はGo To トラベルキャンペーンの時期や新規感染者が減少していた年末は稼働率が急に上がっていました。急な需要増によって現場の人手不足が生じることもあれば、感染対策のためにロビーに人が滞留しない仕組みをつくる必要もある。状況の変化へ柔軟に対応するためにもデジタル化が求められていたのです」

 安住氏は、コロナ禍によってこれまで以上にさまざまな需要の変化へ対応する必要を感じていたのだと語る。同社はDX推進にあたり、予約からチェックイン、滞在、チェックアウトと利用シーンやカスタマージャーニーを整理しながら何をデジタル化していくか議論を重ねていたのだという。そのなかで、人の滞留がありうるロビーのあり方を変えていくために、スマートホスピタリティサービスが選ばれたというわけだ。

 安定的な経営を行うためにDXは必要不可欠だったが、同時に接客の現場においても変革を求める声は上がっていた。渋谷エクセルホテル東急 客室支配人の兵藤 浩章氏は次のように語り、現場の声を明かす。

渋谷エクセルホテル東急 客室支配人 兵藤 浩章氏

 「コロナ禍を経て、サービスの質を変える必要性を感じていました。以前は従業員が進んでお客さまの荷物をお手伝いし、積極的にお話しすることがご満足されるサービスと確信しておりましたが、今はむしろ従業員がお客さまとの距離を保ち、ご様子を伺いながら接客を行うことでお客さまに安心を与える状況でもあります。他方で感染対策のために室内から紙の案内表示が撤廃されたため、別のやり方でお客さまに館内の情報をお伝えする必要もあり、コミュニケーションの考え方は大きく変わりましたね」

 ホテルを訪れた人々に安全・安心を提供することはもちろん、従業員を感染から防ぐことも重要と考えているという。徹底的な感染対策、柔軟なホテル経営、顧客への快適な体験の提供――顔認証によるスマートホスピタリティサービスは、これら3つの課題に対し、すべてを解決するものだったと言える。兵藤氏はサービス導入によってすでに利用者からは喜びの声が届いていることを明かす。

 「ホテルをリピートしてくださっているお客さまからは、一度顔認証の登録を済ませれば他のエリアでも何度でも顔でチェックインできるため非常に便利になったと感想をいただいております。また、手続きの時間が減って早く部屋に入れてよかったとのお声を頂戴しました」

事前に顔写真をアップロードするだけで顔認証を使えるようになるという
事前に顔写真をアップロードするだけで顔認証を使えるようになるという

ホテルを街へと開いていくためのDX

 安住氏が「わたしたちが詳しく説明せずともご自身のスマートフォンでチェックインする仕組みをお客さまにご理解いただけるようなユーザビリティに腐心しながらUIを構築しました」と語るように、ただ新たなシステムを導入するのではなく顧客の視点に立っていたからこそ多くの人に使われるサービスが実現したのだろう。兵藤氏によれば、こうした顧客中心主義のDXによって従業員側の考え方も変わろうとしているようだ。

 「豊かなコミュニケーションを通じてお客さまに喜んでいただくために働いているホテルの従業員にとって、お客さまとの会話を減らしてしまうDXが受け入れられづらいことがあったのも事実です。しかし、何よりお客さまの変化に合わせてわたしたちも変化していく必要があると思っています。今ホテルは過渡期を迎えていて、新たなサービスを考えていかなければいけません。立地や利便性に頼り切るのではなく、これをチャンスだと思ってお客さまと距離を取りながら提供できるサービスのあり方をみんなで真剣に考えています」

 人々のライフスタイルが変われば、ホテルのあり方も変わっていかなければいけないだろう。これまで多くの人にとってホテルとはビジネスや観光の際に宿泊する場所だったが、「宿泊」だけがホテルの機能ではないのかもしれない。DXは効率化や自動化のためだけに行うものではないのだと安住氏は語り、この機会にホテルのあり方を変えていきたいと続ける。

駅直結の渋谷エクセルホテル東急は街に開かれる可能性を秘めている
駅直結の渋谷エクセルホテル東急は街に開かれる可能性を秘めている

 「DXとは『トランスフォーメーション』ですから、単に業務をデジタル化するのではなく、わたしたちがこれまで想像もしなかったホテルの使い方につながるような変革を起こしていきたいと思っています。そのためにはNECの力を借りる必要もあります。わたしたちはホテルというファシリティをどうすれば余すことなくご利用いただけるのか考えているのです」

 スマートホスピタリティサービスが進化していくことで、ホテルの可能性もさらに広がっていくかもしれない。本サービスは単に顔認証チェックインを実現するだけではなく、空港やレジャー施設、公共交通機関などエリア全体でスムーズな体験を生み出していくことを目指しているからだ。これまでは施設の種類や空間によってサービスも分断されていたが、DXが進めば人も空間もすべてがつながっていく。それはホテルという施設を余すことなく街へ開いていくことでもあるだろう。

 「わたしたちは東急グループの一員として、街づくりにおけるホテルがどのような役割を果たせるのか考えています。国内外のお客さまがご旅行の際にご宿泊いただくことはもちろんですが、この街にお住いの方やこの街で働いている方にもホテルを活用していただきたい。これまでは一般的には15時チェックイン10時チェックアウトという時間軸に沿ってサービスを考えていましたが、ホテルは24時間365日動き続けているわけですし、お客さまにこの空間をもっと使い尽くしていただくためのサービスを考える必要があるのだと感じています」

 DXにおいては、デジタル化によって新たなサービスや体験を創出し、これまでとは異なるビジネスの可能性を切り開いていくことこそが重要なのだ。今、ホテルは街に開かれていくことで新たな空間へと変わろうとしている。街のさまざまな施設をつなぎ快適な体験を生み出すスマートホスピタリティサービスは、ホテルのそんな変革をさらに加速させてくれるはずだ。

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