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地方創生現場を徹底取材「IT風土記」

宮城発 ツイッターから人気スポットを発掘 SNS分析を地域振興に活用

 日々の出来事を気軽につぶやくツイッター。全世界で1日5億件もの投稿があるともいわれている。蔵王連峰のふもとにある宮城県白石市では、市を訪れた観光客の投稿を分析し、観光施策に活用する取り組みを始めている。投稿者の本音が表れるツイッターを分析すると、みえなかった課題が明確になってくる。市では分析結果をもとに新たな観光対策に乗り出している。

まさかこれほどだとは…市も想定外の「モフモフ」人気

 「人気の施設であることは以前から耳にはしていましたが、ここまで反響が大きいとは思っていませんでした。市としても観光振興につなげるために対策を考えないといけないと強く感じました」。白石市地方創生対策室の岡崎祐也対策係長は予想外の分析結果に驚きを隠さなかった。

 仙台の南に位置する白石市は、仙台藩伊達家の家臣、片倉小十郎の居城、白石城の城下町として栄えた町だ。平成7年に復元された白石城は市のシンボルになっている。また、鎌先温泉や小原温泉など趣のある温泉も多く、伝統工芸の弥治郎こけしや短い麺が特徴の白石温麺など観光資源にも恵まれている。そんな定番の観光スポットを差し置き、トップクラスの人気を集めていたのは「宮城蔵王キツネ村」という民間の施設だった。

 「宮城蔵王キツネ村」は東北新幹線白石蔵王駅から車で約20分、人里離れた緑豊かな山の中腹にある。約2万5000平方メートルの敷地に6種類のキツネやウサギ、ヤギなどの動物を飼育。約100頭のキツネを放し飼いにしたエリアがあり、その中に入って直接、触れ合うことができるキツネのテーマパークだ。

約100頭のキツネが放し飼いにされた宮城蔵王キツネ村。訪日外国人観光客の人気スポットだ

 放し飼いエリアでは、キツネたちが元気に野原を駆け回っている。触ってみたいが触ると噛まれるのではと遠巻きに眺めていると、逆にキツネがこちらに近寄ってきた。キツネ同士でじゃれあったり、何の警戒心もなくベンチの上で居眠りしたり。「モフモフ」とした風貌に癒されようと国内外からこの施設を訪れ、来場者数は年間12万人にのぼる。

宮城蔵王キツネ村の放し飼いエリアの入り口。来場者はキツネたちに興味津々

 オーナーの佐藤光寛さんによると、1990年ごろにキツネ好きが高じて開設したこの施設が、ブレークしたのは3、4年ほど前のことだという。外国人観光客がYouTubeにキツネたちの映像を投稿。いたずらっ子のように観光客にちょっかいを出すキツネのしぐさがネットユーザーのハートを射抜き、瞬く間に拡散していったという。

 「噂のきつね村にもいけました…!みんなかわいくてもふもふでした~~~たまらんかった!」

 「冬だときつねたちのモフモフ具合がアップしてさらに可愛い」

 ツイッター上には、「モフモフ」をキーワードに愛らしいキツネの画像が数多く投稿されている。また、「外国人観光客が集まる意外な場所」として、テレビのバラエティー番組でも紹介され、知名度はうなぎのぼり。「ゴールデンウイークには4000人も来場しましたが、駐車場に車が入れず、行列ができてしまうほど。従業員も少ないので、本当にてんやわんやでした」と佐藤光寛さんも対応に苦慮するほどだ。

居眠りするキツネ。「モフモフ」感がたまらないと人気だ
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