

地方創生現場を徹底取材「IT風土記」
秋田発 ドローン、自動運転、IoT…「近未来技術」に懸ける仙北市の未来
SUMMARY サマリー
新たな産業、人材の呼び水に

「近未来技術の担い手となる人材や企業が仙北市に集まり、生活や事業の拠点を置くようになれば、人口減や高齢化を解消し、活気ある街づくりにつながってほしいとの思いもあります」と門脇市長。先端技術が地元に新しい産業を呼び込み、地元に雇用を与え、若い人材が市に定着する呼び水になってくれることに期待を寄せる。
しかし、特区を活用しようという動きはまだそれほど大きくない。市の予算も限られ、昨年度開催したドローン講習会の今年度の実施は見送られた。特区の認定を受け、規制を緩和したものの、民間が活用しなくては、特区の意味をなさない。利用する人材や企業が集まってこそ特区は効果を発揮する。その中で、民間の側から、特区を町おこしに活用しようという動きも少しずつ表れてきた。東京を拠点にコンテンツ設計などのビジネスを展開する「コンテンツ計画」の有坂民夫代表取締役、ビジネスコンサルティング会社「ツクル」の三宅創太代表、地域支援プロジェクトを展開する「創生する未来」の伊嶋謙二代表理事が立ち上げた任意団体「SFPパートナーズ」の取り組みだ。
今年4月には、JR田沢湖駅前の空き店舗を借りて「TAZAWAKOベース」という施設を開設した。会議や講座などを行うスペースのほか、シェアオフィスとして利用できる部屋がある。特区をベースに起業や事業参入を目指す企業の交流や、起業を考えている地元市民らの活動の支援を目指している。

「SFP」は「SEMBOKU FLIGHT PLAN(せんぼくフライトプラン)」の頭文字だ。近未来技術実証特区の認定を受け、仙北市が事業創造計画の策定を公募。以前から市の取り組みに強い関心を持っていた有坂さんと三宅さんが受託し、官民による協議会を組織して今年3月に計画をまとめ上げた。ドローンやIoTに関連した技術の市民への関心を高め、新たな産業づくりや地元企業、市民の自発的な参入・参加を促すためのロードマップを示した。
「一般的なこうした計画を立ち上げても、実現しないまま終わることは少なくない。でも、計画に携わった人間として、この計画を計画のまま終わらせたくなかった」三宅さん。プランを具現化するための拠点として、ますは自分たちから動こうと、協議会のメンバーだった伊嶋さんを巻き込んで、この施設を立ち上げた。家賃はすべて自前。起業のためにこの施設の利用者が増え、ビジネスとして成り立つまで自らコストを負担する構えだ。

7月には中小企業庁の支援を受け、TAZAWAKOベースで「ITセミナー」を4回にわたって開講した。岩手県立大学の近藤信一准教授らを招き、地域振興に関心を持つ市民や起業を目指す地元の経営者や若者らを集め、ITやクラウド活用のノウハウなどを伝授した。
中には、仙北市の特区認定を受けて、ドローン関連のビジネスの起業を目指し、会社を辞め、仙北市に移住した若者も参加するなど3人の期待は少しずつ実現しつつある。
仙北市は規制緩和を活用した複数の事業の認定を受けている。事業や仙北市が提案して承認された、国家戦略特区旅行業務取扱管理者確保事業、国有林野の活用促進特区などだ。
「温泉に湯治と呼ばれるような療養効果があることはわかっているが、病気の治療に効くとまでは言い切れない。ヘルスケアツーリズムを成功させるためには、きちんとした裏付けとなるデータを示すことが必要」と門脇市長は語る。そうしたデータの収集・分析・検証には、ITの積極的な活用が欠かせない。
また、「ヘルスケアツーリズム」の中核の1つとなる玉川温泉は、現在、冬季に観光客を受け入れることができていない、という問題もある。過去に雪崩事故が発生して以来、雪が積もる期間は安全性の判断が困難で、名物である岩盤浴地をやむなく閉鎖しているためだ。例えば山地にセンサーを設置して雪崩を察知するなど、積雪状況に応じた安全利用を進めることができないか。小田野直光地方創生・総合戦略統括監はさらに高度なIT活用可能性を模索中だ。
秋田県は4月1日時点での人口が100万人を割り込んだ。100万人割れは戦後初めてで、ピークだった1956年に比べ26%も減少している。「日本創生会議」が2014年に2040年までに消滅する可能性がある都市を発表し、大きな波紋を呼んだが少子高齢化が進む中、人口減は秋田県だけの問題にとどまらない。それだけに近未来技術の活用で解決を目指す仙北市の取り組みは、人口減に悩む他の自治体の大きな参考になるだろう。
