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2018年08月29日

”物流課題先進国”日本から垣間見える、物流の未来像とは?

 近年の人手不足の影響を、最も強く被っている業界の一つが物流だ。これに加えて、競争の激化、産業構造の変化、荷主のビジネスのグローバル化など、物流業界を取り巻く課題は多い。その課題をいかに解決し、いかに「物流の未来」を創っていくべきか──。物流のプロである日本通運の大塚 健五氏と、NECで物流ソリューションを手掛ける武藤 裕美が、物流の現在とこれからについて語り合った。

リソース不足と競争激化が業界の課題

──現在の物流業界の課題についてお聞かせください。

大塚氏:
 最大の課題は、やはり人手不足とそれに伴うコストの増加です。ドライバーや物流センターのスタッフが業界全体で不足しており、生産性を上げるための取り組みを各社が続けているものの、お客さまにも負担をお願いしているのが現状です。

 もう一つの課題は、競争の激化です。従来は物流会社のお客さまであった流通事業者が自ら物流を手掛けるケースが増えてきています。またITベンチャーが、トラックや倉庫などを所有しない、いわゆる「ノンアセット型モデル」で業界に参入してきています。

武藤:
 トラックが不足しているという問題もあります。それを解決するために、荷主である企業側が、会社や業界の壁を越えて同じ便で各社の商品をまとめて配送する「共同配送」の仕組みをつくろうという動きも始まっています。

 もちろん、荷主の業種や荷物の種類によって配送に求められる品質レベルは違ってきます。また、そのときのトラックの積載率や、各社の基準および配送タイミングをいかに合わせて効率的な輸配送を実現していくかがこれからは求められてくると思います。

※積載率:トラックに載せられる最大積載量に対する、実際に積載した荷物の重量の比率。数値が高いほど輸送効率が良いことを意味する

大塚氏:
 現在日本国内を走っているトラックの3割は空車であるという調査結果もあります。また、積載率が非常に低いトラックがあるのも事実です。共同配送はそういった問題の一つの解決策ですね。

日本通運 事業開発部 専任部長
大塚 健五氏

武藤:
 荷物を運んでいったトラックが、帰りは別の荷物を載せて帰ってくる。またそこには、いろいろな企業の荷物が含まれている。そんな仕組みができるのが理想です。

大塚氏:
 その仕組みに必須なのはマッチングです。トラックの空き状況と荷物の量がうまくマッチすれば積載率は上がります。そのためには需給バランスに対応することが必要になります。例えば、食材や日用雑貨は天気や曜日により輸送量が大きく変化します。そこで、AIを活用し、気象情報などを分析して、市場の需要を予測することができれば、商品を前倒しして輸送するといったことが可能になり、輸送量を平準化することができるでしょう。

 もちろんそれ以外にも物流事業者として、やれることは残されています。人が増やせない中、先端技術を活用した自動化や省人化をいかに積極的に取り組んでいくか。これは今後も重要なテーマとなるでしょう。

物流を起点にサプライチェーン全体を最適化する

大塚氏:
 もう少しマクロな視点で見ると、お客さまの産業構造がダイナミックに変化していることも一つの課題といえるかもしれません。クルマを例に取れば、ガソリン車からハイブリッド車へ、それがさらに電気自動車へと進化しています。そうなれば当然、部品の種類も、生産拠点の場所も、荷物の運び方も変わってくる。それにいかに迅速に対応していくかが私たち物流会社に求められています。

武藤:
 企業のグローバル化が加速している点も重要なポイントですね。多くの企業の製造拠点、在庫拠点が世界に分散するなど、サプライチェーンがグローバル化・複雑化しているからです。

NEC 交通・物流ソリューション事業部 バリュークリエイション部 部長
武藤 裕美

大塚氏:
 これだけサプライチェーン全体が複雑化すると過剰な在庫を抱えるリスクも増え、それが企業の経営を圧迫します。そこで、輸送中の荷物を含め、どこにどれだけ在庫があって、それをどう動かしたらいいのかをリアルタイムで把握したい、見える化してほしい──。そういったご要望がお客さまから寄せられています。

──物流全体あるいはサプライチェーン全体の見える化をしたいという要望ですね。

大塚氏:
 その通りです。それにお応えするために、当社はこの数年、サービスラインアップの拡充に注力してきました。

 例えば、国境を越えて広がるお客さまのサプライチェーンを物流量から分析し、拠点の数や場所を見直すことでサプライチェーン全体を最適化するサービスはその一つです。

武藤:
 「サプライチェーン全体の見える化」はNECのようなメーカーにとってたいへん重要な課題です。一般的に、製造業にとって物流は「コスト」と捉えられていますが、当社は物流を「武器」にして、その課題を解決するための改革を進めてきました。

 お客さまからPCやサーバのご注文をいただいたら、速やかに納期回答し、次に物流(便)を確保します。そして、物流の動きに合わせて生産ラインの予定を組む。さらにそれに合わせて部品調達のスケジュールを組み立てる──。このように、オーダから調達までを連動させる仕組みづくりが、この改革のポイントでした。この仕組みにおいて、物流は「リズムをとる」という重要な役割を果たしています。

──「リズムをとる」役割とは具体的にどんなことを指すのでしょうか。

武藤:
 この改革に当たってNECは、鉄道や路線バスのような「定時・定ルート」の物流網をつくりました。そして、それにすべてのプロセスを合わせてサプライチェーンを組み立てました。「製造に物流を合わせる」のではなく、「物流に製造を合わせた」のです。
製造現場では、作業は1秒の単位で改善を進めていますが、それ以上に「流れ全体を同期させること」を大事にしています。具体的には構内搬送(みずすまし)のサイクルを30~60分の単位にし、生産ラインと出荷便とを小刻みに同期させることで効率的にジャストインタイムを実現しています。物流を単独で考えず、「調達、生産、構内物流、構外物流」を一貫した流れと捉え、出荷便に合わせた「リズミカルなものづくり」を重視している点が改革の大きなポイントといえます。

 この改革によって、物流がボトルネックになって納期が延びてしまうことは一切なくなりました。オーダから納品まで3週間くらいかかっていたリードタイムを3日程度まで短縮することに成功しています。また、在庫が減って、保管料などが削減されたことにより、キャッシュフローも大幅に改善しました。

企業間連携によって新しい価値を生み出していく

──両社ともにさまざまな取り組みを進めていますが、こうしたノウハウを物流業界の課題解決に向けどのように活かしていくつもりですか。

武藤:
 生産(造る)、物流(運ぶ)、販売(売る)をバラバラに考えるのではなく、各プロセスを貫く仕組みをつくって、人やモノ、プロセスをつなぎ新しい価値を提供する「バリューチェーン・イノベーション」を実現したい。それが私たちの目標です。その実現に向けて、二つの側面からアプローチをしていきたいと考えています。

 一つは最新技術を有する「ICTベンダー」としてです。例えば、NECはさまざまなAI技術を有していますが、その中の需要予測に関連したAI(異種混合学習技術)を活用し、「需給最適化プラットフォーム」を提供しています。これはサプライチェーン全体で必要な発注数や在庫数を予測し、最適な生産数をコントロールする仕組みです。これにより、ムダのない最適な生産・販売をサポートします。

 さらに私たちはその生産数や販売数の計画をもとに、最適なリソースの配備、最適な輸送ルート、そして最適なサプライチェーンネットワークを実現するための「ロジスティクスプラットフォーム」の提供に向けて取り組んでいます。

NECのロジスティクスプラットフォーム
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──もう一つは何でしょうか。

武藤:
 サプライチェーン改革のノウハウを活かし、お客さまと共創していく取り組みです。それが、「NEC ものづくり共創プログラム」です。もともとはさまざまな企業とともに日本のものづくりの課題を解決していく場として立ち上げたものですが、先ほどご説明したように物流の最適化も、ものづくりの課題の一つとなるからです。

大塚氏:
 日通グループも「NEC ものづくり共創プログラム」に参加しています。これまで私たちは、すべての製造業のお客さまに対し、業務を完全に理解した最適なサプライチェーンの提案をできていたとはいえません。

 「NEC ものづくり共創プログラム」に参加することにより、NECの知見をお借りしながら、製造業のサプライチェーン、とりわけ調達物流のモデルづくりにチャレンジしたいと私たちは考えています。また、日通とNECはともに、精密電気機器や半導体、電子部品の取り扱いに長けた「日通NECロジスティクス」の親会社でもあります。グローバルな物流ネットワークとそれを運用するノウハウ、改革のノウハウと、ICTベンダーとしての力。この3つが組み合わさることで、新しい物流サービスを生み出すことができると私たちは考えています。

──幅広い課題解消や顧客ニーズに対応するには単独で提供するだけでなく、両社のノウハウを掛け合わせることが重要ということですね。

大塚氏:
 新しい価値を生み出していくには、さまざまなプレーヤー間の連携が求められます。私たちは物流会社なので、ICTやAIへの巨大投資はなかなかできません。その部分でNECの力を借りることができれば、ICTやAIを活用した物流の仕組みをつくることができるでしょう。

 ほかにも私たちは、ベンチャーなどとアライアンスを組みながら、ドローンによる倉庫内在庫管理、倉庫の自動化や省人化、リモートでの運行管理などに取り組んでいます。将来的には、自動車メーカーやICT企業と連携しながら、運搬トラックの無人走行、隊列走行にもチャレンジしていくことも視野に入れています。

 私たちは、自ら技術開発をすることはできません。NECをはじめいろいろな会社と連携し、それを有効にビジネスに取り入れていく。それが私たちのスタンスです。

日本通運とNECは2018年9月11日~14日まで東京ビッグサイトにて開催された「国際物流総合展2018」に出展いたしました。

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