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2021年01月07日

しなやかで強靭なサプライチェーンがつくり出す、New Normal時代のロジスティクス

 COVID-19(新型コロナウイルス感染症)は社会のシステムを揺るがし、“New Normal”な時代への変化を迫っている。なかでもコロナ禍を通じてサプライチェーンの分断など多くの課題が浮き彫りになったロジスティクスはどこへ向かうのだろうか。NEC Visionary Weekにおいて11月26日に実施されたロジスティクスセッションでは、これからの社会を支える新たなロジスティクスの姿が提示された。

ロジスティクスが直面した課題

 「COVID-19を受けて、いまロジスティクスには大きな変化が生じています。物流センターでのクラスター発生による輸配送遅延の発生のようにトラブルも多い一方で、置き配の導入や在宅勤務の緩和、チャーター機の活用など、新たなシステムへの移行も進んでいる。New Normal時代のロジスティクスを考えるうえでは、物流現場とサプライチェーン、ふたつの領域の変化が重要になっています」

 NEC 交通・物流ソリューション事業部の梅田陽介はそう語り、ロジスティクスが直面している課題を明かす。労働力不足については2030年に用意した商品の30%が運べなくなると言われており、トラックの平均積載率も年々下がっている。梅田は労働力不足をはじめとする従来の課題を解決するために効率化を進める必要がある一方で、コロナ禍においてはより広い視野をもって事業継続を進めるための取り組みが求められていると続ける。

NEC 交通・物流ソリューション事業部 梅田 陽介

 例えば効率化を進めるためには、自働化・省力化による労働力不足への対応、過剰在庫の削減やリードタイムの短縮が求められる。一方で、COVID-19が引き起こしたサプライチェーンの分断や急激な需給変動に対応しつつ事業を継続していくことも必要になる。物流現場では労働環境の安全を確保するとともに過度に人へ依存しない仕組みづくりを進め、サプライチェーンでは事故の迅速な検知やリスク対応力の強化、需給に応じたリソース最適化が求められる。「いま変わっていることと今後変わっていくこと、両者に対応していかなければいけません」と梅田が語るように、これからはデジタル化を通じてふたつの価値を追求していかなければいけないだろう。

 「COVID-19以降も新たな感染症の流行は起こりえますし、金融・経済危機もロジスティクスに大きな影響を与える。日本においては大規模な自然災害も起こりうるでしょう。New Normal時代のロジスティクスを考えていくことは、単にCOVID-19へ対応するだけではなく、輸出入から納品にいたるまで、どんな時もロジスティクスを止めない仕組みをつくるということです。」

Under COVID-19におけるニュースとテーマ・トレンド
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コロナ禍において物流ではさまざまな変化が生じている

デジタル化はどう物流を変えるのか

 現にNECでは、デジタル化を通じたさまざまな取り組みが進んでいるという。例えば物流現場において行われているのは「通関業務のデジタル化」「顔認証によるスムーズな本人確認」「物流センターのデジタル化・省力化」の3つだ。

 通関業務のデジタル化においては、AI-OCRによってこれまで紙がベースとなっていた膨大な貿易書類を電子化し通関業務の効率化が進められている。この取り組みはデジタル化や効率化を通じて、New Normal時代へ向けた働き方改革にもつながるものだろう。顔認証によるスムーズな本人確認は、NECが有する世界No.1の認証精度を誇る顔認証技術を使うもの。物流センターの入退室管理やドライバーの本人確認を行うことで、より正確で迅速な本人確認を実現するという。この取り組みも作業の効率化を進めていると同時に、リモートワークや非接触の業務が求められる時代へ応答するものだ。物流センターのデジタル化・省力化では、画像認識やロボティクスの活用によって、物流現場の安全性を確保するとともに省力化・効率化が同時に推進されているという。「テクノロジーによって全自動化を目指すのではなく、人とAI・ロボットが協調する物流現場をつくろうとしています」。労働力不足への対応や物流コスト削減を実現しながら、密集環境を避けるとともに作業の属人性を下げる物流現場は、新たなスタンダードになっていきそうだ。

 サプライチェーンにおいてはドライバー不足やトラックの積載率低下がかねてより問題となっており、「グローバル物流の可視化」「サプライチェーンの需給最適化」「積載率の可視化」によって変革が進められている。

 グローバル物流の可視化は、これまで分断されていた情報をつなぐことで、工場出荷後の洋上在庫も可視化し過剰在庫を削減できるという。サプライチェーンの需給最適化では、NECの異種混合学習技術が力を発揮する。とくにCOVID-19を通じてさまざまな条件が日々変わりうる現在、フードロスや労働力不足を解消するうえでも需給変動に応じた在庫・リソース配置の重要性は高まっている。積載率の可視化も、これらふたつの取り組みとその価値は通底している。画像認識によってトラックの積載率を可視化し、積載率の低いルートを再編できるようになれば、需給変動に合わせて物流をアップデートしていくことができる。「複数社のデータを共有すれば、物流共同化、共同配送も進んでいくはずです」。そう梅田が語るように、New Normal時代においては企業の壁を越えた物流が現実のものとなるのかもしれない。

New Normal時代のロジスティクスソリューション
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部分ではなく全体を考えることが新たなロジスティクスをつくりあげる

すべての人々に安心と安全を

 NECの取り組みから見えてくるのは、目の前の課題を解決するだけではなく、ロジスティクスの未来を見据え、すべての人々と産業が公平にサービスを享受できるような社会の仕組みをつくろうとしていることだろう。

 「情報格差のない公平な社会をつくるためには、メーカーから消費者までサプライチェーン全体の情報をつなぐことで個別最適だけでなく全体最適を実現するプラットフォームをつくる必要があります」と語るのは、NEC 交通・物流ソリューション事業部の武藤裕美だ。武藤はこのプラットフォームを実現するために「マーケットニーズと情報の共有」「物流リソースの最適配備」「人と協調するAI・IoTによるモビリティの進化」が必要だと続ける。

 例えば「マーケットニーズと情報の共有」においては、産業の枠を越えて需給最適化プラットフォームを提供することで製造エネルギーの削減や二酸化炭素の排出量削減、フードロス削減などいくつもの課題解決に取り組んでいる。現にAIを活用した需給バランスの予測を通じて、予測精度は約40%改善されているという。「物流リソースの最適配備」においては、AIによって庫内作業の見積もり業務を非属人化し、入出庫作業ピークを事前に把握して作業負荷を平準化。さらには画像認識を使うことで正確な出荷検品作業を進めるとともに、物流センターの作業工程全体も見直されており、こうした検品作業の一括管理により全体で3割程度の工数削減が実現されている。効率化のためには納品先との連携も必要になるため、最終的な目的の共有や各ステークホルダーへの利益を担保しなければならない。ここでも重要になっているのは物流のエコシステム全体を巻き込んでいくようなシステム設計だ。くわえて「人と協調するAI・IoTによるモビリティの進化」においては、モビリティによってすべてを自動化するのではなく人と同じ空間で稼働できるロボットの設計を進めているほか、車外・車室内状況見守りのシステムをつくることで、効率化のみならずドライバーの安全確保も進んでいる。これからのロジスティクスを支えるシステムをつくるためには、モビリティも進化させなければいけないというわけだ。

NEC 交通・物流ソリューション事業部 武藤 裕美

共創から生まれるプラットフォーム

 NECが掲げている「NEC Value Chain Innovation」というビジョンのなかでは、「Intelligent Logistics & Mobility」として「安全・安心な人とモノの移動」をデジタルテクノロジーによって支えることが目指されている。例えばNECのつくるMobility IoT Platformはモビリティそのもののデータを扱うだけではなく、「インフラ協調モビリティ」と呼ばれるように車両と信号のようなインフラを連携させることで事故の抑止や渋滞緩和が目指されている。New Normal時代のロジスティクスを支えていくことは、スマートシティのあり方を考えていくことでもあるのだろう。

マーケットニーズと情報の共有/ロジスティクスの進化
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情報の共有がこれからのロジスティクスの鍵を握る

 武藤によれば、こうした取り組みは単に既存の課題を解決するのみならず、新たな価値の創出にもつながるものだという。例えばNECがインドで行っている取り組みでは数年前からインド全土の港と都市をつなぎコンテナの位置情報を可視化してきた。この取り組みによって滞留時間や経路の改善指示が実現したのはもちろんのこと、新たな課題が見つかることでロジスティクス全体の進化が促されている。個別最適から全体最適へという武藤の指摘のとおり、全体最適を目指さなければ生まれない価値があるはずだ。

 「ひとくちにサプライチェーンの情報共有といっても、日本ではデータを共有したがらない企業も少なくありません。こうした状況を変えるためには、産業や業種を越えてすべてのステークホルダーが全体を変えるための大きな目的を共有することが重要ですし、データを共有してもいいと思える安心感をつくらなければいけない。みんなで歩調を合わせながら議論していけるための場作りも求められるでしょう。そのためには、お客様とベンダーという関係性ではなく、NECが多くの企業のみなさまのパートナーになっていくことが重要になっていくはずです」

 New Normal時代のロジスティクスとは、巨大なプラットフォームの寡占によって実現するものではない。多様化する社会課題や顧客ニーズに応え、人とモノ、モノと情報、企業と企業、さまざまなものをつなぎ合わせた共創の先にしか、New Normal時代を支えるロジスティクスは立ち現れないだろう。

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