2016年10月28日
wisdomイベント アフターレポート
本間浩輔氏×中原淳氏と考える「会社の中のジレンマとこれからの働き方」
部下のことを本当にどれだけ知っているのか?
中原氏:
本書では、ヤフーで取り組んでいる「1on1ミーティング」と「ななめ会議」が紹介されています。反響があった箇所なので、簡単に内容を説明していただければと思います。
本間氏:
まず、「1on1ミーティング」は、上司と部下が約30分間行う1対1の面談のことです。
中原氏:
かなり長いですよね。1人の上司が4〜5人抱えているとして、1週間のうちの半日は部下との面談に費やすことになります。

東京大学総合教育センター准教授
本間氏:
普段の業務の中で上司が部下の話を聞く時間は、あまり多くありません。週1回は膝を突き合わせてじっくり話し、部下が直面している課題に向き合おうという趣旨で1on1ミーティングを始めました。しかし、なかには自分のことを語り出してしまう上司もいて(笑)。30分間、自分のことばかり話して、「ああ、すっきりした」では、意味がない。1on1ミーティングが異様に好きな上司を、「1on1おじさん」と呼んでいます。
中原氏:
そういう人もいそうですね(笑)
本間氏:
1on1ミーティングがビジネスの生産性を上げるものになっていなければ、「なんで、あの人はいつも面談ばかりしているんだ」と周囲から不満が噴出するようになる。だからある程度、こちらで型を示し、それに沿って実施してもらっているほか、部下が上司の1on1ミーティングを評価して、報告する仕組みも作っています。しかし、いろいろ問題がありながらも、アンケートを取ってみると、80%以上の部署で1on1ミーティングが継続されていることがわかっています。
中原氏:
現場が効果を実感している、と。
本間氏:
やはりたっぷり時間をとって、ちゃんと部下の話を聞く時間って、普通の会社ではないのかもしれません。たとえば、部下がどう褒められたらうれしいと思うかなんて、意外と知らないですよね。みんなの前で褒められるのがうれしい人もいれば、1対1で褒められるのがうれしい人もいる。それくらいの情報も知らないで上司が対応しても、結局、自分のパターンを部下に対して押し付けることにしかならないと思っています。
「ななめ会議」が“吊るし上げ”にならないために

本間氏:
「ななめ会議」は、たとえば私がマネジャーだとすると、私がいない状態で私の部下たちが人事などの第三者に対し、「本間さんにやめてほしいと思っていること、やってほしいと思っていること」を話します。その後、部下たちが退出し、私が入室。ホワイトボードに書き出された部下たちの発言について、第三者と話し合います。そして、部下たちに入室してもらい、全員が集まったなかで私が今後の行動計画を発表するというものです。
中原氏:
本間さんだったら、たとえばどんなことを言われたりするんですか?
本間氏:
「興味のありなしを、わかりやすく態度で表すのはやめてくれ」と言われました。「興味がないときは座り方がおかしくなる。そういう態度を取られると、とても傷つくからやめてほしい」と(笑)。要するに、部下が上司に言いにくいことを、第三者を通じて伝える。そのフィードバックを受けて、上司はマネジメントを変えていくという仕組みです。
中原氏:
フィードバックを受けて、どよーんと凹んでしまう上司はいないのですか?
本間氏:
ダメな上司は「犯人探し」「言い訳」をします。フィードバックの重要さを知っている私でさえも、やってしまうことがある。それだけ耳が痛い指摘が集まるということです。
中原氏:
ここまでの議論で疑問に思ったことがあれば質問をお受けしようと思います。3人1組になって自己紹介し、感想をお話しください。その上で、質問を考えていただければと。
──10分間、参加者同士で討論する。
中原氏:
それでは、時間になりましたので、質問をお受けしたいと思います。
男性参加者:
ご著書に感銘を受けて、私の職場でも「ななめ会議」を試しています。しかし、実際にやってみると、やっぱり上司が傷ついてしまうことが多い。たとえば、私だったら「オフィスで気持ちよさそうにくしゃみをしている」といった、本当にフィードバックする必要があるのかわからないことまで言われてしまいました。「ななめ会議」を実施するうえでフォローしていること、または会議の組織での活かし方があれば教えてください。
本間氏:
やはり、人事部などが担当するファシリテーターが重要になると思います。「ななめ会議」では、本当に上司が抱えている本質的な問題から、貧乏ゆすりなどの些細な癖までがフラットに並んでしまいます。「ななめ会議」の結果から本質的な上司の課題を抽出して、どのようにきちんと行動計画に落とし込み、どのように実行させていくか。たとえば、好き嫌いが激しく、コミュニケーションを取る部下が偏っているのが問題ならば、「どの部下とコミュニケーションしたのか正の字を書いて数え、偏りをなくしていく」というくらい具体的な行動計画を作る。抽象的な課題に対して、具体的な計画を作り、検証していく仕組みを作るのが重要です。そうしないと、いわゆる「居酒屋会議」で終わってしまいます。
中原氏:
ファシリテーターがしっかりしていないと、ただの吊るし上げになってしまいますからね。
本間氏:
たとえば、「たまに機嫌が悪い」とフィードバックした人がいました。これでは直しようがないですし、本人は悩んでしまいます。そうではなくて、「月曜日の午前中は機嫌が悪い」「忙しい時に送るメールの返信が不機嫌」などと具体的に指摘しないといけません。