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2017年05月11日

CeBIT2017
開催国のドイツ、パートナー国の日本。最新テクノロジーは、両国が抱える課題、そして世界の課題へどう貢献するのか?

「ステレオタイプなVR」イメージを一掃するドイツのVR

 産業向けの展示が多い中、バーチャルリアリティ/仮想現実(VR)のセクションでは、ドイツのエンターテインメント性の高い先端技術が多く展示され、ドイツ企業の意外な一面が見られた。

 ケルンの企業、Evrbitが開発したVR Syncは、何千、何万ものVRデバイスを同時に連動させ、同じVRコンテンツを、1000分の1秒のズレもなく同期・共有させることができる。モバイルアプリでどこからでもコントロール可能。ボタンを押すだけで、スタジアムにいる人全員を、同時に同じ仮想空間に連れていくこともできる。デジタルのソーシャル化を意識したこの技術は、エンターテインメントのみならず、様々な分野にも応用できるだろう。

「医療」と「調査」ロボットに括目

 ロボット技術のコーナーは、日本とドイツのニーズの違いが顕著に出た。ドイツの企業では調査、安全、そして業務自動化がテーマであるようだ。その中でもひときわ目立っていたのが、ドイツ人工知能研究センターで、宇宙探査に関わる作業のために開発されたCAPIOパッシブ型エクソスケルトン。着用者と同じ動作を、AILAというロボットがするものだ。

 一方、日本のブースでは、医療向けロボットなど、人間とのコミュニケーションに重点を置いたロボットが多く見られた。

テクノロジーパワーを世界の人々のために

 テクノロジーで国内の社会課題を解決しようとしているドイツと日本だが、自国だけでなく、飢餓や飢饉、伝染病など、グローバルの課題解決にも取り組んでいる。その中でも興味深かったもののひとつに、ザールラント大学とCuretisという企業が行っているバイオインフォマティクスの研究だ。バイオインフォマティクスとは、情報技術を生物学に応用する、近年急速に成長している分野である。ここでは、データ分析がどう医療を手助けするかの展示がされていた。世界で最も喫緊の課題の一つである『抗生物質耐性』。Curetisとザールラント大学の研究では、適切かつ効率的な支援が現地にできるよう、ここでの研究成果を途上国とも共有している。

IoTインフラへの果敢な挑戦

 両国はテクノロジーで世界をけん引するも、イノベーションについて保守的との指摘もある。先述のディルク氏は「ドイツはもっと勇気を持ってイノベーションに挑むべき」と話す。

 同カンファレンスの大きなテーマのひとつでもあった、モノのインターネット(IoT)に関するパネルディスカッションでも、欧州の市場の保守的な姿勢について指摘された。フィリップス・ライティング社のキース・ヴァン・デル・クラウVPは、消費者からの信頼性の低さと、業界全体の標準化に消極的な姿勢が相まって、IoTという意欲的な技術が、統一プラットフォームのない、夢物語になってしまうのではないかと話した。

 一方、NECの遠藤会長は、大企業が蓄積してきた膨大な知識は、今後のIoTを推進させると話す。遠藤は、大企業同士が専門家スタッフのスキルを投じることで、「中小企業もIoTにアクセスできるような環境が整うだろう」と語った。

ドイツと日本:異なる文化の産業がひとつのゴールに向かって

 方法やアプローチは違うものの、ドイツと日本の協力関係はますます揺るぎないものになっている。今回のCeBIT 2017がこれからもこのパートナーシップが続くことを物語った。

 マティアス・マハニック、ドイツ連邦経済・エネルギー省次官は、「日本は、デジタル化を進めることが、国家の経済発展に不可欠であることを理解している数少ない国だ。(特にデジタル産業において、)日本とドイツで協力し合うべき分野はたくさんあると感じている」と語った。

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