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世界のフロント・プレイヤーが集結したFIN/SUM WEEK 2017

フィンテック成功のカギは、ユーザーのカルチャーにタッチできるか

左から、モデレーター:Pat Patel(Money2020 アジア&ヨーロッパ コンテンツディレクター)、ポール・チャップマン(マネーツリー代表取締役)、ヨビー・ベンヤミン(Yobie Benjamin Token CTO Emeritus)

 フィンテックの今後を左右する技術では、API技術とブロックチェーンが挙げられる。API技術は新しいものではない。マネーツリー代表取締役であるポール・チャップマンは「オンラインビジネスでは10年前から活発に使われていたがAPIがフィンテックでは遅れたのは、個人データに触れることから規制が厳しく、イノベーションが難しかったから」と言う。が、「現在のAPIはセキュリティも含まれており、例えばセキュリティキーによりトラスティッドユーザーであるかを認識することが可能になっている」。一方、TOKENのヨビーCTOは「APIは完璧ではない。どれもが同じセキュリティレベルにあるわけではない」と警告もした。ブロックチェーンも同様だが、フィンテックにおいて個人データに触れることは不可避である。逆のフェーズから見れば、個人が使う金の動きがもたらすデータ収集こそがフィンテックが取り組んでいる最大のゲームであるとも言える。NECの岩田太地 フィンテック事業開発室長は、クロスオーバーセッションで「メガバンクでは、すでに取り扱い商品は金融ではなく情報であり、銀行はそのためのプラットフォームであるという認識」と言っている。そこで大きなテーマとなるのがセキュリティである。同じくNECの新野隆 代表取締役執行役員社長兼CEOは、国内コグニティブではトップのAIを活用したセキュリティ技術について語った。顔認証技術は世界一であること。また、AIを用いた不正取引の検知については、SBI証券などで実証実験を進めているという。こういった技術力を持つベンダーの存在は、日本のフィンテックにとって幸いである。

代表取締役 執行役員社長 兼 CEO
新野 隆

 それでもフィンテックが完璧な安全の達成を待つことは難しい。ではどうするのか。今回のFIN/SUM 2017で行われたディスカッションに出てきた「カルチャー」が大きな意味を持つことは想像に難くない。利便性への欲求も、プライバシーへの懸念も、同様にユーザーのカルチャーによっている。それをどう動かすことができるのか。ウィーチャットの起爆剤がお年玉とゲームであったように、また、個人ユーザーのITサービス普及が遅れている日本でも「スマートフォン・ゲームにおける課金は世界トップクラス」(丸山弘毅フィンテック協会代表理事)であるように、それは意外なところから始まるのかもしれない。

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