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FinTechの最前線を体験する
~世界最大級のFinTechピッチイベント『FinovateFall 2017』速報~

2017年10月04日

 2017年9月11~14日、ニューヨークにて世界最大級のFinTechピッチイベントFinovateFall 2017が開催されました。今回のFinovateでも、米国企業を中心に世界11ヶ国から集まった76社のFinTechスタートアップ、IT企業らが自社サービスの紹介を行いました。また今回初の試みとなる、有識者によるパネルディスカッション、アナリストやベンチャーキャピタルによるプレゼンなど、ピッチ以外の内容も盛り込まれ計4日間での開催となりました。この記事では、初日・2日目に行われたピッチの中で特に印象的だった企業をご紹介します。

Finovateとは

 FinTech企業(スタートアップ・大手IT企業)らが、1社当たり7分間という枠の中でビジネスアイデア・プロダクト紹介を行うピッチイベントで、FinTech関連ピッチイベントの中では世界でも最大級です。2007年秋にニューヨークでの第一回開催を皮切りにヨーロッパ・アジアでもそれぞれ定期的に開催されています。さらに今年の12月には中東屈指の金融センターであるドバイでの初開催を予定しており、FinTechに対する世界的な注目度の高まりとともにその規模を拡大し続けています。

登壇企業が並ぶネットワーキングエリア

 ここ数年、FinTechベンチャーによって提供される製品・サービスの範囲は急速に拡大しています。決済や貸出、送金といった金融の主要機能だけでなく、バリューチェーン全体にわたる取り組みへと移り変わっています。米コンサル会社のMcKinsey & Companyによると、FinTechの製品・サービスの範囲は「決済」「リテール向け」「中小企業向け」「資本市場・投資銀行業務」「資産管理」「保険」と、それらを支える「運用/インフラ」の7つのカテゴリーに分けられ、細分化すると30項目以上にまで広がっていると述べられています(1)。その一翼を担う創業して数年のベンチャー企業は依然として多く、FinovateFallに登壇した企業の中で、2013以降の創業が半数以上(2)、Finovate全体(ニューヨーク以外での開催も含む)を通しても初出場の企業が約半数を占めるという(3)、まさにFinovateが、こうしたベンチャー企業のビジネス機会創出・拡大の場として重要視されていることが伺えます。

(1) http://www.mckinsey.com/industries/financial-services/our-insights/bracing-for-seven-critical-changes-as-fintech-matures

(2) 主催者からの情報を元に集計

(3) 主催者からの情報を元に集計

今年の傾向

 FinovateFall 2017では決済・融資・投資領域のソリューションやそれを支える周辺業務の効率化を提案する76社のFinTech企業がピッチを行いました。

 4月にシリコンバレーで行われたFinovateSpring 2017と比較すると技術的な革新性よりも、身近さや便利さなどサービス面を強調する企業が多い傾向にあります。

登壇企業一覧

登壇企業の紹介

 今回のFinovateでも例年と同様、Disruptive(破壊的)なサービスというよりは金融機関とのコラボレーションを中心としたサービスが大半を占めていました。その中でも印象に残った企業を紹介します。

全てのデバイスを決済端末へ Jiffee(本社:ポーランド)

 FinovateFall 2017では、参加者投票により7社のBest of Showが選ばれました。その中の1社であるJiffeeは、Bluetooth技術を利用した決済ソリューションを提供する企業です。買い物客は自分の携帯端末を使用でき、店側は携帯電話・タブレット端末・PCが利用できるほか、既存のPOSレジや決済端末も専用のUSB Jiffee Bluetoothアダプター(写真中の赤い装置)と接続することでこのサービスを利用できます。「人々が大切にしているのは"決済"ではなく"利便性"」と語るCOOのZatorski氏からは、Jiffeeの使い易さへの自信が溢れていました。

左:既存の決済端末との通信 右:携帯電話同士の通信

リアルタイムでのニュース分析 YUKKA Lab(本社:ドイツ)

 YUKKA Lab社はニュース情報をリアルタイムで分析し、市場動向の洞察を即座に配信するサービスを提供しています。企業や株式市場にとって重要な情報のフィルタリングや、どのトピックが肯定的でどのトピックが否定的な意味を持つか、などの分析を神経言語プログラミングと機械学習のアプローチを用いた独自のアルゴリズムにより実現しています。現在は英語とドイツ語にのみ対応とのことですが、今後は対応言語も拡充していきアジアへの展開も検討しているようです。

YUKKA Labのプレゼンの様子

キャッシュカードなしで現金引き出し Mastercard(本社:アメリカ)

 クレジットカードの大手、マスターカードは、(カードを利用することなく)携帯端末のみでATMから現金を引き出すサービス「MasterCard Cash Pick-Up」をテスト中であると発表しました。このサービスは携帯端末のテキストメッセージを利用し、現金の受取時に必要な注文番号(有効期限付き)をやり取りするもので、カードを用いないためスキミング対策にもなります。想定される利用シーンはカードを紛失した場合や災害時の救済費用支給など緊急時だけでなく、日常の個人同士の送金にも利用できます。

 クレジットカード会社であるマスターカードがカードレスの利便性を訴求するサービスを模索しているこの取組みは、既存のサービスに捉われずに顧客によりよい金融サービスを提供するという、FinTechの本質を突いた好事例であるといえるでしょう。

左:Mastercardのプレゼンの様子 右:デモに用いられたATM

 またこのようなカードレスATMの取組みは米大手銀行においても増えており、NFC搭載スマートフォンを活用した同様のサービスをBank of Americaが2016年夏頃から展開しているほか、Wells Fargoは今年3月に全米約1万3,000台のATMからカードなしで入出金できる新サービスを発表しました。今後も同様のサービスは拡大していくものと予想されます。

 今後も世界各地で開催されるFinovateから、その土地土地で特色のあるサービスが発表されることに期待が高まります。

Best of Showに選ばれた企業の代表者達

※写真:筆者が会場にて撮影

山口 博司

NEC Corporation of America
Business Development Manager

システムエンジニアとして金融機関向け業務アプリケーション開発・システム企画を経て、2016年6月よりシリコンバレーにて米国発の新技術・サービスの調査、活用の企画・推進に従事。

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