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第1回:デジタルトランスフォーメーション実現の鍵を握るNEC Smart Connectivity

NEC Smart Connectivity Day レポート

 ―「社会や産業を取り巻く環境が劇的に変化する今、これまでのやり方や仕組みの限界があらわになりつつある」。このような課題意識に立って、先ごろNEC Smart Connectivity Dayがオンライン開催された。あらゆるものを“賢く”つなぐことで、NEC Smart Connectivityが拓く社会やビジネスの未来とはどのようなものなのか。全4セッションの内容をシリーズでご紹介し、その可能性を紐解く。

第3のニューノーマルとそれがもたらす変化

 COVID-19をきっかけとした社会の大きな変化は、「ニューノーマル」という言葉で表現されており、現在のニューノーマルは第3のニューノーマルとも呼ばれている。第1のニューノーマルは2000年代初頭のネットワーク社会の到来、第2のニューノーマルは2009年のリーマンショックによるもので、いずれも社会経済やビジネスモデルに不可逆的な変化をもたらした。「今回の第3のニューノーマルの違いは、より人に関わる変化、すなわち生活様式の変化であることだ」。NEC執行役員の網江貴彦はセッションの冒頭でこう語り、現在のニューノーマルが過去と比べ、より生活のすみずみにまでドラスティックな変化をもたらすものであると指摘した。

 仮にCOVID-19が無かったとしても、わが国においては、人口減少や高齢化の進展による就労人口の減少といった、人に関わる社会課題の解決が迫られている。これまでであれば、土木建築に携わる人は多くいて、道路や橋が壊れればすぐに直してくれていた。しかし、この直すということを行う人の数は、今もこれからもどんどん減っていく。それに対応するサービスや価値をデジタルの力で生み出していく必要がある。人口の減少という人に関わる変化によってデジタル化が推進され、その結果暮らしのあり方も変化していくのである。

 このような生活様式の変化を効果的に推し進めるカギが、「いかにリアルな世界をデジタルの世界に投影するか、すなわち『デジタルツイン』である」と、網江は語る。

NEC執行役員 網江 貴彦

 2020年現在、IoTデバイスは280億個存在すると言われており、すでにこの1つ1つを人が管理コントロールするには限界を超えている。管理する人の数は減っていく一方で、管理するデバイスは飛躍的に増えていく。結果、人とモノとの間に膨大な接点が今後生まれてくることになり、これを解決することが、これからの社会においては極めて重要となる。これが、わたしたちが直面している社会変化の姿である。

急速に進むデジタル化の波

NEC Smart Connectivityが目指す世界

 社会環境の変化、COVID-19の影響、技術の進展・発展、これらが相まって、デジタルによってつなぐもの・そのつなぎ方が大きく変化している。あらゆる情報がつながり、AIなどの技術と融合することで、今までにない新たな社会価値を創造する時代が、まさしく今、到来している。しかしながら、デバイス、サービス、データ、これらが日々多様化していく中で、「バラバラに動作するだけではイノベーションは起こり得ない。これらを賢くつなぐことが、今求められている」との考えを示し、網江はさらにこう続けた。「あらゆるものを賢くつなぎ、新たな価値を生み出す。それがNEC Smart Connectivityが目指している世界だ」。

 そしてそこには、2つの世界が存在する。ひとつは、「ビジネスをよりよく変える」OX(Operational Excellence:業務プロセスの磨き上げ)。業務プロセスを革新し、企業の価値を向上する。もうひとつは「暮らしをよりよく変える」CX(Customer Experience:顧客体験の向上)で、街や暮らしのさまざまなシーンにおいて、生活者がこれまでに無いベネフィットを手にすることを可能とするものである。

NEC Smart Connectivityが目指す2つの世界

3層構造からなる価値創造の実現手段

 では、NECはこのような価値創造をどう実現しようとしているのだろうか。それは、「基盤として価値創造を下支えするNEC Smart Connectivity」「NECが持つ“真に強い”要素技術」「そしてパートナー企業との共創活動」からなる3層のレイヤー構造で示される。

価値創造を実現する3層構造

 まず、基盤となるNEC Smart Connectivityは、次の3つのサービスによって構成される。ひとつは「マネージドサービス」。機器の提供から設計、構築、運用、保守、改善までのライフサイクルをワンストップで提供するもので、すべての人が、快適・効率・セキュアに活動できるワークライフ空間を創造する。ふたつ目は「ネットワーク」で、Wi-Fi、LTE、LPWA、ローカル5Gなど、ユーザーに最適なネットワーク環境を迅速かつ正確に構築し、業務革新を推進する。そして3つめが「データ流通・活用」。膨大なデータの中から、必要な情報を必要な時に、必要な量だけ連携する。バラバラであったデータ同士をつなぐことで、これまでは見えなかった可能性やリスクを発見し、新たな事業や社会価値を生み出すというものである。

NEC Smart Connectivityの構成要素

 これらサービスの提供価値を、NEC Smart Connectivityは次の6つのSで表している。すなわち、Sustainability(持続可能性)、Simplicity(シンプル化)、Scalability(拡張性・柔軟性)、Security(安全・安心、社会倫理)、Seamless(いつでも・どこでも・あらゆるもの)、Sensible(知的・美的なセンス)である。こうした特徴を活かし、「お客様が実現したいこと、それを下支えしていく」と、網江は語り、ユーザーのビジネスにコミットする強い決意を示した。

 NEC Smart Connectivityの基盤サービスの上に展開されるのが、3層構造のふたつめ、NECが誇る“真に強い”基盤技術である。AI、セキュリティ、生体認証、画像解析、映像解析、無線通信などがこれにあたる。これらを組み合わせることで、他社にないNECならではの課題解決アプローチにより、ユーザーが自らのビジョンを実践するサポートをしていく。

 その実例として、セミナーでは、大林組・大裕との「バックホウ自律運転システム」の実証実験を紹介した。これは、遠隔自動運転とは異なり、人が操作するのではなく、コンピューターとさまざまな機器が連携して建設機械の無人運転を可能とするもの。熟練工の減少や労働力不足といった建設業の課題解決に、直接的な貢献を果たす。ここでは、大裕が汎用遠隔操縦装置「サロゲート」を提供し、NECはAI、画像解析、無線通信などの技術で協力している。上空に3D-LiDARや深度センサを設置し、どこに土砂があるのか、あるいはダンプカーのどこに土砂を乗せればこぼれることなく運搬できるのか、といったことをシステムが自動的に判断。従来は、バックホウのアームやブーム、バケットを巧みに操る熟練技能が必要であった土砂の積み込みを、無人化・自律化することに成功した。2019年の広報発表から2年が経過した現在では、バケットを使って土をならす「ならし」作業を、AI技術によって、熟練工さながらに行うこともできるようになっている。

バックホウ自律運転システム構成図

 価値創造における3層構造の最上位に位置するのが、「パートナー企業との共創活動」である。NECでは、2018年より5G Co-Creation Workingを開催している。これは、NEC単独では対応できない課題をフラットに抽出し、それをいかに解決していくのかを議論するコミュニティで、現在50社あまりの企業が参加し、「建設」「交通」「流通」「安心安全」の4つのワーキング・グループが活動を行っている。またこれとは別に、ローカル5Gを実際に体感・検証できる場として、「NEC Smart Connectivityローカル5Gラボ」を昨年NEC玉川事業場にオープン。これまでに多くのの企業が、自社で利用したい端末・カメラなどの機器を持ち込み、ローカル5Gの実際の環境下での動作確認などを行い、5Gを活用したユースケースの実運用に向けた共創活動を進めている。

 これら以外にも、NECでは、NEC Smart Connectivityがイネーブラーとなるべく、幅広い業種におけるビジネス革新や価値創造に、ユーザーとともに取り組んでいる。そこでは、ユーザー企業との間で、「どういったものがこれからの価値となるのか、というところから徹底的に議論している」と、網江は共創の一端を披露した。ビジネスと暮らしをよりよく変える。「OXとCX、その2つの世界を現実のものとするには、パートナー企業との共創が欠かせない」と、力を込める。企業や社会の夢の実現に、強くコミットする姿勢をあらためて示し、セッションを締めくくった。