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2021年07月26日

Forbes JAPAN Web 2021年7月13日掲載記事より転載

5Gのその先の世界〜「未来を描く力」の高め方Beyond 5G編

 先が見通せない時代。逆説的な話だが、これほどまでに「未来を描く力」が求められたことはない。

 いま必要なことは、世界中の人々と手を取り、新しいビジョンを描くこと。ここでは、ゲーム自体のルールを書き換える強力なXファクターとなる5GとBeyond 5Gの本質・意義について、NEC ネットワークサービスビジネスユニット コーポレート・エグゼクティブの渡辺望と、Forbes JAPAN Web編集部Web編集長の谷本有香が語り合った。

 2010年より普及した4Gから10年、昨年3月に国内の5Gサービスがスタートして、1年以上の月日が経過した。しかし提供エリアが限定的、5G活用コンテンツの未発達などから、その恩恵を享受している人は日本ではまだ少ない。

 それでも5Gに失望するには、まだ早い。4Gが10年かけて現地点にたどり着いたように、5Gもこれから発展していく、まだその入り口の成長期だからだ。

 新型コロナウイルスのパンデミックにより、対面から非接触へと生活や社会へ大きな変化を促され、世界は5G導入を一気に加速させている。遠隔医療、遠隔ロボット制御、自律運転、高精細映像監視などの機能を最大限に活用するためにも、5G普及は必須項目である。

 こうした状況下でNECは、多大な可能性を秘めている5Gを“重要な社会インフラ”と位置づける。そして2030年頃に訪れると予想されるBeyond 5Gの時代を活写する。そこではすべての人がデジタルの恩恵を享受できるDigital Inclusionが実現しているという。

 日本社会は果たして、5Gとその先のBeyond 5Gにどう向き合うべきなのか。その本質と意義についての意見交換が始まった。

4Gは「ヒト」と「ヒト」、5Gは「モノ」「コト」の通信が加わり、デジタルによる社会価値が生まれる仕組み

産業のDXを5GとAIがさらに加速
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谷本有香(以下、谷本):
 グローバルの観点から見ると、米国と中国は「5Gを制する者が世界を制する」とばかりに猛スピードで開発を行っており、さながら覇権争いの様相を見せています。非接触を促すパンデミックもまた、技術開発の加速に一役買いました。

 日本では昨年3月に5Gサービスがスタートしたばかりという段階ですが、これは技術的に普及が遅れていると言うよりも、むしろ従来の国内の4G環境が豊かだったからこそ、5Gの必要性を感じなかったということなのかもしれません。

 そうした4G環境で満足している国内の状況下で、通信事業者のパートナーとしてともに歩んでいるNECは、5G技術をどのように捉えているのでしょうか。

渡辺 望(以下、渡辺):
 確かに4GでもWeb会議も普通に行えている、配信ライブも見ることができていると思っている人も多いと思います。ただそれが5Gに変わると、次元の違う快適さ・便利さになるのです。通信データ量が段違いなので情報量が一気に増えます。相手の微細な表情まで読み取れるようになると言えばわかりやすいかもしれません。もちろん5Gの魅力はそれだけではありません。

 4Gは基本的にヒトとヒトのコミュニケーションのためのものだったのに対し、「高速大容量」「高セキュリティ」「高信頼・低遅延」「多数同時接続」などを実現する5Gは、IoT機器やセンサリング技術、AIを連携することで、産業のデジタルトランスフォーメーションに欠かせないものになっていくと考えます。こうした技術により、今後、製造業、医療、交通、教育など、さまざまな産業でDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速していくことが期待されています。

 そんな5Gを、NECは“重要な社会インフラ”になる技術だと確信しています。そしてインフラである以上、すべての人がデジタルの恩恵を享受できるDigital Inclusionを実現するものでなければならないと考えています。

NEC ネットワークサービスビジネスユニット コーポレート・エグゼクティブ
渡辺 望

谷本:
 具体的にはどのようなシチュエーションがあり得るのでしょうか。

渡辺:
 産業界の話をすると、国内で制度化済みのローカル5Gがわかりやすいかもしれません。5Gは高信頼、低遅延ですが、そもそも無線であるというメリットにより、工場機械のレイアウトを自由に配置することができるようになります。有線で接続していたことでレイアウト変更が容易ではなかった場面でも、無線なら配線を気にせずにレイアウトを短期間で迅速に組み替えられるようになります。

 AIと機械を5G接続で組み合わせれば、自律型ロボットの運用も可能です。同じ作業を繰り返すだけでなく、イレギュラーな事態が起きても、AIが機械に瞬時に指示を出し直すことができるので、人手を割く必要がなくなるのです。NECは5GとAIの両方を手がけていることもあり、両者の融合にはひときわ力を入れています。

 また5Gは離れた場所でもタイムラグを生じさせないでつなぐことができます。それにより建設機械を遠隔操作することが可能になり、技術者はロケーションフリーで働くこともできるようになります。

 医療面では高解像度高画質による遠隔診断はもちろん、遠隔手術の支援も可能になります。具合が悪いのに時間をかけて遠くの病院に行かなくてもすみますし、医療従事者が不足している過疎地などでは非常に喜ばれるはずです。

 さらに重要なのは、そうした熟練者の医療を遠隔地からでも細かく観察することができること。これにより技術継承のチャンスも増えるのです。

 技術継承という視点では後継者不足に悩むいわゆる職人技の継承も同様です。オンラインで間近で見るように観察し、リアルタイムで会話も可能になることから、距離による問題はほぼ生じなくなるでしょう。

 自動運転の分野でも、通信を介して必要な情報を送受して走行する「コネクテッドカー」の実現を加速し、交通事故や渋滞を防ぐことに寄与します。

谷本:
 確かにそのレベルまでいくと、4G環境では難しいように思えます。産業界中心に非常にメリットがあるようですが、一般ユーザーの恩恵としては、いかがでしょうか。

Forbes JAPAN Web編集部 編集長 谷本有香

渡辺:
 わかりやすいのはエンターテインメントの領域でしょうか。4K/8Kによる高精細動画を配信することが可能になり、よりバーチャルに自由な視点で体験できるようになるでしょう。

谷本:
 5Gに対応したコンテンツですね。韓国にいる友人が「5Gがすごい」と言うのでよく聞いてみると、バーチャルなライブだけでなくVRでアイドルに会えるというのです。そしてそれが5G専用のキラーコンテンツになっている。一般ユーザーが自分ごと化できるのは、そうした娯楽の部分なのかもしれませんね。さまざまな角度から楽しむことのできるスポーツ観戦なども、需要が高いのではないでしょうか。

4Gと比較した5Gの三大重要機能
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4Gと比較した5Gの特性
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5Gによって実現すること
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Beyond 5G:デジタルツインが、実世界を拡張し、人や社会全体へ新たな価値を生み出す

渡辺:
 5Gの普及により訪れるBeyond 5Gの時代。現実化していく技術に「デジタルツイン」が挙げられます。「人間」や「もの」、「環境」など、実世界のあらゆるものを仮想世界に写し取り、そのデータを共有、分析することによって、最適化された理想世界を導き出す。リアルとバーチャルの融合におけるキーとなる技術のひとつです。

谷本:
 デジタルツインは、モノづくりの現場で工程のシミュレーションなどにすでに使われ始めていますね。

渡辺:
 サイバー空間に現実世界を写し取るだけで終わりではありません。結果を再びデジタルツインで実世界に反映することで、サイバーフィジカルシステムのループが実現されます。Beyond 5Gにおいては、センシングの多様化や分析・理解技術の進歩により、建物や風景を含む3次元のデータや、人の内面や思考などもデータ化して取り出して活用できるようになる、そのことによって、人や都市など実世界そのものすべてを、さらには実世界では顕在化していなかった情報もデジタルツインとして仮想世界に投影できるようになっていくのです。

 デジタルテクノロジーが社会の隅々まで浸透して、安全で自由なデータ活用が当たり前になれば、さまざまな課題が解決し、人々が生き生きと生活できる社会の実現がより確かなものとなっていくでしょう。これこそが、デジタルツインによるDigital Inclusionの実現であると考えています。

谷本:
 それを実現するためにNECはどのような取り組みを行っているのでしょうか?

渡辺:
 NECはBeyond 5Gを、単なる無線ネットワークの進化とは考えていません。ネットワークにコンピューティング、AIなどのデータ処理基盤を融合した「社会インフラ基盤の進化」ととらえて取り組んでいます。

 超現実感や拡張したデジタルツインを再現するためには、超高速大容量、超低遅延、同時多接続といった無線通信技術のさらなる向上はもちろん必要です。

 ただそれと同時に、データ処理基盤の進化も合わせて必要なのです。帯域や遅延を自由に制御できるネットワークと組み合わせて、センシング手段を多様化し、それらをリアルタイムに処理するコンピューティング環境を整えなければなりません。

 NECは、前者を”AI for NW”、後者を”NW for AI”と呼んでいますが、別々に進化するものではなく、お互いに補い高め合う”共進化”の関係性にあると思っています。私たちは、その両方の強みを生かした研究開発を今後も推進していきます。

5Gによって実現すること
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谷本:
 そして2030年にはBeyond 5Gの世界を、人類が享受できる。それが当たり前になる世界がやってくると言うことですね。とても楽しみです。私は、技術は本当に普及すると、空気のようになるのだと感じています。例えば、私たちは、“インターネットを使って”という意識が急速に薄まっていますよね。スマートフォンを介して世界がつながっている状況が当たり前になってきているからではないでしょうか。

 つまり2030年の人々は、空気のようにBeyond 5Gのテクノロジーの恩恵を、意識せずに享受するようになる。NECさんはインフラを支え続けながら、そうしたテクノロジーの存在が空気のようになる地点までをも予測して、行動を起こしているのですね。

誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会へ

 10年後に訪れるBeyond 5G時代においては、社会に存在する人々の関係性が、さらに深いものになっていくようだ。従来は私たちの住む実世界と、デジタル仮想世界には深い溝があったが、今回語られた技術進化により、2つの世界はシームレスにつながり、時空間・言語・世代を超えたコミュニケーションさえ可能にしていく。

 NECが目指しているBeyond 5Gの世界は、いままでの情報通信技術の枠を圧倒的に超え、積極的な共創によるオープンな取組みとともに、未来へと突き進んでいる。NECが目指す“できたらすごいを社会に創る”挑戦は、最先端技術を社会へ実装し、すべての人に価値を体感してもらうまで止まらないようだ。

たにもと・ゆか
証券会社、Bloomberg TVで金融経済アンカーを務めた後、2004年に米国でMBAを取得。その後、日経CNBCキャスター/コメンテーターとして従事。オードリー・タン台湾デジタル担当相、トニー・ブレア元英首相、など3,000人を超える世界のVIPにインタビュー。多数の報道番組出演や著作活動に従事。16年2月より『Forbes JAPAN』に参画し、20年よりForbes JAPAN Web編集部 編集長。
わたなべ・のぞむ
NEC ネットワークサービスビジネスユニット コーポレート・エグゼクティブ 。1988年NEC入社。 入社後は主に携帯電話の基地局開発や無線基地局開発に関する海外開発拠点の立ち上げに従事する。2011年に基地局事業を統括するモバイルRAN事業部長、2017年に無線ネットワークの開発を統括するワイヤレスネットワーク開発本部長を歴任。2018年執行役員、2019年シニアエグゼクティブ、2021年4月よりコーポレート・エグゼクティブに就任。現在、5Gを中心とした次世代ネットワークソリューション事業関係を統括する。

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