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5Gの社会実装によるSDGsへの貢献
社会課題を解決するネットワーク x AI技術
キャリアによる5Gの商用サービスは2020年3月に開始されたが、ローカル5Gの導入も次々に始められている。NECでも2020年11月にローカル5Gをサービス型で提供を開始し、数々の企業や自治体へ導入・活用を進めているところだ。ローカル5Gでは事業者が主体となって、セキュアで安定的な専用ネットワークを構築することができる。しかし、この技術を使って、どのような価値を生み出すことができるのか。「NEC Visionary Week 2021」で実施されたセッション「5Gの社会実装によるSDGsへの貢献」では、シンクタンク・ソフィアバンク 代表の藤沢氏をモデレーターとして迎え、NEC 新事業推進本部 本部長の新井がローカル5Gを社会課題解決へ活かす自社の取り組みを紹介した。
5Gで労働環境改善や社会課題解決に向けたイノベーションを創出
「グローバル視点で見ると、サステナビリティに取り組んでない企業は、もはや企業として認めないというような空気がある」と藤沢氏が指摘するとおり、SDGs(Sustainable Development Goals)はいま世界の共通目標として定着しようとしている。もはやSDGsへのコミットは、企業価値を保持するためにも避けられない課題だ。
「SDGsというテーマは、まさに時宜を得たものだと思います。『5Gの社会実装によるSDGsへの貢献』というテーマにはどのような意図を込められたのでしょうか。」(藤沢氏)
NECの新井はこれに応じ、お客様と接するなかで「社会全体が持続可能な社会の実現に大きく舵を切っていることを実感している」と述べて、話を切り出した。
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代表
藤沢 久美 氏
「企業としても、目の前の課題だけではなく、長期的視点に基づいたパーパスを設定することが重要な時代になっています。めざす未来を描き、それをあらゆるステークホルダーと共有し、共感を得ながら事業を進めていく。SDGsは、そのための重要な指針となります。
そして、SDGs達成のための鍵となるのがAIやデータなどのデジタルの力です。安全・安心・公平・効率でサステナブルな社会を実現していくために、ITは不可欠だと言っても過言ではないでしょう。ネットワークもその一つとなる重要な技術です。NECでは、5GをAIなどの技術と組み合わせて、社会課題の解決に取り組み続けています。」(新井)
具体的な実証もすでに進められている。その一つが、石坂産業株式会社との共創事例だ。
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新事業推進本部 本部長
新井 智也
産業廃棄物中間処理などを展開する石坂産業は、建設系の廃棄物の減量化・リサイクル化率98%を達成するサステナビリティ経営のリーディングカンパニーだ。セッションでは代表取締役の石坂氏のビデオメッセージが放映され、NECとの共同開発事業を紹介した。
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代表取締役
石坂 典子 氏
「搬入された廃棄物を画像で読み取るだけで、ゴミ処理代金をコンピュータで割り出していくシステムをNECさんと共同開発しています。これが実現すれば、働き方改革にも大きく影響していくでしょう。また、これからはリスクの高い作業こそ、AIなどのデジタル技術による改善が求められる社会になると思いますので、こうした取り組みで一つひとつフェーズをクリアしていきたいと思っています。」(石坂氏)
現在、廃棄物処理においては人手不足が深刻化している。粉じんの多い現場での作業も多く、労働環境も課題とされてきた。そのようななかで、本システムは廃棄物処理の効率化と安全・安心な労働環境を確保し、社会課題を解決しようとするものだ。石坂産業とNECはこの実証を皮切りに、ローカル5Gを活用した重機の遠隔操縦や自律運転による廃材処理、プラント処理の映像監視など、さらなるソリューションを生み出していく予定だ。プラントの省人化や、さらなる安全・安心な労働環境の構築に向けて、共創を続けている。
また、コニカミノルタ株式会社とも幅広い共創活動を行っている。コニカミノルタでは現在「FORXAI」という画像センシング技術を活かした画像IoTプラットフォーム技術の開発を進めているが、ここにNECの5Gを組み合わせることで、新たな価値を生み出そうとコラボレーションを行っているところだ。コニカミノルタの岸氏は、セッションに寄せられたビデオメッセージで次のように語った。
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IoTサービスPF開発統括部 統括部長
岸 恵一 氏
「5Gの最も大きな特長は、低遅延であると考えています。しかし、ネットワークだけ、もしくはデバイスだけの低遅延では、システム全体での低遅延化は実現できません。NECさんのローカル5Gの低遅延技術、そして、私たちが持っている画像デバイス側の低遅延技術の双方を組み合わせることで、システム全体の低遅延化を実現しようと開発を進めているところです。今後は、これをさらに広げて私たちのFORXAIとNECさんのAIを掛け合わせていくなど、さらなる価値提供や価値創造に取り組んでいきたいと考えています。」(岸氏)
2020年10月に竣工されたコニカミノルタ開発拠点「Innovation Garden OSAKA Center」 高槻新棟では、NECがローカル5G検証環境を整備している。オープンラボとして開設予定の本拠点では、幅広いパートナーに研究開発の場を提供し、5Gの社会実装をさらに加速させていく予定だ。
5G活用には、現場の数だけ形がある。そのため、オープンイノベーションの推進が欠かせない。5Gによって、一体何ができるのか。NECは顧客がもつビジョンや課題を理解しながら、5GとAIの最適な活用方法を提案し、開発を続けている。
5G x AIで重機の遠隔/自律施工を実現
すでに実証が実を結んだ事例もある。株式会社大林組と取り組んだ重機の遠隔/自律施工だ。NECは大林組と長期間の実証を続けてきた。大林組の岩下氏はビデオメッセージのなかで「魅力ある生産現場づくりをめざし、数年間にわたって一緒に取り組んできた」と振り返る。
「遠隔操作のためには、運転席の映像などの大容量伝送が必要になります。また、このときに遅延があっては操作ミスにもつながりかねません。そこで、NECさんの5GネットワークとAI技術が必要になりました。長い共同開発を経て、昨年度は実際の現場でも施工を行うことができました。遠隔操作は、より安全な操作が可能になるというだけではありません。子育てをしている社員が自宅から機械の操作をすることも可能になる重要な技術です。
さらに、現在は重機の自律施工にも取り組んでいます。これは社外でも大変注目を浴びている開発ですので、NECさんと一緒に良い成果が得られるように取り組んでいきたいと思っています。」(岩下氏)
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ロボティクス生産本部 技術開発部/技術開発推進課 担当部長
岩下 正剛 氏
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2021年9月13日には、実際のトンネル工事現場において重機に自律運転を適用し、見事実証に成功している。土砂の積み込み搬出を自律運転で実現することができた。働き方や生産プロセスを変革する大きな成果と言えるだろう。また、重機の遠隔操作では、10月からサービス提供がスタートしている。こちらもネットワークとAI技術の組み合わせによって、社会課題を解決する一つの端緒になるだろう。 いくら5G/ローカル5Gが革新的な技術とはいえ、それ単体では社会価値をつくることはできない。AIという頭脳やアプリケーションがあって、初めて社会価値を創出できる。そういう意味で、双方の技術をもつNECは力強いパートナーになりそうだ。
社会課題解決を見据えたオープンイノベーションを推進
また、ローカル5Gにはまだ大きな可能性があると新井は述べる。
「いま私たちは、キャリア様が展開するパブリック5Gとローカル5Gの連携を実現しようと考えています。これは、インターネットとイントラネットというアナロジーでとらえていただけるとわかりやすいかもしれません。現在では分断しているこの二つのネットワークを連携させることで、今後の5Gの適用領域はますます広がるのではないかと考えています。
また、もう一つ考えているのはエッジコンピューティングの活用です。これからはアプリケーションの遅延やセキュリティ、電力量などの要件を総合的に鑑みると、必ずしもクラウドだけで処理することが正解とはいえなくなるでしょう。さまざまな場所に分散配置されたエッジコンピューティングをオーケストレーションして集中管理することも重要になると思います。」(新井)
クラウドやエッジコンピューティングでNECと強力なパートナシップを組むのが、アマゾン ウェブ サービス(AWS)だ。2020年11月に日本で初めてコーポレートレベルの戦略的協業締結を発表し、2021年9月にグローバル5Gやデジタル・ガバメントなどの領域で協業を拡大した。アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社執行役員の渡邉氏は、ビデオメッセージで次のように語る。
「AWSでは、5Gを経由したAWSクラウドへの接続を実現するサービスを昨年12月から開始しました。また、5Gのような高速ネットワークのメリットを生かすために、ローカルエッジで大量のデータを処理してクラウドへつなぐオンプレミスサービスも提供しています。NECさんとは、これらを組み合わせたソリューション、デモやPoCを、NECローカル5Gラボを通じてお客様へお届けしていきたいと考えています。」(渡邉氏)
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パートナーアライアンス統括本部 執行役員
渡邉 宗行 氏
渡邉氏が言及した「NECローカル5Gラボ」とは、NECの5Gソリューションを実際に体験できる場所だ。国内初となるSub6商用局免許によるローカル5Gネットワークを活用して、各種無線の比較デモやエッジ活用、ビデオアナリティクスのデモも確認することができる。また、併設された「NEC ローカル5GラボAnnex」では実際の機器やサービスを持ち込むことが可能で、ローカル5Gに接続して検証を行うことができるという。
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実際の機器を持ち込んで実証が可能
新井はこの場所を「パートナーやスタートアップの方も含めて集まってくるようなオープンイノベーション環境にしていきたい」と語る。
「社会課題解決を起点にしながら、互いにめざす未来とそこに至るまでのロードマップを共有してイノベーションを進めていきたいと考えています。しかし、ビジョンだけを語っているだけでは前に進むことはできません。同時に実証や議論を繰り返して真の課題を見定めながら、どんどんチャレンジを続けていくつもりです。」(新井)
藤沢氏が「各社のビジョンを一緒に実現していく戦略パートナーとしてのNECとしての存在感を感じた」と感想を述べると、新井は最後に次のように述べてセッションを締めくくった。
「私たちがこの事業を展開するなかで、5Gをテーマにすると本当にいろいろな業態・業種・部門の方々と議論ができるということを実感しています。そういう意味でも5Gは人をつなげていくものだと思っています。NECもこの5Gを通じて、さまざまな方と議論をしながら社会実装を進めていきたいと思っています。」(新井)
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